7月16日、バンタンゲームアカデミーは、「現在を突き抜くメディアミックスコンテンツの道」と題して、ブシロード木谷高明氏を迎えて特別講演会を開催した。

 木谷氏は2007年ブシロードを設立した。ブシロードはトレーディンカードを柱とした事業で急成長し、声優ユニットアニメや音楽、ゲーム制作といったメディアミックスに力を入れていることで知られている。
 また、2012年にはアントニオ猪木が創業した新日本プロレスの株式を取得し、傘下に置いた。新日本プロレスはその後、業績が回復して目覚ましい活躍を見せている。

ブシロード 木谷高明氏

 2014年から木谷氏は、シンガポールに駐在してアジアコンテンツ普及に注力。その後、2017年10月に代表取締役を辞任、デジタルコンテンツ事業および広報宣伝を管掌する取締役に就任。現在はコンテンツ作りの最前線に立っている人物だ。

 この講演会は、ゲーム業界を始めとしたエンターテイメント業界志望の学生に向けて、バンタンゲームアカデミーが定期的に行っているもの。
 今回の講演では、ブシロードが展開しているBanG Dream!バンドリ!)』プロジェクトにおける、コンセプト作り、作品の魅力を維持し続ける開発・運営手法、プロデュサーとしての役割について、木谷氏が語った内容をお届けしよう。

文/福山幸司
編集/ishigenn


「今の時代、コンテンツの中に必ず音楽コンテンツは必要。そうやって繋いでいかないと今のコンテンツはもたない」

 『BanG Dream!バンドリ!)』は、アニメゲームコミック、声優によるリアルライブなど、さまざまなメディアミックスを展開する次世代ガールズバンドプロジェクト!!」というキャッチフレーズで行われているメディアミックスプロジェクトだ。

 「リアル」をCDリリース、生演奏によるライブなどの声優ガールズバンドの活動とし、「キャラクター」をTVアニメアプリゲームコミックストーリーと位置づけている。「リアル」と「キャラクター」が共に成長していくことで、新しい感動と共感を生み出すことをコンセプトとしており、アプリゲームバンドリ! ガールズバンドパーティ!(通称『ガルパ』)は、全世界でユーザー1000万人を突破している。

 木谷氏によると、成長が著しい『BanG Dream!プロジェクトは、もともと2014年2月末に思いついたという。きっかけとなったのは、プロジェクトの中核であるガールズバンドPoppin’Partyポッピン パーティー)」にてヴォーカルギターを務める声優の愛美さんが、別ユニットアイドルマスター ミリオンライブ!ライブギターを実演したこと。
 愛美さんが『アイドルマスター ミリオンライブ!』で演じたジュリアというキャラクターは、劇中でもギターを弾くことで知られている。

(画像は1st Single「Yes! BanG_Dream!」 | BanG Dream!(バンドリ!)公式サイトより)

 ギターを初めて弾いた場所に木谷氏はいなかったが、部下から会場のさいたまスーパーアリーナがどよめいていたことを報告されたという。
 木谷氏は、この「会場がどよめいた」という理由は、声優がギターを弾くという常識がまだなかった中で、ギターを弾くほどキャラクターに合わせてきたこと」と、「声優なのにギター弾けるんだ」という2点にあると分析した。

 この事件といえるシーンを目撃した木谷氏の部下が、愛美さんに「ガールズバンドやらせたい」と提案。木谷氏は、大ヒットしたアプリゲームラブライブ! スクールアイドルフェスティバルを念頭に、音楽のコンテンツの可能性を感じていたので、ガールズバンドをするだけではなく、それをコンテンツにしなくてはいけないと強く思ったという。

 アニメの場合、ヒットしても次のコンテンツを仕掛けるのがどうしても2、3年後になってしまう。しかし音楽コンテンツであれば、その空白期間にライブイベントを実施することによって、アニメリリースされるまでユーザーの興味を繋いでおくことができる。さらにいえば、アプリゲームによって、毎日興味を持続させていけばいい。
 木谷氏は、「今の時代、コンテンツの中に必ず音楽コンテンツは必要。そうやって繋いでいかないと今のコンテンツはもたない」と話した。

