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text:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)

もくじ

長寿なのは65年間フルチェンしなかったタイプ1
現代の存在意義はファッション性のみ?
ニュービートル登場時とは市場環境に変化
購入は最後のチャンス カブリオレ狙い目
なぜミニ/フィアット500は生き残った?

長寿なのは65年間フルチェンしなかったタイプ1

フォルクスワーゲンには複数の車種が用意されているが、この中のザ・ビートルが生産を終えた。

フォルクスワーゲンの販売店によると「ザ・ビートルの国内販売は、現時点(2019年7月中旬)の在庫と、船積みされて日本に送られている車両が最後になります。すでに生産を終えたため、今後の新たな発注はできません。またザ・ビートルの後継車種の登場は、今のところ予定されていません」という。

そのために80年にわたるビートルの歴史が終わったと見ることもできるが、これには注釈が必要だろう。長寿モデルとして有名なのは、フォルクスワーゲンタイプ1(通称オールビートル)になるからだ。タイプ1は試験走行の後、1938年頃から生産が開始され、戦前の生産台数は小規模にとどまった。

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この後、タイプ1の生産は第二次世界大戦後の1945年から本格的に立ち上がり、1960年代に入ると順調に伸びた。日本でも1953年からヤナセが販売を開始している。

フォルクスワーゲンタイプ1は、改良を頻繁に行うことでフルモデルチェンジをせずに長期間にわたり生産を続けたが、空冷水平対向4気筒エンジンをボディの後部に搭載して後輪を駆動する方式は、初代モデルから生産終了まで一貫していた。

タイプ1がこの駆動レイアウトを採用したのは、第二次世界大戦前の技術では、前輪が操舵と駆動を兼任する前輪駆動には技術的な困難が伴ったからだ。

一般的な方式は、エンジンを前側に搭載して後輪を駆動するものだが、後輪に駆動力を伝えるプロペラシャフトが必要になって車両重量も増える。だから当時の小型車には、エンジンを後部に搭載して後輪を駆動する方式が多かった。

そして1974年には、前輪駆動フォルクスワーゲン初代ゴルフが発売されたので、フォルクスワーゲンタイプ1は1978年ドイツ本国の生産を終えている。

この後もメキシコなどでノックダウン生産が行われ、タイプ1は2003年まで造られ続けた。クルマが急速に進化する激動の時代を、65年間にわたりフルモデルチェンジを行わずに生き抜いた。

現代の存在意義はファッション性のみ?

ドイツフォルクスワーゲンタイプ1が生産を終えた後、同社の主力商品はゴルフになって進化を重ねた。

1997年に4代目ゴルフがワイドな3ナンバーボディで発売され、1998年には、同じプラットフォームを使うフォルクスワーゲンニュービートルが登場している。

タイプ1のオールビートルは、後部にエンジンを搭載して後輪を駆動したが、ニュービートルゴルフと同じ前輪駆動だからレイアウトが逆になる。

オールビートルの丸みを持たせたボディ形状は、エンジンを後部に搭載して後輪を駆動する方式では必然的なデザインだったが、ニュービートルでは一種のファッションになった。

前輪駆動の場合、空間効率を重視すればゴルフのボディ形状になるから、ニュービートルの外観に必然性はないわけだ。

ニュービートル1998年から2010年まで生産された。この後継車種として発売されたのが、ザ・ビートルであった。

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ラットフォームは6代目ゴルフと共通だから、ニュービートルのフルモデルチェンジと考えれば良い。ザ・ビートルフェンダーの張り出しが大きくなり、外観の雰囲気をオールビートルに近づけたが、全幅は1800mmを超えている。

ボディが大柄な割に後席は狭めだ。外観をオールビートルに似せるため、リアゲートを寝かせたから、頭上空間が狭い。前後席の間隔も少し近いため、後席の足元空間も不足して感じる。荷室容量も小さめだ。

つまりスタイル優先で実用性はいまひとつだから、ニュービートル、ザ・ビートルともに、クルマを理詰めで捉える欧州ではあまり支持されなかった。

フォルクスワーゲングループジャパンによると「ニュービートルとザ・ビートルの人気が最も高いのは北米市場になります。日本も比較的好調に売れる市場で、欧州に比べると、定期的に新車へ乗り替えてくださるお客様が多いです」とのことであった。

ザ・ビートルが生産を終えた背景には、欧州で高い評価を得にくいこともあった。

またニュービートルとザ・ビートルは、先に述べた通り、空間効率で不利な一種のファッションになる。ニュービートルの登場から数えて20年を経過すると、さすがに飽きられてくる面もあるだろう。

ニュービートル登場時とは市場環境に変化

ニュービートルが登場した頃は、フォルクスワーゲンラインナップは今に比べると少なかった。SUVのティグアンやパサーオールトラックはもちろん、トゥアレグも用意されていなかった。

