G大阪入団前から目標としていた日本代表MF堂安律、同じ高卒1年目でトゥウェンテ移籍決断

 ガンバ大阪からオランダ1部FCトゥウェンテに期限付き移籍するU-20日本代表FW中村敬斗が21日、成田空港から渡欧した。Jリーグラストマッチとなった前日20日の第20節名古屋グランパス戦(2-2)を終え、オランダへ出発。憧れの日本代表MF堂安律フローニンゲン)と同じ高卒1年目で海を渡る決意を語った。

 プロ2年目、中村は欧州挑戦を決めた。昨季、高校3年生で三菱養和ユースから入団。下部組織出身以外での“飛び級”昇格はG大阪史上初めてのことだった。在籍1年半で新たな道へ。もともと縁もない大阪のチームへ入った理由の一つには、目標としていた背中があったからだった。

 17年6月、当時三菱養和ユース所属だった中村は、G大阪へ練習参加した。その時、トップチームには同年のU-20ワールドカップ(W杯)で4試合3得点と活躍し、フローニンゲン移籍を控えた堂安がいた。ともにプレーし「なんであんなところに(パスを)出せるんだろうと思った。(堂安が)いろいろと話しかけてくれて、すごく優しかった」と刺激を受けた。当時、飛び級でトップ昇格していた堂安はプロ2年目の18歳。中村にとって2歳年上の先輩が目標になった。

 G大阪に入団後は、堂安が背負った「38」番を受け継いだ。だが、プロ入り直後こそ出場機会に恵まれていたものの、宮本恒靖監督が就任したシーズン中盤以降は運動量の増加、走力アップを求められ、出番が激減。毎日、1人で1時間以上も居残り練習を積み、今季途中からはウイングバックで定位置を掴んだ。日々の努力が実り、今ではコンスタントに11キロ以上の走行距離を記録。チームでトップを争うほどの運動量を誇るようになった。

「トゥウェンテでは、両サイドウイングで考えていると言われたので、今以上にゴールに近い位置でゴールも取りやすい。もちろん守備も求められるかもしれない。守備の負担は減るかもしれないけど、ガンバでやってきたことは大事なことだったので良かった」

 プロでの壁にぶち当たり、乗り越え、自信もつけた。そして、18歳でオランダリーグへの挑戦。憧れの先輩が辿った道を歩んで行く。堂安は移籍1年目で主力として29試合9得点を記録。初の海外移籍でオランダリーグに所属した日本人の1シーズン目では、FW平山相太(05-06年/ヘラクレス)の30試合8得点を超える最高成績を残した。今季、2シーズンぶりに1部へ昇格したトゥウェンテに加入する中村だが、同じく初年度からの活躍が求められる。

G大阪経由オランダ行き…同じルートを辿り「結果を出すしかない」

「堂安選手はオランダであれだけ結果を残してますし、やっぱりすごい選手だと今でも思う。目指すわけじゃないですけど、オランダで活躍するというルートを作ってくれた選手。この年齢で(海外に)行くことは昔あんまりなかったと思うので、本当に第一人者じゃないかと思います。(オランダサッカーは)チームによると思うけど、基本的につないでサイドハーフアタックして、ドリブルして攻撃するイメージ。プレースタイル的には合っているかなと思います。そういう意味でもオランダを選んだし、トゥウェンテというクラブを選んだので。自分の選択が良かったということを結果で出すしかない」

 “先輩”堂安がオランダへ渡って2年。背中を追ってきた中村は自然と似てきたのかもしれない。当時、堂安が日本を発つ日、オランダへ持っていく物は「スパイクとスウェットだけ」と身一つで行くことを明かし、「英語は向こうに行ったらやります」と猛特訓を決意していた。中村も「服とスパイク味噌汁を少しぐらい」とし、「言語は向こうに行って勉強する」と答えた。

ただ、中村はこの日、堂安を「目指すわけではない」と言った。追いかけるだけではなく、追い抜く覚悟で――。また一つ成長した姿を見せ、希望に満ちた男が日本を後にした。(Football ZONE web編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)

G大阪経由オランダ行き、堂安と同じルートを選んだ中村【写真:Getty Images Football ZONE web】