ソニーが伝統の熱設計技術とペルチェ素子を使ったウェアラブル冷温感デバイス『REON POCKET』を発表しました。

専用インナーウェア背面のポケットに装着することで、送風ではなく首もとへの接触により効率的に熱を移動させ、夏涼しく冬暖かい快適感が得られるとうたうデバイスです。

ソニーのスタートアップ創出プログラム SSAPのプロジェクトとして、7月22日からクラウドファンディングで支援 / 予約購入を募ります。


レオンポケットは主に、ワイシャツジャケットといった服装のビジネスパーソンに向けて、首もとへの冷感・温感刺激で暑さ寒さによるストレスを軽減するための製品。

簡単にいえば、暑いときに首もとに押しつけて涼を得る保冷剤や冷却パック、寒いときのカイロを化学式ではなく電気式で実現したデバイスです。


Sony REON



氷やカイロと比較した利点は、急速に温度を変えられるペルチェで「熱すぎ・冷えすぎ」を防ぐと同時に、きめ細かな制御で皮膚感覚の「慣れ」に対して継続的に冷感・温感を与えられること。

保冷剤やカイロは当てたままだと痛くなったり、逆に慣れてしまって感覚がなくなることもありますが、ペルチェを使ったREON POCKETはオンオフでクイックに温度を調整可能。スマートフォンアプリを通じたマニュアル制御や自動制御により、物理的にはポケットに装着したまま、ちょうど心地よくなるように調節できます。

また充電式なので、電源さえあれば繰り返し使えることも利点。

Sony REON POCKET

ペルチェ素子といえば、電圧をかけることで熱を移動させ片面が冷たく、片面が暖かくなる熱電素子。身近なところでは、大型のコンプレッサーを搭載できない卓上冷蔵庫や、最近はカップひとつだけを冷やすデスク用のドリンククーラーなどで見かけます。

REON POCKETの構造は、首もとにインナー越しに接触する部分にペルチェ、内部には放熱用のフィンと薄型静音の小型ファン、そしてバッテリーBluetooth LEでスマートフォンアプリと接続します。充電はUSB-C端子。




Sony REON POCKET

プロトタイプ(左)と外装モックアップ(右)。装着した場合、メッシュ部分から排気します。

サイズは薄型のマウス程度。形状もあいまって、ファンで手が蒸れないマウスにしか見えません。

サイズは約54 x 20 x 116mm、重量 約85g。


Sony REON POCKET

裏側。冷温部分は約4cm角。企画・開発したソニーの伊藤陽一氏によれば、運動生理学の専門家に助言を受け、また多数のテストを繰り返した結果、接触冷温感の場合この面積が変わっても体感はリニアには変わらず、総合的にこの大きさで十分機能すると判断したとのこと。


Sony REON

制御はスマホアプリ。背中のポケットに腕を回して細かく操作できないこと、クイックに温度を調節できる利点から、スマホ制御は理にかなっています。



Sony REON POCKET

専用のポケット付きインナーに挿入したところ。これは簡易的な形状のトルソに着せています。

Sony REON POCKET

こちらは開発者実演。上からシャツを羽織ったところ。製品を知っていて、注目する場所が分かれば分かる程度です。


Sony REON POCKET

さらに上からジャケット。比較してみれば分かりそうですが、知らずにみて妙に隆起していたり、ファンがむき出しになるわけではありません。


クラウドファンディングでの支援プランは、

・REON POCKET Light (マニュアル制御のみのライトモデル)と専用インナーウェア1着セットで1万2760円。(最安)
・REON POCKET (オート制御やマイモード設定などが可能なスタンダードモデル)と専用インナーウェア1着セットで、早期購入者価格 1万4080円。

このほか、専用インナーが3枚付属すると1万7380円、5枚で1万9030円など。

REON POCKET | First Flight


Sony REON POCKET

開発チーム。左より、マーケティングサポートの浅野哲志氏、HW設計の伊藤健二氏、プロジェクトリーダーの伊藤陽一氏。製品を知らずにみると「スマホ・マウス・下着」を掲げる謎写真です。



一見すると酷暑を当て込んだおもしろグッズ的にも思えますが、大型ペルチェ素子の威力は本物。実働するプロトタイプを手のひらに載せて試したところ、オフ状態では一瞬で体温と同じになり何も感じないのに、スマホで冷却オンにした途端、わっと驚いてつい笑ってしまうほど急速に冷えます。ファンで風を送るのではなく、直接冷たいもので熱を奪われる感覚。

ただ熱を奪うデバイスはこの世に存在しないので、ペルチェも奪う以上の熱を発しつつあくまで片面に移動させるだけですが、内部の放熱機構が優れているのか、それとも人体の温度感覚がリニアでないためか、薄い小さなファンでかすかな音しかしない出力でもおどろくほど冷温感刺激を感じます。

念のため注意すべきなのが、REON POCKET はカイロや冷却パックや冷たいペットボトルを当てた状態を電気的に作り出すもので、皮膚表面は冷やしたり温めたりできても、(深部)体温自体を上げ下げできるほどの出力は当然ながらありません。

このため、薬局の店頭などで暑さ対策をうたって売っている多数のグッズと同様、熱中症を予防するものではなく、あくまで暑さ寒さによるストレスを軽減して快適になるための製品です。


この記事はEngadget 日本版からの転載です。

ソニーが人体用ペルチェ冷温デバイスREON POCKETを発表。熱設計技術をウェアラブルへ