iStock-1022045216_e

Supersmario/iStock

 日本でも今年は連日の梅雨曇りで日照不足が続き、農作物への影響が懸念されているが、ヨーロッパの一部の地域では毎年、日照量が乏しくなる時期がある。

 そのため、LEDの人工光を使用した室内で作物を育てる試みが流行の兆しを見せており、ハーブレタストマトといった市場価値の高い作物を一年中光で照らされた温室で育てられている。

 このやり方ならば、土地の限られた都心部でも農業が可能になり、さらに地方から都市まで作物を運送する必要もなく、都会にいながら地産地消を楽しめる。だがこれまで、人工光を照射するコストが高いことが問題となっていた。

 そこで今回、コストを削減できる人工光の照射方法が研究された。

―あわせて読みたい―

NASAが火星での植物栽培に本気を出した。宇宙農業を念頭に置いた膨張式グリーンハウスを設計
2050年までにチョコレートがなくなる?地球温暖化や栽培法、消費量の増加が影響(米海洋大気庁)
枯れちっち。史上初の月面で発芽した植物が枯れてしまった件。寒すぎる月の夜が原因
家の中で簡単に90種類の野菜や果物を育てることができるプランターが販売決定
バナナなのにバニラアイス味!未熟果は青色のその名も「アイスクリームブルーバナナ」は日本でも育てられるしネット通販で苗木が買える

光と闇のサイクルを短くすることで効率化

 基本的に、室内温室栽培では赤と青の発光ダイオードが使用される。その電気代はときに生産費の25パーセントを超える。

 これでは太陽の光を無料でふんだんに使える地域での農業には太刀打ちできないし、温暖化を引き起こす二酸化炭素も大量に放出されてしまう。

 そこで、30年以上植物の成長と光との関係を研究しているアメリカ・フロリダ大学のケヴィン・M・フォルタ氏は、更に効率的な方法を模索した。

 12時間毎の昼と夜のサイクルを繰り返す代わりに、数時間あるいは数分単位のもっと短いサイクルで植物を育てられないだろうかと考え、光の総量としては同じでありながら、それを色々な間隔に区切って植物に浴びせてみるという実験を行うことにした。

1万円札と1円玉1万枚は同じ?

 いうまでもなく、植物が光を必要とするのは光合成のためだ。太陽のエネルギーを使って、二酸化炭素と水を結合し、代謝を支える糖を作り出す。また光には成長する方向を導くという役割もある。

 このように植物にとって光はとても重要なものであるために、それを細かく分けてしまえば問題が生じるかもしれない。

 想像してほしい。あなたは1万円札を手に入れればウキウキしてくるだろうが、同じ金額であっても1円玉1万枚ではあまり気分が上がらないだろう。

 植物もこれと同じで、同じ量の光であっても、細かく分けられてしまえば、うまく育ってくれない恐れがあった。

 実験でも予想どおりの結果となった。ケール、カブ、ビートのタネを光の照射を12時間、照明を切り真っ暗な状態を12時間というサイクルで4日間にわたり育ててみたところ、普通に成長し、色素が蓄積され、大きくなった。

 だが光と闇のサイクルを6時間、3時間、1時間、30分で試してみると、タネはそれを拒絶した。光の総量は同じだったのに、それを細かくしすぎるとダメだったのだ。

iStock-519556328_e

nikkytok/iStock

光と闇のサイクルを短く縮めれば、植物体内時計に関係しない


 同じ量の光であっても短いインターバルで当てると、植物にとっては暗闇の中で育っているのと同じになってしまう。

 フォルタ氏は、光と闇のサイクルが植物の体内時計と一致しておらず、タネが今何時なのかわからないことが原因ではないかと考えた。その結果、光を求めて背を伸ばし、色素を作り出すプロセスが停止してしまうのだ。

 ところが、光の照射サイクルをさらに細かくすると驚くべきことが起こった。

 光と闇のサイクルを5秒間隔にまで縮めると、植物は普通のサイクルのときと同じように成長したのだ。ここまで短くしてしまうと、体内時計が起動せず、数秒間隔の光であってもそれほど気にしなくなるようだった。

88年前の結果の再発見

 だが、じつはこの発見は、88年も前にすでに知られていたことの再発見だったようだ。

 米農務省の科学者が1931年に同じ現象を確認していたのだ。その実験は成長した植物を対象としたものだったが、今回のタネの実験と驚くべき類似を示していた。

 またフォルタ氏の実験は古い結果の再現だっただけでなく、電気代の節約にもならなかった。24時間5秒間隔のサイクルを続けたときの電気は、照明を12時間点けっぱなしにしたときの電気に相当する。電気の使用量は何も変わっていないのだ。

iStock-896569940_e

iStock

闇の時間を長くすることで電気代の節約可能


 では、今度は闇の時間を長くしてみたらどうだろうか? 5秒光を点けたら、10秒消すといった具合だ。こちらの実験は1931年当時はやられていない。

 すると、植物は多少暗い時間が延びたからといって気にしないことがわかった。光合成と生体作用のために5秒光を当てて、それから10秒間あるいは20秒間光を消すというやり方でも、光と闇をそれぞれ同じ時間繰り返したときと同じようにタネは成長した。

 これを室内農業で行えば、少なくとも30パーセントは電気代を節約できるだろう。コストネックだった室内農業にさらに競争力持たせることができる。

 この結果はリーフレタスでもうまくいった。そして、こちらの場合では、葉っぱがより大きく、色が紫ではなく緑色になるレタスもあった。これを利用すれば、作物の種類を増やすこともできるだろう。

iStock-1063755138_e

iStock

 都心にある最新設備の高層ビルで作られた新鮮な野菜――近い将来、そんなことを売り文句にする農業が登場するのかもしれない。

References:Micro-naps for plants: Flicking the lights on and off can save energy without hurting indoor agriculture harvests/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52277415.html
 

こちらもオススメ!

―植物・菌類・微生物についての記事―

パイナップルの苗木が「いびき防止」に効果あり?NASAの研究がきっかけでイギリスのスーパーで激売れ中
だがちょっと待ってほしい。植物に意識があるという風潮に論文で反論する研究者(米研究)
緑色のハチドリかな。と思ったら植物だった!ハチドリそっくりに見えるオーストラリアの花「グリーン・フラワーバード」
サボテンの葉から安全な生分解性プラスチックを作る方法が発見される(メキシコ研究)
自然に起きる500倍という速さで植物の絶滅が進んでいることが世界最大規模の調査で判明(英研究)

―知るの紹介記事―

地球にはすでに500万人の異星人がいると主張するアメリカの元国家公務員名乗る男性。異星人の見分け方は?
ヒッチコックかな。屋根の上に巣を作り老夫婦を激しく攻撃し続けたカモメ。6日間外に出られず(イギリス)
鳥のヒナは卵の中からお互いにコミュニケーションをとっていることが判明(スペイン研究)
キューバの大使館で働く外交官の脳が構造的に変化するという謎の症状。やはり音響攻撃によるものなのか?
ツングースカ大爆発に関する新たなる研究。このような大規模な爆発は数千年に一度
注目される人工光による室内農作物栽培。コスト削減の為の光の当て方が研究される(米研究)