一生懸命英語を勉強しているのに、実際に会話すると相手の話がサッパリ頭に入ってこない……。そんな悩みを持っている人は少なくないはずだ。

◆謎のフレーズを連呼する英会話講師

photo via Pexels

 かくいう筆者も中学校から大学院までずっと英語を勉強しており、読解などは問題ないが、いざ会話すると、いまだに相手が何を話しているのかわからないことがときどきある。

 その理由のひとつが「ジェスチャーの読解力」だ。英語圏に限らず、海外では身振り手振りを交えて会話することが多く、日本に比べると表情の変化も激しい。ボディランゲージを読み取れるのとできないのとでは、会話の文脈や相手の意図を理解するうえで大きな差が生じるだろう。

 では、どうやってジェスチャーの読解力を上げればいいのか? 先日、思わぬ形でそのヒントとなる学習法に出くわした。

ランピーダンピー」

 ある晩、行きつけのバーに足を踏み入れると、聞きなれない言葉が耳に入ってきた。カウンターに腰掛け、謎のフレーズを連呼しているのは、顔見知りの英会話講師でアメリカ人のEさんだ。

 Eさんは自ら日本人生徒を教えてきただけでなく、現在は講師に対しても学習法をレクチャーするなど、英会話教育のスペシャリスト。そんなEさんが激しい身振り手振りを交えながら、「ランピーダンピー」と連呼している姿は、はたから見るとかなりシュールな光景だ。もしや酔っ払っているのか……。

◆表情や身振りから意図を読み取る
 声に抑揚をつけながら、「ランピーダンピー」と繰り返すEさんを真面目そうに見つめるのは、同じくアメリカ人のカップル。単なる悪ふざけなのか、日本人が知らないアメリカ限定のゲームなのか、隣の席から見ていても、まるで様子が摑めない。

 そうして、しばらく「ランピーダンピー」を聞かされたあと、ようやくEさんが筆者のほうを振り向いた。しかし、開口一番Eさんの口から放たれた言葉はやはり……。

ランピーダンピー」

 ラチがあかないので、いったいどんな意味があるのか聞いてみた。

「意味はないよ。これは声の抑揚とかジェスチャーから、相手が何を伝えようとしているのか当てるためのフレーズなんだよ」

 子どもや英語を学び始めたばかりの人には、いきなり会話をさせようとしても、結局は暗記したフレーズを繰り返すだけになってしまう。「Hello, nice to meet you. My name is〜」といった定型文を覚えることももちろん重要だが、それよりもまずは相手のジェスチャーを読み取る能力を高めたほうが、実際のコミュニケーションでは役に立つというわけだ。

◆出身地や趣味まで当てられるように
 こう聞くと「なんだそんなことか」と思う読者の方も多いだろう。しかし、この「ランピーダンピー」、意外と難しいのでぜひ試してみてほしい。

 たとえば筆者はEさんの鼻を指すジェスチャーを「私は鼻が高い」と解釈してしまったが、これは「私の名前はEさんです」という意味だった。10分ほどかけてようやく筆者が正しく読み取れたのは、「こんにちは。私の名前はEです。よろしくお願いします」の一文だけ。

 一方、先述のアメリカカップルはというと、「ランピーダンピー」というフレーズと身振り手振りからEさんの出身地や趣味まで当てていた。

 挙句、「次のビールは俺が奢るね」といった会話まで「ランピーダンピー」だけで通じるように……。ジェスチャーの読解力の差をまざまざと見せつけられた。

◆耳だけでなく、目を使うことも重要
 英会話力を上げる方法について、Eさんは次のように解説してくれた。

「同じアメリカ人でも、地域によっては訛りが強くて、相手が何を話しているのか聞き取りづらいことはよくあること。イギリスオーストラリアでも発音は全然違うし、ましてや英語圏の人でなければ、もっと通じなかったりする。耳だけを使って相手の気持ちや意図を理解するのは、英語話者にとっても難しいよ。英語で話すことが得意でないなら、なおさら目を使ったほうがいいと思う」

 近年、外国人観光客の数は右肩上がりに増え続けており、東京五輪に向けてその数はますます増加していくだろう。読者の皆さんも思いがけず、街中や飲食店で外国人に声をかけられることがあるかもしれない。

 そうしたとき、一生懸命相手の言葉を聞き取ろうとすることも大事だが、表情や身振りにも注意を払ってみてほしい。難しいと感じていたメッセージが、思っていたよりも簡単に読み取れるかもしれない。

<取材・文/林泰人>

【林泰人】
ライター編集者日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン

photo via Pexels