もくじ
どんなクルマ?
ー 62kWhバッテリーに217psのモーターを搭載
どんな感じ?
ー 多少パワーを楽しんでも320kmに届く航続距離
ー BMW i3より500kg近く重いリーフe+
ー 4万ポンド(544万円)を超える価格
「買い」か?
ー 間もなく登場するライバルは手強い
スペック
ー 日産リーフe+テクナのスペック
どんなクルマ?
62kWhバッテリーに217psのモーターを搭載
初代の日産リーフがリリースされたのは2010年。当時新車で購入したオーナーは、実際の航続距離は110km位でしかないことに不満を漏らしていた。そして2代目リーフが登場した昨年、AUTOCARの姉妹サイトである「What Car? 」は、現実的な航続距離が210km程度ではないかと算出していた。
そして今回、かなり実際の条件に近いといえる、WLTPテストでの384kmという航続距離を確かめる番がやってきた。新しく搭載されているのは62kWhという大容量のリチウムイオンバッテリー。この数字が本当なら、ロンドンからブラックプールまで充電なしで走り切ることができるはずだ。
グレード名はe+と優しい雰囲気だが、実際の内容はリーフ・ニスモといったところ。大容量バッテリーのおかげでモーターの最高出力は150psから217psへと高められている。最大トルクも若干だが増えている。
また日産リーフe+は、街中に設置された急速充電器にも対応。標準充電効率が70kWという設定だから、50kWの標準バッテリーを搭載したリーフと同じ40分で、80%近くまで充電が可能となる。細かい部分としては、フロント周りのエクステリアデザインが新しくなっている。
EVの中では長いキャリアを持つ、日産リーフのアップデート内容を確かめてみよう。
どんな感じ?
多少パワーを楽しんでも320kmに届く航続距離
大容量のバッテリーを搭載したリーフe+だが、メリットとデメリットが存在している。バッテリーとモーターのアップグレードは明確に効果を体験できる。同程度の変更が内燃エンジンに与えられたときよりも、その変化はわかりやすい。
まずは良い点から見ていこう。パワーが増強されたことは、アクセルを踏み始めた瞬間からわかる。日産によれば、0-100km/h加速に要する時間は7.3秒だとしているが、これはBMW i3と同じ数字。ただし、ひときわ活発なヒュンダイ・コナ・エレクトリックには及んではいない。特徴的なのが、力強さが高速域まで変わらないことで、110km/hを超えてからの加速にも充分パンチ力がある。
バッテリーの容量増加に伴い、航続距離も大幅に伸びている。鋭くなったスタートダッシュを楽しんでも、残りの航続距離の数字を見れば、罪悪感や後悔はさほど感じなくて済むだろう。今回の試乗時間ではバッテリーを空にするまで走行できなかったものの、比較的右足を活発に動かしていたのにも関わらず、表示によれば320km以上の航続距離は疑いようがなさそうだ。
ただし、ヒュンダイ・コナ・エレクトリックと同様に、モーターのパワーとトルクがここまで増強されると、スタートダッシュ時にシャシー掛かる負荷はかなり大きなものになる。日産はリーフe+のサスペンションの設定を改めてはいるが、大きくステアリングを切った状態で発進しようとすると、トラクション・コントロールが盛大に介入してくる。
結果としてステアリングホイールには振動が伝わり、トラクション・コントロールをオフにすると、起伏の大きい舗装路では、簡単にグリップを失ってしまう。だが、追い越し加速や高速道路への合流時など、短時間の瞬発力という面では、多くのユーザーにとってメリットになる。
BMW i3より500kg近く重いリーフe+
コーナリングも心地よいフィーリングがあるわけではない。進入速度を高めるとブレーキング時のノーズダイブが大きくなり、感触に乏しいステアリングを切り増していくと、ボディロールも一方的に大きくなってしまう。
このような挙動の要因は、車重の重さにある。標準バッテリーの50kWグレードより、62kWhのバッテリーを搭載するリーフe+は150kgも車重が増加している。コナ・エレクトリックよりだいぶ重いだけでなく、運動性能で勝るBMW i3と比較すると、500kg近くも重たいのだ。
反面、EVを購入するひとは都市部での走行が中心だと思うが、小さな起伏やスピードバンプなどを乗り越えた際の滑らかさでは、BMW i3よりも優れている。充分に上品だといって良い。むしろリーフのターゲット層の場合、クルマの限界領域まで攻め込むひとはほとんどいないはず。穏やかに走らせている限り、不満を抱くことはなさそうだ。
そもそも日産リーフを、ホットハッチなどと並べて比較することは日産も想定していないだろう。だとしても、せっかくハイパワーなモーターを搭載したことを、活かしきれていないように思う。
4万ポンド(544万円)を超える価格
インテリアに関しては、通常のリーフとリーフe+との間に大きな違いはない。標準装備の内容も充実しているし、車内空間も不足は感じられない。用いられている素材感も、許容できるものだといえる。
ステアリングのテレスコピック調整の幅が小さいことにも変わりなく、身長が185cmを超えるわたしの場合、ドライビングポジションがどうにもしっくりこない。リーフe+の価格を考えると、改善の余地はあるのではないだろうか。
最後に価格について。残念ながら、リーフe+の最大のマイナス要因だ。日産が英国で設定している限りでは、リーフe+で選択できるのは最上級グレードとなるテクナのみ。もし英国政府の補助金3500ポンド(47万円)を引かなければ、実際の価格は4万ポンド(544万円)を超えてしまう。
といっても、通常のリーフとの価格差は5000ポンド(68万円)程度だから、バッテリーとモーターに法外にお金を取られているわけではない。しかし、本当にこれほどの航続距離とハイパワーなモーターが必要かどうかは、内容の魅力以上に充分に検討する必要はあるだろう。
「買い」か?
間もなく登場するライバルは手強い
日産リーフe+を検討するなら、ライバルとしっかり比較しておく方が良い。日産リーフはいま購入することができるが、少し待てばヒュンダイ・コナ・エレクトリックも登場する。価格も安く、より長い航続可能距離が設定される見込みだ。
加えて、プジョーe-2008とフォルクスワーゲンID3という、まったく新しいモデルも間もなく市場へとリリースされる。しかも正式には未定ながら、価格は3万ポンド(408万円)を下回るだろうと予想されている。一方でテスラ・モデル3も、数千ポンド(数十万円)上乗せすれば届いてしまう。
確かにパフォーマンスは低くはないし、標準装備の内容も充実はしている。しかし、価格に見合うほどのダイナミクス性能の洗練性やインテリアの質感が得られるわけではないところが、残念でならない。
日産リーフe+テクナのスペック
価格 | 3万6245ポンド(492万円・補助金値引き後) |
全長×全幅×全高 | 4480✕1790✕1540mm |
最高速度 | 157km/h |
0-100km/h加速 | 7.3秒 |
航続可能距離 | 384km(WLTP) |
CO2排出量 | 0g/km(WLTP) |
乾燥重量 | 1731kg |
パワートレイン | 交流モーター |
バッテリー | 62kWhリチウムイオン |
最高出力 | 217ps |
最大トルク | 34.6kg-m |
ギアボックス | シングルスピード |
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