ドイツ・古城街道の町エーベルバッハは、ネッカー河畔の静かな保養地。正式名称を「エーベルバッハ・アム・ネッカー」といい、「Eberbach」とは、「イノシシの川」を意味します。

その名の通り、町のシンボルイノシシ。町の紋章にイノシシがデザインされているのをはじめ、数々のイノシシ像やアートが見られ、あちこちでユーモラスなイノシシたちに出会えます。

実はこの町、とある作品のファンにとっては特別な意味をもつ場所。青池保子氏作の漫画「エロイカより愛をこめて」の主人公「エーベルバッハ少佐」と同名であることから、作者も訪れており、ファンにとっては聖地のような存在なのです。

エーベルバッハの日本語版観光パンフレットには、エーベルバッハ少佐が登場しています。これもファンにとってはたまらないお宝でしょう。

エーベルバッハの町自体はとてもコンパクトで、中心部を歩くだけなら1~2時間もあれば十分。周辺都市から日帰りで訪れるなら、ハイデルベルクを拠点にするのが便利です。

エーベルバッハシンボルともいえるのが、石造りのプルファー塔。もともとは、13世紀に町の城壁とともに建設されたもので、その後も改築が繰り返されてきました。

プルファー塔の足元には、4頭の可愛らしい仔イノシシたちの像があります。「イノシシの泉」と呼ばれていますが、水がほとんどなく泉には見えないのがちょっと悲しいところ。観光客のそう多くないエーベルバッハでは、イノシシ像は観光スポットというよりも、地元の子どもたちの格好の遊び場になっています。

プルファー塔の周辺と並ぶ「エーベルバッハの顔」といえば、アルター・マルクト広場。赤とピンクの外壁が目を引く「ホテル・カルプフェン」が建つ静かな広場です。

広場の景観をより印象的にしているホテルの壁画は、1934年に「ズグラッフィート」と呼ばれる技法で描かれたもので、町の歴史的な人物や出来事が表現されています。

その斜め向かいには市の博物館があり、町の歴史や風俗について知ることができます。入場無料なので、入ってみて損はありませんよ。

エーベルバッハを散策する際には、思い思いにペイントされた、カラフルイノシシ像に注目。

これはお店の前などに置かれているもので、美容室の前にはおめかししたイノシシ像、ホテル・レストランの前にはそのお店のロゴが入ったイノシシ像というように、ユーモラスなイノシシたちが、各店をアピールしているのです。こういった遊び心は、町歩きをさらに楽しいものにしてくれますね。

エーベルバッハを訪れたら、この町の名物ケーキを食すのも忘れてはなりません。それが、「カフェ・ヴィクトリア」の代名詞「ヴィクトリア・トルテ」。

カフェ・ヴィクトリアは、1886年創業、1958年に現在の地に移転した老舗カフェで、ヴィクトリア・トルテは、英国のエリザベス女王にも届けられたという由緒あるケーキです。

ふんわりとしたスポンジリキュールをかけていただくケーキは、ほどよい甘さと爽やかなオレンジの風味、ほのかな苦みが一体となったほかにはないスイーツ。過去にはドイツのNo.1ケーキに選ばれたこともあるヴィクトリア・トルテを、ぜひ一度お試しあれ。

中世の雰囲気を残しながらも、さほど観光地化されていないエーベルバッハは、歴史と現代の日常が融合した心地よい町。「エロイカより愛をこめて」のファンはもちろん、そうでなくても訪れる価値があるはずです。

お店 Cafe Victoria
住所 Friedrichstraße 5-9, 69412 Eberbach
https://www.cafe-viktoria.de/

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