マンモグラフィ(utah778/iStock/Getty Images Plus/写真はイメージです)

「女性らしさのシンボル」と捉えられることも多い乳房。若くして恐ろしい病であるガンに侵され、それを失うことのショックは測り知れないものがある。

 

■「トリプルネガティブ性乳がん」宣告

英国スタッフォードシャー州ストーク・オン・トレント在住の28歳の女性が今、名門大学病院として知られる「ロイヤルストーク・ユニバーシティ病院」を訴えようとしている。

2016年末、難治で転移が怖い「トリプルネガティブ性乳がん」を宣告された彼女は、左右両方の乳房についてすぐに切除手術を受けた。その後の彼女を待っていたのは7ヶ月にもわたる化学療法。強い吐き気と闘い、体重は激減し、髪、眉毛、まつげなどすべての毛が抜け落ちたという。

幼い第1子を育てるなかでの闘病生活は、女性の体と心に大変な苦痛を強いた。やがて治療が完了し第2子にも恵まれたが、その子は母乳の味を知らない。ママの胸はすべての乳腺を失ってしまったからだ。

 

■病理検査のデータ管理にミス

ところが女性は最近になって、同病院を運営する「ノースミッドランド大学病院NHSトラスト」により、その乳がん宣告が誤診によるものであったことを知らされた。

病理検査のデータ管理において人為的なミスが発生したことにより、結果的に医師が誤った診断名を告げてしまったという説明に、彼女は愕然としたという。

長期にわたる治療が女性の心身に与えた痛みや苦悩はただではない。ガン治療はただでさえお金がかかるが、さらに乳房再建術も受けていたため、女性と家族が負担した治療・入院費用はただではなかったのだ。

 ■病院は丁寧に謝罪も女性は…

病院側は真摯な姿勢で女性とその家族に対し謝罪してきた。だが女性はそれに応じず、メディアの取材にはこのように話している。

「謝罪の言葉ひとつで許せるようなものではありません」

 

「せめて彼らにも耐え難い痛みを味わってほしい、それにより猛省してほしいと感じたのです。お金をもらっても、私の胸は元には戻りませんが…」

 

「病院には、2度と同じ過ちを繰り返さないよう気を付けてほしいのです。犠牲者は私ひとりでたくさんです」

 

女性が失ってしまったかけがえのないもの、味わってきた様々な苦しみや痛みに比べ、病院の「申し訳ございませんでした」という言葉はあまりにも軽すぎたようだ。

 

■医療過誤事件として提訴を決意

その後、病院や医師を提訴するため医療過誤事件が専門の敏腕弁護士のもとを訪れた女性。「病院から謝罪があっても許せないのは当たり前だ」として、世間も完全に彼女の味方だ。

健康であったバストを医師の誤診により失った悔しさと絶望感は尋常ではない。病院側からまずはどれほどの慰謝料や損害賠償金が示されるものか、イギリスの女性たちの間で大きな注目が集まっている。

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(文/しらべぇ編集部・浅野ナオミ)

「乳がん」は誤診 左右両乳房の切除手術を受けた28歳女性が怒りの提訴へ