犯罪や非行の防止と罪を犯した人の更生に対する理解を深め、犯罪や非行のない明るい社会を築こうという「社会を明るくする運動」。7月は強調月間で、さまざまな催しが全国的におこなわれている。

その1つとして「社会を明るくする運動の集い」が7月18日、東京・世田谷区で開催され、受刑者や出所者の支援をおこなうNPO法人マザーハウス」理事長の五十嵐弘志さんが講演した。

五十嵐さんは「犯罪や非行をした人はみなさんと同じ『社会』の中で生きていきます。犯罪をした人が一番悪いです。しかし、彼らも同じ『人間』なのです」と語った。

●「行くところがない」出所者の孤独

自らも3回の服役経験がある五十嵐さんは、出所を控えた高齢受刑者に「俺には行くところがない。だれにも相手にされない」と言われたことがあるという。どこにも居場所がなく、孤独であることも犯罪や非行に走る要因になっていると五十嵐さんは指摘した。

出所後は、傷つく言葉を言われることが多かったという五十嵐さん。そんな中、「幸せになってください」という言葉をかけてくれた男性がいた。男性は五十嵐さんの事件とは関わりはないが、ある事件の被害者遺族だという。

「自分のしたことを忘れずに生きたいと強く思いました。彼の言葉は、私にとって生きる勇気になっています」と五十嵐さんは涙ぐんだ。

五十嵐さんはこれまで約600人の受刑者や出所者と関わってきた。このうち立ち直ることができたのは50人ほどだという。かつての「仲間」のもとに戻ってしまい、再び罪を犯してしまう人も少なくないようだ。

五十嵐さんが立ち直ることができたのは、よい出会いがあったからだという。

「社会は甘くありません。自分を変えるのは自分です。私にできることは居場所をつくり、寄り添うこと。立ち直りのためには人との触れ合い、出会い、そして社会とのつながりが大切です」(五十嵐さん)

●始まりは住民による自発的な活動

「社会を明るくする運動」は法務省が主唱する取組み。2019年で69回目となる。

同運動の始まりは、更生保護の基本法である「犯罪者予防更生法」が施行された1949年にさかのぼる。

戦後の荒廃した状況の中、少年の非行に心を痛めた東京・銀座の商店街の有志が、同じ年の7月、1週間にわたり「犯罪者予防更生法実施記念フェアー(銀座フェアー)」を開催。翌年の1950年7月には「犯罪者予防更生法」の施行1周年を記念し、「矯正保護キャンペーン」が全国的に実施された。

これらの地域住民による自発的な活動を契機として、法務省が中心となり、1951年に「社会を明るくする運動」が始まった。

第69回のキャッチコピー「RE:スタート」(リスタート)には、「過去のあやまち」から再出発し、未来に向かって挑戦できる「つまずいても立ち上がれる社会」を目指すという意味が込められているという。

「犯罪をした人は悪い。だけど同じ人間」 元受刑者が「社会を明るくする運動」で理解訴え