吉本興業に所属する芸人数名が、反社会勢力が参加するパーティーに参加し、ギャラを受け取ったことが判明した闇営業問題。

謝罪
※画像はイメージです(以下、同じ)
 7月20日には、雨上がり決死隊・宮迫博之と、ロンドンブーツ1号2号田村亮謝罪会見を行い、22日には吉本興業・岡本昭彦社長による会見が行われた。後者は5時間を超す長丁場だったが、言い訳のような回答が目立ち、終始、記者との会話もかみ合わなかった。

 多くの吉本芸人が、吉本批判の声を上げるなか、やや一歩引いた目線で発言をしているのが、南海キャンディーズ山里亮太。そんな彼の「バランス感覚」について、お笑い評論家ラリー遠田氏に聞いた。

ピリつく『スッキリ』スタジオで巧みなフォロー

 そもそも山里は、蒼井優との結婚会見で見せた男気ある発言や振る舞い、『テラスハウス』などでのバランス感覚の際立つコメントに定評があった。7月22日に放送された『スッキリ』ではMCの加藤浩次が「経営側が絶対変わらないとダメ。この状況が変わらないなら、僕は退社します」と、突如宣言。

 スタジオが、ややピリついた雰囲気になると、続くコーナーで、山里(“天の声”として声の出演)は「おっはよーございまーす」と普段通りの明るい声で切り出し、「いや~、加藤さんって、声大きいのね~」と一言。加藤が謝ると「いいのいいの。ビクッとしちゃってさ。あんだけ大きい声なら、いろんな人のところにちゃんと聴こえちゃってるよ」とフォローした。

 この対応にはSNSでも「ピリついた空気が一気に和んだ」「プロの仕事だ」「山ちゃん、かっこいい!」と絶賛の声が多く寄せられた。

ラジオでは「後輩芸人」に気遣いも

たまむすび
※『たまむすび』公式サイトより
 さらに、7月23日ラジオ番組『赤江珠緒 たまむすび』で、前日の岡本社長の会見について、

「驚いちゃった。(岡本社長が)『冗談だった』って。うちは冗談を言う会社だからね、基本的には。でもひとつ思っているのは、宮迫さんと亮さんが会見してくれた姿はすごく本音だと思う。

 ただ、これに関して今何が問題になっているのかよくわかんなくなってきちゃったら嫌だなって。宮迫さんと亮さんが完全な被害者みたいになって『頑張れ!組織のパワハラに負けるな!』みたいな感じになってくのも注意しなきゃいけないの」

 と、「闇営業」から「吉本興業パワハラ」に根本の問題が移行しつつあることを危惧。さらに、TwitterなどのSNSを中心に多くの所属芸人が事務所に対し声を上げている現状については、

「意外と今(Twitterなどで)つぶやいていることも、覚えてるっぽい会社じゃないかなって思うの。後で『あんとき言いやがったな』って怒られてほしくないなって。先輩たちを見て、気持ちがグッとあがってくるのもわかるけど、でも、何か(この騒動に)答えが出てくるまで、みんな気をつけてって思う」

 と、注意喚起した。また、『スッキリ』での加藤の「退社」宣言については「ちゃんと届いていればいいなと思う。(退社宣言については)『やめないで』って感じ。俺より汚い声の人がスタジオにいてくんないと、俺の声の汚さが目立っちゃうから」と、笑いでまとめた。

最後は若手芸人へのエールで締めくくる

『たまむすび』の最後に「これだけは言わせて」と前置きしたうえで吉本興業についても言及。

「俺の周りの吉本の社員さんはお笑いが大好きで、すごい芸人を作りたいって人しかいない。マネージャーさんはお笑いが好きで、芸人が大好きで、『この人と組んで成功するのを見たいんです。だから私たちはどんなに時間を削ってでも頑張ります』って言ってる人しかいない。怖いイメージを持っている人が減ってほしい。

 若手の子たちもこの会社には夢も希望もないって思わないで、頑張ってると、この俺たちを売るために死ぬ気で動いてくれる人たちがいる会社だから。このタイミングで吉本をでていく人も多いと思うけど、もうちょっと頑張ってほしい」

 多くの所属芸人がしているような吉本興業側への批判を一切せず、若手芸人へのエールで締めくくるという、山里ならではのコメントとなった。

全方位に配慮された見事なコメント

-



 一連の山里のコメントについて、お笑い評論家ラリー遠田氏は「見事なバランス感覚」と分析。

「どのコメントをとっても、事務所、先輩芸人、後輩芸人、視聴者など全方位にわたって配慮しているのが感じられるコメントでした。『スッキリ』では、それまで加藤さんが感情的になって張り詰めた空気が流れていたので、視聴者のためにあえて和ませるようなことを言ったのでしょう」

 しかも、その内容は、加藤と事務所の「どちらにも悪い印象を与えない絶妙なものだった」という。

「山里さんの優れている点は、他人を直接傷つけたり、馬鹿にしたりするようなことを絶対に言わないところです。オチをつけるときには、必ず自分を下げることで落とす。自分をやられ役にすることで、他人を巻き込まずに優越感だけを与えて笑いを取ることができる。

 たとえ芸人でも、自分の中にある小さなプライドにこだわってしまい、自虐を徹底できない人は多い。でも、山里さんにはそれがない。どこまでも自分を下げることにこだわるんです」

絶賛される“コメント力”を身につけた背景

メモ

 さらに、山里がこうしたコメント能力を身につけた背景を、ラリー氏は次のように分析。

「もともと慎重で臆病な性格なので、誰にも嫌われたくないというのが根底にあるのでしょう。そして、仕事に関しては完璧主義なので、コメントのひとつひとつをそうやって作り込むことに喜びを感じている。

 さらに言うと、山里さんには“芸人として秀でているものがない”というコンプレックスがあるんです。というのも、生い立ちが珍しいわけでもなく、特別な感性を持っているわけでもない。そんな自分が思ったことをそのまま言っても誰も笑ってくれるはずがないと。

 だから、事前に何を言うかを徹底的に準備して、一言一言を磨いていくスタイルを選んでいるのだと思います。今でも収録前の準備と収録後の反省メモは欠かさないといいます。デビュー以来、ずっとそれを貫いているからこそ、あのコメント能力が身についたのでしょう」

<取材・文/鴨居理子>

【鴨居理子】

「bizSPA!フレッシュ」エディター

※山里亮太Instagamより