東京のシネマヴェーラ渋谷で8月30日(金)まで特集「名脚本家から名監督へ」が開催される。タイトルの通り、脚本家として高評価を集めて演出に進出した監督たちの作品を集めたもので、歴史に残る大傑作が一挙に上映される映画ファン垂涎の特集だ。

人はどのようにして映画監督になるのか? 現在のように映像撮影機器や上映設備が手軽ではなかった時代、映画監督を目指す者たちはあの手この手で撮影所に入り込み、そこで職を見つけ、名を上げて監督になるチャンスをうかがった。20世紀を代表する映画作家A・ヒッチコックサイレント映画のタイトルデザインから映画界に入り、『ローマの休日』を手がけたウィリアム・ワイラーは撮影所の雑用係からはじめて監督の座に登りつめた。中でも脚本家は映画づくりの中心部にいる役回りで、仕事が成功すればプロデューサーや映画会社の幹部から名指しで評価され、監督に就任するケースが多かった。

今回上映されるのは1930年代~50年代の外国映画で、プレストン・スタージェス、ビリー・ワイルダー、ジョセフ・L・マンキウィッツが脚本や監督を手がけた作品が上映される。

劇作家として活動した後に脚本家として映画界に入ったプレストン・スタージェスは、男女の軽妙な掛け合いで観客を魅了するスクリューボール・コメディの名手だ。ヘンリー・フォンダ、バーバラ・スタンウィックが共演した『レディ・イヴ』や、超個性的なキャラクターが次から次に登場する『パームビーチ・ストーリー』など巧妙な展開とセリフの応酬で観る者をトリコにする。

ビリー・ワイルダーは新聞記者を経て脚本家に転身。エルンスト・ルビッチ監督の傑作『ニノチカ』や、ハワード・ホークス監督の『ヒットパレード』などの脚本を担当する一方で、自身がメガホンをとり、共同で脚本も執筆して『失われた週末』でオスカー4部門を受賞。『サンセット大通り』など多くの名作を世におくりだした。

たったの2年間で4つのオスカー(監督賞と脚色賞を2回ずつ)に輝いた才人、それがジョセフ・L・マンキウィッツだ。彼もスタージェスやワイルダーと同時代に活躍し、『イヴの総て』『三人の妻への手紙』『五本の指』などを発表。興行的には失敗してしまった『クレオパトラ』や遺作になった『探偵スルース』など、晩年まで映画ファンをわかせた。

3人ともハリウッド黄金期を代表する脚本家/映画監督で、今回の特集では彼らの洒脱で巧みな語りをスクリーンで存分に楽しめる。

名脚本家から名監督へ
8月30日(金)まで
シネマヴェーラ渋谷で開催中

『百萬弗貰ったら』
『力と栄光』
『ろくでなし』
『特急二十世紀』
『模倣の人生』
『青髯八人目の妻』
ミッドナイト
『ニノチカ』
『七月のクリスマス』
『教授と美女 Ball of Fire(111分)』
レディ・イヴ』
『サリヴァンの旅』
『パームビーチ・ストーリー』
『熱砂の秘密』
『凱旋の英雄万歳』
『深夜の告白』
『失われた週末』
『呪われた城』
『記憶の代償』
ハロルド・ディドルボックの罪』
『幽霊と未亡人
『殺人幻想曲』
『異国の出来事』
『ヒットパレード』
『踊る海賊』
『三人の妻への手紙』
『バシュフル盆地のブロンド美人』
『他人の家』
『イヴの総て』
『復讐鬼』
『サンセット大通り』
『うわさの名医』
『地獄の英雄』
『五本の指』
『第十七捕虜収容所』

※『レディ・イヴ』『パームビーチ・ストーリー』『サリヴァンの旅』は35mm上映
※そのほかはすべてデジタル上映

『ヒットパレード』