やりやがった。原田龍二が裸になっている。

7月24日(水)発売の雑誌「TV Bros.2019年9月号」東京ニュース通信社)。特集「TV Bros.創刊32周年記念 32ページ総特集 裸一貫がんばりBros.」の中に、そのグラビアはあった。

題して、「創刊32周年初めて(の前貼り)をア・ゲ・ル(ハート) 龍二もブロスも裸一貫で出直します 原田龍二裸一貫グラビア」。見開きいっぱいに原田龍二が寝そべる。
傍らには風呂桶と「ポール ジャブレ エネ シラー 2016」というワイン。2016年大みそかに放送された『ガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系)での、アキラ100%とのコラボレーションを意識している。

股間は、青海波文様の手ぬぐいと紫のバラ(花言葉は「気品」「尊敬」など)で隠れている。『一湯入魂』竹書房)という温泉巡りの本を出している「温泉俳優」のイメージからか。そして、半紙に書いた「裸一貫」の文字。近年の原田龍二を見開きに詰め込み過ぎだ。

セクシーやエロではない「無」の裸グラビア
8ページに渡る裸の原田龍二の特集。全ページ裸の写真だが、これが不思議とセクシーでもエロくもない。そして、写真自体が面白いというわけでもない。これは悪い意味ではない。どういうわけか「身ひとつで投げ出された感」があるのだ。

原田龍二といえば(「といえば」と言うのもおかしいが)、今年5月に「週刊文春」(文藝春秋)で屋外不倫が報じられた。今回の裸一貫グラビアは、その報道から謝罪と反省を経て「出直す」ためのものだ。

濡れて光を受ける原田龍二の裸体。
おでこや首、脇の下、お腹のあたり、膝には、アラフィフなりの細かい皺が刻まれている。
一文字に結んだ唇には、時折紫のバラを加えてみたりなどするものの、笑みはない。
裸体と手ぬぐいとワインの入った風呂桶にバラの花びらを散らした、シュールな1ページ。
斜め上から撮られたお決まりの流し目風。
股間を隠すように膝を抱えて座る、よくあるポーズ。
そして、「裸一貫」と書かれた半紙で股間を隠しての仁王立ち。

決まり切った構図やポーズ。股間以外の、たとえば皺や少し緩んだ胸やお腹などを隠さない様子。虚空を見るような表情。雑に置かれる小道具たち。
「あるがままを見せる」というポジティブな意味よりも、「ただ演出をしていない」という“無”とか“ゼロ”に近いものを感じる。

ああ、いまこの人は「こう見せたい自分」がないのだ。
世間にどのように見られても良く、来るものを受け入れようとしている。
それは、同特集内のインタビュー記事からも伝わる。

〈今はもう“話せるサンドバッグ”なので、
 なんでも聞いてください〉
(「TV Bros.2019年9月号」東京ニュース通信社/p.21)

このグラビアは、原田龍二の新しい姿、いまの姿を見せるものではない。不倫報道からの謝罪と反省を経て、変化している過程の一瞬を見せるグラビアだ。ここに写っている原田龍二は、もう過去になっている。

〈今回の企画もそうですが、こうやってひとつひとつ、自分なりのケジメをつけることが助走となり、これからはもっと研ぎ澄まされた自分になっていくと思うので、今まで以上にキレた最高のパフォーマンスをお見せできるかと思います。〉
(「TV Bros.2019年9月号」東京ニュース通信社/p.22)

「達観したい」原田龍二が彫刻に見えてくる不思議
最初にこのグラビアを見たときに、ひとつ警戒したことがあった。
「不倫報道に対して(謝意を込めて)裸になる」というのは、男性だけに許された不公平・特権を利用しているのではないかと考えたからだ。

しかし、先に述べたようにこれは謝罪の裸ではなかった。そもそも、原田龍二は『一湯入魂』や写真集『蜜愛』講談社)で、思いっきり裸になっている。脱いでいるのが当たり前すぎて、裸になったくらいでは謝意を表すことができないのだ。

インタビュー内で、「達観したいんですよね。」と原田は言う。インタビュアーは「この1ヵ月間でハダカさえも脱ぎ捨てた感があります。」と応えた。

この1〜2年の「不倫・不貞を笑いに変えればなんとなく許された雰囲気」になる感じを不安視していた。配偶者にせよ不倫相手にせよ、傷ついた人が置いていかれる状況。それが芸能人だけでなく一般社会にも広まって、不倫を笑えないことを「狭量」とみなされるならば、それは優しい世界ではないと思うからだ。

しかし、原田は「達観したい」と言う。どこかに収まるのではなく、いまを生きている人々を超えていきたいと。なんかもう、これは他の人が簡単に真似できる生き方ではないんじゃないか。

謝罪でも反省でもなく、人を超えていくために裸になった原田龍二。インタビューを読んだ後に、改めて仁王立ちの裸体をじっと見る。セクシーでもエロくもない、何も足さず、何も引かれていない“ゼロ”の原田の裸体が、不思議と人ならざるものの彫刻のようにも見えてくる。

(むらたえりか

原田龍二の裸グラビアが掲載された雑誌「TV Bros.2019年9月号」(東京ニュース通信社)