アウェーとはいえ、まさか負けるとは思っていなかったよ。W杯アジア最終予選のヨルダン戦、日本は1-2で破れ、W杯本大会出場決定は6月までおあずけになった。

この試合、日本は引き分けでもW杯出場権を獲得できた。その余裕が悪いほうに出てしまったね。きれいにつなごう、つなごうとしてゴールへの意識が不足していた。ミドルシュートなんてほとんどなかった。試合を観ていた人はみんなストレスを感じたと思う。

格下との親善試合、例えば2月のラトビア戦や、この試合の直前に行なったカナダ戦では、そうしたサッカーでも点が取れた。また、ヨルダン戦では遠藤のPK失敗という不運もあった。

でも、W杯予選はそんなに簡単じゃないということ。負けたら終わりという状況のヨルダンには、日本をはるかに上回る必死さがあった。日本は2失点してからようやくエンジンがかかったけど、それじゃ遅すぎる。まあ、アジアで負けるときは、だいたいいつもこんな展開だよね。

ただ、ラッキーなことに、ほかの国が潰し合いをしているので、日本のW杯本大会出場は99%決まりという状況に変わりない。この負けがいい薬になって、再びチャレンジ精神が生まれればいい。

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ヨルダンに負けたのは残念だけど、最終予選(6試合で4勝1分1敗)での日本の歩みはまずまず順調といっていいだろう。

ライバルと思われたオーストラリア弱体化もあるけど、それ以上に、最初の2試合をホームで戦え、そこで連勝できたのが大きかったね。ホーム戦で確実に勝ち点3を奪うことの重要性を再認識させられた。

選手個人でいえば、ここまでのMVPは岡崎。彼はいつでも自分の持ち味を発揮している。1トップでは少し苦しいけど、2列目なら右でも左でもフィットして、得点に絡む。何より、ほかの誰よりも体を張っている。攻撃面だけでなく、守備面での貢献度も大きい。地味でもこういう選手がいてくれると、チームはずいぶんラクになる。中盤は激戦区だけど、今後も彼は欠かせないね。


逆に期待はずれだったのは香川。所属するマンチェスター・Uでは、周りの選手に使ってもらうことによって、持ち味を発揮できるようになってきた。でも、人を使ってゲームをつくる役割も求められている代表では、まだまだ苦労している。

その香川の起用法など、ザッケローニ監督の采配には相変わらず疑問だらけだ。

以前から言っているけど、特にメンバー固定の弊害は深刻だね。トップ下の本田が不在だった今回のヨルダン戦では、代役を香川にするか、(中村)憲剛にするかでさんざん悩み、結局、香川に任せてうまくいかなかった。直前のカナダ戦では、憲剛がトップ下に入ってから攻撃にリズムが生まれていたし、前半の香川のデキなら、後半開始から憲剛を入れてもよかった。それなのに、ヨルダン戦で憲剛を使わない。なんのためにカナダ戦で試したのかな。こういう采配をしていたら、チーム内に競争は生まれないし、サブの選手たちもしらけてしまう。

選手交代もいつも同じ。後手後手に回り、有効な打開策を示せない。これまでは選手の頑張りのおかげで、なんとか大きなボロを出さずに済んでいる印象だ。

予選突破はほぼ間違いないとはいえ、このまま来年の本大会もザッケローニ監督に任せていいのか、議論の余地は大いにあると言わざるを得ない。

その大きな判断材料になるのが6月に行なわれるコンフェデレーションズ杯(ブラジル)だ。本番の1年前に世界の強豪と最低3試合戦える。このコンフェデ杯でしっかりとザッケローニ監督の限界を見極める必要がある。

確かに、アジア相手には結果を残している。でも、日本の目標はW杯に出ることではなく、前回南アフリカW杯のベスト16を上回ること。その目標を達成するための監督として、ザッケローニがふさわしいのか。もし、昨年10月のフランス戦(日本が1-0で勝利)のように、誰が監督でもできるような超守備的なサッカーをして、しかも、結果が伴わないようなら、即刻解任すべきだね。

そして、チームとしてはコンフェデ杯が終わってから本大会までの1年で、どこまで底上げできるか。個人的にはもう海外組の力はわかったし、ぜひ国内組にチャンスを与えたい。セレッソ大阪の柿谷(かきたに)や鹿島の柴崎など一度、試してみてはどうか。これまでの主力にも危機感が生まれるはずだ。

日本サッカー協会の責任も重大だ。強化試合のマッチメイクをどれだけ頑張れるか。

今のままW杯本大会を迎えたら、グループリーグ敗退が妥当なところ。組み合わせに恵まれたとしても、ベスト16が限界。それをベスト8にするために選手が頑張るのはもちろん、メディアとファンもより高いレベルを求め続けなければいけないね。

(構成/渡辺達也)