ミニバンのトゥーランとシャラン、上級セダンのアルテオン、コンパクトアップデビューしていない。

その代わり今のアップに近いサイズのルポ、ゴルフベースにしたセダンボーラはあったが、フォルクスワーゲン選択肢は限られていた。

そのためにニュービートルの存在価値も高かったが、ザ・ビートルの時代に移り変わると、フォルクスワーゲンラインナップも次第に増えてくる。ザ・ビートルの売れ行きは下がってきた。

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また今のフォルクスワーゲンは、フロントグリルヘッドランプを横長にデザインして共通のフロントマスクを採用するが、ザ・ビートルではこのアイデンティティも持たせにくい。丸型ヘッドランプを備えたオールビートル風の丸みのある外観は、個性的と呼べる半面、少し浮いた存在になっていた。

ザ・ビートルファッション性が、いろいろな意味で、今のフォルクスワーゲンのトレンドに沿わなくなってきたわけだ。しかも欧州の支持も乏しいから、生産終了に至ったと考えられる。

購入は最後のチャンス カブリオレ狙い目

ザ・ビートルはいよいよ販売を終えるが、「実は欲しいと思っていた」という読者諸兄もおられるだろう。購入を希望するなら、早めに判断した方が良いと思う。

そして在庫車を販売会社が登録した実質的に未使用の中古車を見ると、ザ・ビートルデザイン278万円)が240万円くらいで売られている。

この価格では安いとはいえず推奨できないが、これから在庫車が長期化した場合には、もう少し価格が下がって中古車市場に流通する可能性もある。

特にオープンモデルカブリオレは魅力が褪せにくく、数年後の売却額も下がりにくい。現時点でカブリオレは販売を終えているが、1台のクルマを長く使いたいユーザーにとって、ザ・ビートルは意外に注目されるクルマだと思う。時代の流れとはいえ、生産の終了は寂しい。

ところで、ふと思う。長寿モデルの「復刻車」という点では同じである、ミニやフィアット500は、なぜ今も生き残れているのだろう?

なぜミニ/フィアット500は生き残った?

ザ・ビートルと同様、往年の長寿モデルに外観を似せたクルマとして、現在のミニやフィアット500がある。これらが生き残っている理由はなぜだろう。

初代ミニは1959年に発売された。全長が4m少々の小さなボディだが、エンジンを横置きに搭載して前輪を駆動する方法により、空間効率を高めた。小さなボディに、大人4名が乗車できる居住空間を備える。

今ではエンジンを横置きに搭載する前輪駆動車は小型車の定番だが、当時は珍しく、そのメリットストレートに表現したのがミニだった。

2001年BMWがミニの権利を取得して、今日のプラットフォームで新しいミニを開発した。フルモデルチェンジを繰り返しながら現在に至っている。

BMWミニが生き残った理由の筆頭は、丸型ヘッドランプを装着した愛敬のあるフロントマスク、水平基調のボディスタイルというクラシックミニの特徴を受け継ぎながら、バリエーションを増やしてミニをブランドに育て上げたことだ。

ニュービートルやザ・ビートルは、あくまでもフォルクスワーゲンの1車種に過ぎなかったが、ミニは独立した位置付けになり、派生車種を充実させている。2001年当時のBMWは、後輪駆動車のメーカーだったから、前輪駆動BMWミニが独立する必然性もあった。

またクラシックミニもエンジンを横向きに搭載する前輪駆動車だから、BMWミニでも基本的な配置は変わらない。ニュービートルやザ・ビートルのような駆動方式が逆転する場合に比べると、デザインに無理がなく、バランスの良い造形に仕上がった。

そのためにクラブマンやクロスオーバーといったサイズの大きな車種も開発され、ミニのブランドが構成されている。これが生き残りの秘訣だ。

フィアット500も往年のモデルベースにしている。モチーフになった1957年発売のフィアット5001975年に生産を終えたが、2007年に新型が「フィアット500生誕50周年」を記念して発売されている。

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この新しいフィアット500が10年以上生産を続けている理由は2つある。

まず欧州車の中ではボディが特に小さいことだ。全長が3570mm、全幅が1625mmというサイズは、パッソなどを下まわって取りまわし性が優れている。

2つ目の理由は往年のフィアット500エンジンを後部に搭載する後輪駆動、現行型は一般的な前輪駆動なのに、外観を可愛らしくバランスの良い造形に仕上げたことだ。

SUVフィアット500Xはボディが大きいが、外観はフィアット500に似ている。独特の雰囲気があり、コンパクトフィアット500デザインが、多用途性を持つことも物語る。

ミニにも当てはまることだが、いろいろなサイズの車種に適用できるデザインテーマには普遍性があり、それが生き残っている一番の理由といえるだろう。


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