 こうして、『BanG Dream!プロジェクトが本格的に動き出し、愛美さん以外にも楽器弾ける声優を探したが、これがなかなか難航したという。特に「Poppin’Party」で最後に加入した、ドラム大橋彩香さんの存在には助けられたそうだ。
 なぜならバンドにおいて、ドラムベースというリズム隊はとても重要だが、これをこなせる人材が圧倒的に少ないのだとという。

 実は『BanG Dream!』の世界は、先に声優を決めてから、そのイメージキャラクターデザインにフィードバックさせてきたと木谷氏は語る。設定や世界観を作ったのは小説家中村航氏だが、氏はバンド活動をしていたことがあったため、その経験が活かされている。

 Poppin’Partyバンド活動が続くかたわら、『BanG Dream!プロジェクトはさらにイラストストーリーコミックを展開していった。木谷氏は、それが好評だったことからアニメ化ゲーム化が進んだと思われがちだが、最初からアニメゲームも実施する準備をしていたと説明した。
 最初から10億円以上、数社組んでいるときは20億円以上を投入する。少額の投資をしてもヒットは出るが、それでは大ヒットは出ない。そしてゲームアニメも1年前からスケジュールが決まっており、ヒットが出てからでは間に合わないという。

 こうして『BanG Dream!プロジェクトは成功を収め、Poppin’Party武道館ライブを開催するまでに成長を果たし、もう一つの中核バンドRoseliaは、オリコンチャートトップ10の常連と化している。

 YouTubeのバンドリちゃんねるの訪問者数は月間200万人、アプリゲームガルパ』も好調で、マンスリーアクティブユーザー250万、この数はYouTubeの訪問数と近しい値となっている。英語版簡体字版、繁体字版など海外展開にも力を入れているという。

「昔は需要があったが今は埃をかぶっているものの、綺麗に磨いたら輝きを取り戻すものを探すことも、プロデューサーにとっては大事だ」

 そんな成功を重ねつつも木谷氏は、学生にニュースはあるものではなく作り出すもの、エンタメ志望の人は、どうやって話題を作りをするか、つねに意識した方がいい」と呼びかけた。

 その例として、今年2月に『BanG Dream!プロジェクトで行ったシングル6枚同時リリースを挙げた。木谷氏によると、6枚ともオリコンウィークリートップ10に入るかは賭けだったが、見事に成功し、ニュースバリューが出た。
 一方で仕掛けてもそれほどニュースにならないこともあり、「世の中は保守的になっており、新しいものに飛びつくのが慎重になっている」として、致し方ない部分もあると説明した。

 木谷氏によると、保守的になっている原因として、「人が情報を受信する量は横ばいだが、世の中の情報量はどんどん増えている。そうなった現在、増大した情報をまともに受けていられないので、人は自然に情報を受け取ることをセーブしていく」のだという。

 昔はユーザーによるひとつの作品に対する考察は盛んに行われていたが、今は世の中の情報量が増えているので、そういった考察に投じる時間がなくなっているのが現代だと木谷氏は考える。
 ゆえにお客さんは、すでに流行ってるものに乗ることになる。たとえば、映画名探偵コナンの動員数がどんどん増えているが、メジャーなものが次は習慣へと変化するようになるなど、勝っているコンテンツがより勝つのが今の世の中だという。

 そこでブシロードグループとして大切にしているのは、40年続いている新日本プロレスだという。木谷氏は、「昔は需要があったが今は埃をかぶっているものの、綺麗に磨いたら輝きを取り戻すものを探すことも、プロデューサーにとっては大事だ」と語った。
 今から40年間続くコンテンツを作ろうとしても難しく、新日本プロレスのような40年間という長く続いているものは、これから大事にしなければならないと伝える。

 また具体的なコンテンツそのものではなく、感動できる文化や習慣などの価値観をもう一度磨いて発信するのもありだという。木谷氏がラブライブ!も『BanG Dream!』も好きなのは、自分が子供のころに見てきた“スポ根”に近い部分があるからだという。古いものを新しいエッセンスで作ることも重要だという。

