light-567759_640

Image by Gerd Altmann from Pixabay

 その事件は2016年末から始まった。キューバの首都ハバナにある大使館で働くアメリカやカナダの外交官たちが、次々と原因不明の健康上の被害を訴え始めた。

 彼らによると、自宅やホテルで耳をつんざくような高音のノイズを聞いてから、頭痛、めまい、混乱といった症状が現れるようになったという。

 2017年にはキューバにある大使館の職員が半分以上にまで削減されるほどの深刻な事態となった。その原因は音響攻撃によるものだと言われているが、いまだに正確には分かっていない。ただし今回の報告で、彼らの脳が構造的に変化していた事実が明らかとなった。

―あわせて読みたい―

鳴りやまないブザー音。1970年代から今日まで続く謎のロシア短波無線放送局「UVB-76」
カリブ海から発せられる謎の怪音、「ロスビーホイッスル」の正体(英研究)
怪音ミステリー。8年間も原因不明の音に侵されているカナダの都市「ウィンザーハム」現象
オハイオ州のヘビのような形象墳「サーペント・マウンド」に響く謎の怪音
暗雲とともに鳴り響く謎の怪音「アポカリプティック・サウンド」がまたスロバキアで発生

ハバナ症候群による国際的緊張の高まり

 この謎の症状は「ハバナ症候群」と呼ばれている。

 現時点では何が原因なのか不明だが、そのせいで2017年には大使館の職員が半分以上にまで削減されるほどの深刻なものだ。

 さらにワシントンからはキューバの外交官2名が追放され、トランプ大統領が責任はキューバ側にあると発言。カナダの外交官5名は損害賠償を求めて訴訟を起こすなど、事態はエスカレートしている。

 一連の事件に関連し、国務省の担当者が「超音波アタック」や「指向性の現象」といったことに言及しており、キューバ政府が超音波兵器で攻撃を仕掛けているという噂まである。


How an Alleged Sonic Attack Shaped U.S. Policy on Cuba | Times Documentaries

脳に構造的な変化が生じていることが判明

 今回、ペンシルバニア大学の研究チームがハバナ症候群にかかった外交官たちの脳をMRIでスキャンしてみたところ、重大な構造的変化が生じていることが判明した。

 『Journal of the American Medical Association』に掲載された研究では、症状を訴える40名の外交官の脳をMRIで詳細にスキャンし、それを年齢や学歴・職歴などが似ている健康な人の脳と比較した。

 その結果、外交官の白質(学習を担う中枢神経系の領域)の全体的なボリュームが5パーセント小さいことがわかった。さらに聴覚ネットワークの機能的な結合がおよそ15パーセント低下していた。

 ハバナ症候群は精神的なものであると主張する専門家もいたが、少なくとも確かにその原因となる物理的な変化はあったわけである。

見たこともない謎の症状

 アメリカ・ペンシルベニア大学ダグラス・スミス医師は、こうした患者で発見された脳の変化を「電圧の低下」に例え、次のように話している。

まったく未知の変化です。初めて見るもので、とても興味深いです。その正体が何なのかはっきりとはわかりませんが、何かが起きているようです。

 スミス医師によると、患者の中には回復した人もいるが、未だに謎の症状で苦しみ続けている患者もいるという。

コオロギの鳴き声説も

 超音波兵器が使われているという説は、2017年にアメリカの職員によってキーンと鳴る高音ノイズが録音され、それがマスコミによって報じられたことで広まるようになった。

高音ノイズを録音した動画

Recordings Reveal What Americans Heard During 'Sonic Attacks' in Cuba: Report

 しかし今年初めに発表された分析では、高音のノイズコオロギの鳴き声であることが明らかにされている。

 なお、キューバ政府はこの事件への関与を一貫して否定している。

References:US diplomats' brains were shrunk by sonic attacks at Cuban embassy, study finds

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52277418.html
 

こちらもオススメ!

―歴史・文化についての記事―

ストーンヘンジは重い石を持ち運ぶためラード(豚の脂)を利用して建てられたという新説が登場(英研究)
触れるな危険。チェルノブイリの森の中で発見された作業車両部品「チェルノブイリの爪」
ざわざわ...胸騒ぎが止まらない。驚きの7つの事実
3500年前の失われた宮殿がダムの底から発掘される(イラク)
王室ゆかりの公園で発見された逆向きの五芒星。ある日忽然と消えるミステリー(スコットランド)

―知るの紹介記事―

ツングースカ大爆発に関する新たなる研究。このような大規模な爆発は数千年に一度
10の質問から状況を思い浮かべることで自分の心理状態がわかるマインドテスト
アメリカの警察、保護施設から引き取ったピットブルを訓練し、K9(警察犬)として活躍の場を与える取り組み
スマホを使いすぎると、情報の意味を分析したり、理論的に考える能力が一時的に低下する(米研究)
話は聞かせてもらった。人類は760年以内に滅亡する可能性が50%(アメリカの専門家)
キューバの大使館で働く外交官の脳が構造的に変化するという謎の症状。やはり音響攻撃によるものなのか?