アフリカ南部にあるボツワナの上空からドローンにより撮影された1枚の写真。草原に横たわるゾウの牙は切り取られ、長い鼻は切り離され、顔は深くえぐられている。象牙ビジネスの残酷さを象徴するかのようなこの写真に注目が集まっているようだ。

「切断(Disconnection)」と名付けられたこの写真は、南アフリカ・ケープタウン出身の写真家ジャスティン・サリバン氏(Justin Sullivan、28)が撮影したもので、「ボツワナ北部、象牙目当てのアフリカゾウの密猟を空撮。密猟者は近くにあるキャンプからたった20分という場所で、ゾウの牙と鼻をチェーンソーを使って切り落とした。密猟は急激に増加しており、ボツワナ北部では2014年から2018年の間だけで死骸数が593%も増加している」との言葉が添えられている。サリバン氏はこの写真の思いを次のように語った。

「ゾウが密猟されたと聞いて、すぐ現場に連れて行ってもらった。ドローンを使うことで、現場にいただけでは捉えることができない上空からの“切断”されたゾウの死骸を撮影することに成功した。私たちの手の届かないところで、非常に野蛮な方法でゾウが殺されているという現実を伝えたかった。人々は怒りと同時に悲しみを感じるだろう。」

サリバン氏の言う”怒りと悲しみ”は、野蛮で残酷な殺害方法に向けられている。密猟者はゾウから手っ取り早く牙を取り出すために毒矢や銃でゾウを倒し、死後硬直が始まる前にまだ生きているゾウの顔をチェーンソーでえぐり取り、鼻を切り離す。逃走する密猟者が手に入れるのはマネーだ。環境保護団体「Big Life Foundation」は、密猟者の象牙の売値は1キロ約1万8千円(170ドル)、闇市場の最終価格は1キロ約21万5千円(2,000ドル)になるとの調査結果を公表している。ビジネス優先のこんな残酷なやり方は、到底許されるものではないだろう。

ボツワナのモクウィツィ・マシシ大統領は今年5月、ゾウの数が16万頭に達したことで環境収容力が限界に達したうえ、多数の家畜に被害が出ているなどの理由から5年に及んだゾウの狩猟禁止措置を解除していたが、環境保護団体からは非難の声があがっていた。動物保護団体「Elephants Without Borders」はボツワナ国内のゾウの数は13万頭で、2017年~2018年に密猟により400頭のアフリカゾウが国内で犠牲になったという調査結果を報告している。ゾウの狩猟解禁と急増する密猟により、犠牲になるゾウの数はさらに増加が見込まれるという。密猟に対する早急な対策が求められるのは言うまでもない。

ちなみにアジアでは近年、象牙だけでなくゾウの皮にも注目が集まっているとも言われ、2016年には皮をはぎ取られたアジアゾウの写真が拡散した。今年5月には、「密猟がいかに卑劣なものか、より多くの人に知ってもらいたい…」とのコメントとともに、角を切られ生きたまま放置されたサイの動画がSNSに投稿されている。またつい先日には娯楽のために狩猟をし剥製や毛皮をトロフィー(戦利品)として持ち帰る“トロフィーハンティング”後のカップルの写真が出回り、非難の声が殺到したばかりだ。指導者そして密猟者が怒りと悲しみの声に耳を傾ける日は来るのだろうか。

なおサリバン氏の力強いメッセージが込められたこの写真は、若い写真家の支援・育成のために開催される「アンドレイ・ステニン記念フォトジャーナリズム国際コンクール(Andrei Stenin International Press Photo Contest)」の「マイ・プラネット(My Planet)」部門で2019年のファイナリストに選ばれており、9月に発表されるグランプリの有力候補とのことだ。

画像は『Metro 2019年7月19日付「Brutal image shows elephant with trunk and tusks cut off」(Picture: Justin Sullivan/Magnus News)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)

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