 特に日本の人口は減ってきているので、マーケット的に大ヒットを狙うなら10台から40代後半まで狙う必要がある。10代の学生は、学校のクラスSNSで口コミで広げてくれるが、縦の年齢層を想定することも必要と説き、ブシロードの新プロジェクト『D4DJ』は、そういった試みだという。

 木谷氏は作品には「作家性の作品」と「エンタメの作品」の2種類があると続ける。
 ブシロードの作品は全て後者のエンタメ作品。みんながイベントで盛り上がって、その夜から何かしらのキャンペーンから始まるような流れがある。
 だが、今後は作家性のある作品もやっていきたいと抱負を語った。またブシロードは、より舞台に力を入れていくとして、木谷氏は講演を締めくくった。

 講演では学生からの質疑応答の時間が設けられたので、抜粋してお届けしよう。


──コンテンツ作りにおいて、ユーザーが求めていることをどうやって調べるのでしょうか。

木谷氏:
 ヒットは、マーケティングでは作れないと僕は思います。アンケートを取ったとしても前例があることしか書いていないので、それはどんなにがんばっても現状における最適解でしかありません。
 表に出ていない潜在需要を汲み取ったものか、需要を作り出したものこそが、大ヒットとなります。

──ゲームデザインにおいて、気をつけなければいけない点や、ありがちな点を教えて欲しいです。

木谷氏:
 新しいものが生まれるときには、異なるものとの摩擦があると思います。そういう意味では海外に行ってみることは大事ですね。アニメコミックとか色んな知識があるのも大事だけど、ありすぎるのもよくありません。なぜなら知識がありすぎると、王道のコンテンツを避けてしまって、隙間を狙ってしまうから。
 王道で受けそうなものを許される範囲で堂々と真似て、創造することが大事です。まったく新しいものというのは存在していません。過去からの積み重ね、その連続性の上に今があるので、隙間ばかりを狙うと王道から離れていってしまいます。

 たとえば『BanG Dream!』だと、「ガールズバンドで大ヒットはできない」と詳しいスタッフに言われました。なぜなら5000人を集めているグループがいないからだと。
 ただ、僕は「楽器というのは、フィギュアに持たせたら武器の代わりになるな」と思いました。そういうキャラクター作りにおいて、差別化できる可能性を感じましたね。

──『BanG Dream!』のアーケードゲームは出たりしないんでしょうか。

木谷氏:
 もちろん、話はあったりします。でもゲームセンター自体が今後どうなるのかなと考えてしまいますね。あったほうがいいですか?(大勢が手をあげる)参考にしたいと思います。

──プロデューサーの役割として、一番重要視していることはなんでしょうか。

木谷氏:
 関わっているチームパッションです。突破する力、オリジナルコンテンツはこれが大変なんですよ。版権ものはまだ楽です。「原作」という神があるから。いざとなれば「どうすればよろしいでしょうか」と神の言うことを聞けばいい。

 でもオリジナルコンテンツは神を作るところから始まる。だからそれぞれ関わっている人に自分の正義があるんです。
 ある程度できあがってきたらそんなことは起こらないけど、初期段階は、正解がない世界なので、色んなことでぶつかりあう。
 オリジナルコンテンツだと会社を辞める人間も出てくるし、鬱になる人間も出てくる。それを上手くマネジメントしてあげる。だからプロデューサーは大事なんですよね。(了)

BanG Dream!(バンドリ!)公式サイトはこちら

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85年生まれ。大阪芸術大学映像学科で映画史を学ぶ。幼少期に『ドラゴンクエストV』に衝撃を受けて、ストーリーメディアとしてのゲームに興味を持つ。その後アドベンチャーゲームに熱中し、『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』がオールタイムベスト。最近ではアドベンチャーゲームの歴史を掘り下げること、映画論とビデオゲームを繋ぐことが使命なのでは、と思い始めてる今日この頃。
Twitter@fukuyaman
編集
ニュースから企画まで幅広く執筆予定の編集部デスク。ペーペーのフリーライター時代からゲーム情報サイトAUTOMATON」の二代目編集長を経て電ファミニコゲーマーにたどり着く。「インディーとか洋ゲーばっかりやってるんでしょ?」とよく言われるが、和ゲーもソシャゲレトロも楽しくたしなむ雑食派。
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