セクシー路線で有名だった、とある格闘ゲームが炎上した。そこに至る経緯を、ゲームを知らない人にもわかりやすく紹介してみたい。(取材・文/フリーライター 武藤弘樹)

eスポーツでも人気の格ゲー
格ゲーにつきものの女性キャラ

 競技人口の少なさから、日本は「eスポーツ後進国」に挙げられてきたが、近年国内でも少しずつeスポーツへの関心が高まっている。親から「ゲームは1日1時間」と厳しく規制されてきたファミコン世代にとっては「時代は変わったな」と感慨深いものがある。

 eスポーツプレーされるゲームジャンルはいくつかあるが、対戦格闘ゲーム(※以下、格ゲー)は人気の一角である。格ゲーというと「ストリートファイターシリーズ」に代表されるアレで、1対1で戦って勝者を決めるシンプルなものである。おそらく日本で一番有名であろうプロゲーマー梅原大吾氏も格ゲープレーヤーである。

 人気のジャンルだから実に多くのタイトルが発売されているが、おおむね「1対1で戦う」点は同じであっても内容はそれぞれかなり違う。それはコンセプトに始まって、登場するキャラの意匠、システム、世界観、操作性、爽快感、駆け引きのあり方などで、こうした要素が変わるだけでまったく別の趣を備えたゲームとなる。

 しかし、なぜかというべきか、順当にというべきか、多くの格ゲーが踏襲し、共通させているポイントが一つある。それは「魅力的な女性キャラがいること」である。この女性キャラは多くの場合セクシーな要素を持っている。

対立する2派のユーザー

 一世を風靡し、格ゲーを世に知らしめた「ストリートファイターⅡ」の頃からこの流れは大きく変わっていない。素手でクマを倒した空手家や単身で相手部隊を壊滅に追いやった傭兵などといったものすごい経歴の猛者に混じって、かわいい女性キャラが少数いて、セクシーな衣装を翻らせて殴り合いを披露するのである(もっとも女性キャラの経歴もちゃんとすごいように設定されていて、「歴史を裏で動かしていた暗殺者一族の秘技を継ぐ」といった体になる)。

 このセクシー路線を追求した「デッド オア アライブ シリーズ」という格ゲーがあった。

人気タイトルゆえの悩み
対立する2派のユーザー

デッド オア アライブ(※以下、DOAシリーズ」はコーエーテクモゲームスの人気タイトルで、本編と称すべき格ゲーでは2019年7月現在、ナンバリングタイトルは6作目までがリリースされている。後述するが、外伝的な作品もいくつかあってこちらも人気である。

 格ゲー黎明期はドット絵の2Dものに次いで、ポリゴンの3Dものがはやり出した。「ストリートファイターⅡ」は前者、後者の草分け的作品には「バーチャファイター」や「鉄拳」がある。当時この3D格ゲー界に参入してきたのが「DOA」で、“3すくみ”と呼ばれるシステムなどいくつかの目新しさを備えていたが、なんといっても女性キャラの扱いがセンセーショナルであった。

 それまで格闘ゲーム内において華を添える存在であった女性キャラが、この作品では前面に押し出された。コスチュームはセクシーなものが多く、そして何よりバストの揺れ方の描写に力が注がれていて、ゲーム内で「胸がどれくらい揺れるか」を設定できるほどのものであった。

ゲームとして悩ましいところ

 女性キャラがこれでもかとセクシーに描かれたテイストは奇抜といってよかったが、格ゲーとしてのクオリティはしっかり高く、ファンを獲得して一躍“人気”3D対戦格闘ゲームとなった。

 しかしファン層が広い分、ゲームとして悩ましいところも出てきた。主にセクシー路線を歓迎する層(※以下、セクシー派)と、対戦ゲームとしての面白さにのめり込む層(※以下、ガチ派)の対立が持ち上がったのである。

「同じゲームユーザーなんだから仲良くすればいいのに」と思われる向きもあるかもしれないが、なかなかそう簡単にはいかない。セクシー派とガチ派、両派ともにこゲームへの愛は同じくらい深いにもかかわらず、ゲームに求める要素が180度違うのである。

 ガチ派にとってセクシー派は必要悪のような存在で、完全にいなくなると困るけど台頭しすぎても困る。ガチ派にとってセクシー派はゲームを支える一派ではあるが、ゲームがセクシーに寄り過ぎると格ゲーとしての仕上がりがおろそかになってしまう恐れがある。また、自分は真剣にプレーしているのにセクシー路線が強いから、周りから「あのスケベ格ゲーね」とレッテルを貼られるのも面白くない。

 実際に、タイトルの1作目からプレーしていたがセクシー路線が我慢できなくなって次回作以降で徐々に脱落していった人たちもいたそうである。

 セクシー派も同じような事情で、ガチ派を黙認せざるをえない。しかし、ガチ派から「ゲームを汚している」などと排斥されようものなら一気に火が付き、「自分らがいるからゲームの人気が支えられているのだ」と場外乱闘が勃発する。追加コスチュームを積極的に買うなどして金銭的にこのゲームを支えているのは、セクシー派だという自負がそもそもある。何をガチ派にあれこれ言われる筋合いがあろうか、とこういうわけである。

 両者が完全に共存することは難しく、だましだまし共存していく他なかった。

>>(下)に続く

人気格闘ゲームが炎上してしまった理由とは? Photo:PIXTA