『横浜美術館開館30周年記念 生誕150年・没後80年記念 原三溪の美術 伝説の大コレクション』が、2019年9月1日(日)まで、横浜美術館にて開催中だ。

横浜において、生糸貿易や製糸業などの実業で財を成した原三溪(慶応4~昭和14)。希代の古美術品コレクター、茶人、アーティスト、そして同時代の日本美術院の画家や彫刻家を物心両面から支援したパトロンとしても知られている。本展では、現在、国宝や重要文化財に指定される名品30件以上を含む三溪旧蔵の美術品や茶道具約150件と貴重な関連資料を展観することによって、原三溪の文化人としての全体像を描きだす。

驚くべき大コレクションの真髄を、過去最大規模で紹介

三溪が生涯に購入した美術品は、優に5,000点を超える。本展では、三溪の旧蔵品約150件を展示。三溪の旧蔵品がこの規模で一堂に紹介されるのは初めてで、三溪自身もこれらをいちどきに鑑賞したことはない。本展は、三溪がコレクションの公開のために建設を夢見ていたとされる、幻の美術館を具現するものとも言えるだろう。

国指定文化財(国宝、重要文化財)30件以上を含む、珠玉の美術品が集結

三溪が収集した美術品のうち現存する作品の多くは、今日では国宝や重要文化財に指定され、三溪の審美眼の確かさを物語っている。本展では、三溪旧蔵品を代表する国宝《孔雀明王像》や《寝覚物語絵巻》をはじめ、30件以上の国指定文化財が出品される。三溪旧蔵の至宝が、最大規模で横浜に里帰りする。

「コレクター」「茶人」「アーティスト」「パトロン」
4つの切り口で、三溪と芸術との関わりを紐解く

三溪は茶道具の収集も行い、実業界の先輩で茶人としても知られた益田鈍翁(ますだ・どんのう)や高橋箒庵(たかはし・そうあん)らを招き、慣例にとらわれない道具の取り合わせなどで自由な趣向の茶事を楽しんだ。書画の才能は余技の域を超え、その恬淡とした画境は三溪ならではのもの。また、今日、国の名勝にも指定される「三溪園」は三溪の最大かつ最高の芸術作品と言えるだろう。そして実業以外の三溪の功績で最も広く知られるのが、日本美術院の画家を支援したパトロンとしての役割。本展では、「コレクター」「茶人」「アーティスト」「パトロン」の4つの切り口で、文化人・三溪の全体像を紹介する。

三溪自筆のさまざまな記録から、コレクションの秘密に迫る

三溪は、作品の購入先や金額を自ら克明に記録した買入覚や数種の蔵品目録を残した。これらからは、コレクションの形成の過程や傾向、分類に関する三溪の独創的な考え方を知ることができる。また、三溪は生前、古代から近世の所蔵品名品集『三溪帖』の出版を計画した。本展ではこれらを含む貴重な記録類から、コレクションの遍歴を辿り、また、三溪の美術史観を読み解く。