日本政府が7月に発表した韓国向け輸出規制強化措置によって、日韓関係は官民を巻き込んで泥沼化の様相を見せている。

 7月5日ソウルで日本製品の不買を呼びかけるデモがあった。韓国メディアによると、日本国籍のタレントの韓国内での活動禁止や、果ては「修学旅行(スハク・ヨヘン)」といった日本語に由来する韓国語の使用禁止といったことまで論じられ始めた。

 まさに「坊主憎けりゃ」を地で行く動きだ。

 韓国大統領府に勤務した元高官もかつて、日本語由来の韓国語の使用禁止の検討を政治任用の上司から打診されたことがあった。元高官は「日本語に由来する言葉など、市中にあふれている。そんなことをすれば生活がめちゃくちゃになりますよ、と言ってもみ消した」と語る。

 一方の日本。FNN(フジニュースネットワーク)は10日、「韓国の輸出管理体制に疑問符がつく実態がうかがえる資料を独自入手」と報じ、他メディアも続々と後を追った。

 ただ、ネットにあふれているのは「韓国の不正輸出」という見出し。FNNが報じたリストは、韓国政府による不正輸出取り締まりの結果をまとめた資料だが、それらの見出しだけを読むと、韓国政府の犯行とも受け取られかねない。日本政府のなかでも「一連の報道のなかには、印象操作だと指摘されても仕方がないものがあった」という批判の声が出ている。

韓国政府の目に日本の報道はどう映ったか

 また、この報道に先立つ4日、自民党の萩生田光一幹事長代行がBSフジのプライムニュースで「(化学物質の)行き先が分からないような事案が見つかっている」「(輸出規制強化)措置をとるのは当然だと思う」とも話していた。

 このため、韓国政府の目には、報道の背後で日本政府が糸を引いていると映ったようだ。韓国の国家安全保障会議(NSC)は12日、この問題で日韓両国が同時に国際機関の調査を受けるよう、日本政府に求める方針を決めた。高官を米国に派遣して陳情を始めるなど、反撃に出ている。

 韓国は8月15日に、日本からの解放を祝う光復節を迎える。7月末からタイで開かれるASEAN拡大外相会議に、日韓の両外相も出席する。ここで鎮火できないと、両国を覆う憎しみの火はさらに燃え広がりそうだ。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2019年7月25日号)

経産省で行われた「輸出管理に関する事務的説明会」 ©共同通信社