『お盆の弟』(15)の大崎章監督が西山小雨の楽曲「未来へ」を原案に、台本なしの即興芝居で紡いだ『無限ファンデーション』が、8月24日(土)から公開される。このたび、諏訪敦彦、西川美和ら錚々たるメンバーからのコメントが到着した。

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人付き合いが苦手な女子高生の未来は、服飾デザイナーになる夢を胸に秘め、誰にも打ち明けることなく退屈な日々を過ごしていた。ある日の帰り道リサイクル施設から聴こえる澄んだ歌声に導かれ、ウクレレを弾きながら歌う不思議な少女、小雨と出会う。さらには未来が描いた洋服のデザイン画を目にした演劇部のナノカたちに誘われ、舞台の衣装スタッフとして入部することになる。戸惑いつつも小雨やナノカたちに心を開いていく未来だったが、彼女たちの一夏はやがて思いがけない方向へと走りだしていく…。

主人公の未来を演じた南沙良(『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』)のほか、原菜乃華(『はらはらなのか。』)、小野花梨(『SUNNY/強い気持ち、強い愛』)、近藤笑菜(ドラマ「腐女子、うっかりゲイに告る。」、日高七海(『飢えたライオン』)ら、若手実力派女優たちが体現する、瑞々しくも緊張感あふれる夏の一ページを切り取った本作。

このたびそんな本作に、錚々たるメンバーからのコメントが到着。脚本のない映画を制作した経験がある諏訪敦彦監督からは「即興演技は、それが単に映画にリアルを纏わせる衣装でしかないならば虚しい。俳優たちが自らの生を賭けて存在しようとする時、彼女たちの存在は花火のように飛び散って映画を破壊するかもしれないが、それでもこの映画はひとりひとりの生を肯定することをやめない」と賛辞を贈った。

また、西川美和監督からは「田舎の高校生のいざこざという、ちっぽけなことだからこそ、大きな映画の大きないざこざより、誰でも硬直するほど身に覚えがあり怖いのです」とのコメントが。脚本家の狗飼恭子からは「わたしたち脚本家は、細かい並びや句読点にまでこだわって台詞を書いているというのに、生身の人間から瞬間的に発せられる言葉の重みとその説得力たるや」と、緊張感あふれる役者たちのぶつかり合いに関心した様子だ。また、ほかにも女優の穂志もえか、根矢涼香、ミュージシャンのつじあやのBase Ball Bearの関根史織、アイドル評論家の中森明夫からもコメントが寄せられている。

少女たちが過ごした2018年の夏の温度感が伝わるような本作。ぜひ、酷暑の納まる8月末に劇場で、その“温度”を体感してみてはいかがだろうか。

<コメント>

●諏訪敦彦(映画監督)

「この感動はどこから来るのだろう?映画の冒頭、数学の問題が解けない未来に、先生は『大丈夫、大丈夫』と言う。ただ『大丈夫』と言うこと、何の根拠もなくそれでいいと肯定すること、それがこの映画を貫く精神である。傷ついた人間にしてやれることは、ただ寄り添い、耳を傾け、背中をさすりながら『大丈夫』と言うことしかないことを、この映画は心底知っている。即興演技は、それが単に映画にリアルを纏わせる衣装でしかないならば虚しい。俳優たちが自らの生を賭けて存在しようとする時、彼女たちの存在は花火のように飛び散って映画を破壊するかもしれないが、それでもこの映画はひとりひとりの生を肯定することをやめない。それがたとえ死者であっても。『大丈夫、大丈夫』その覚悟がこの映画を輝かせている」

●西川美和(映画監督)

「大崎さんは先輩です。ですがこの映画のトーンは私の映画とは全く違います。身勝手さやずるさや嫉妬心という人間についてまわるものを道具にして劇的に展開させるのではなく、ただゆるく許していく甘さに、確かに救われる観客がいるのだと思います。これも大崎さん流の業の肯定でしょうか。即興の是非はともかく、まぁ女同士の分裂の鬼気迫り方には体を強張らせました。田舎の高校生のいざこざという、ちっぽけなことだからこそ、大きな映画の大きないざこざより、誰でも硬直するほど身に覚えがあり怖いのです。あそこは面白かった!」

●狗飼恭子(作家・脚本家)

「わたしは、この映画がみんなに観られることが恐ろしい。良い俳優と良いスタッフと良い監督がいれば、脚本がなくとも良い映画がつくれることが証明されてしまうから。わたしたち脚本家は、細かい並びや句読点にまでこだわって台詞を書いているというのに、生身の人間から瞬間的に発せられる言葉の重みとその説得力たるや。みんな観ないといいな。でも観られちゃうんだろう。面白いから」

つじあやの(シンガーソングライター)

「未来さんの涙、小雨さんの涙に胸が熱くなりました。もう通り過ぎてしまったあの若く、脆く、青い時代はこんなに揺れ動くものだったのでしょうか。数年前にお会いした小雨さん。存在感のある、芯の強いシンガーソングライターになられていて、嬉しいです。主題歌『未来へ』は、とにかく美しかった」

●穂志もえか(女優)

「こんなものを見てしまっていいのかという気持ちと、今見れて本当によかったという気持ち。衝撃的なほどリアル。あの、目の前のことにがむしゃらで、無敵な、10代の女の子たち。もう二度と見られないと思っていたあの顔、息遣い、熱さをもう一度体験できる映画。西山小雨さんの音楽がたまらない」

●関根史織(Base Ball Bear)

「前作『お盆の弟』はモノクロ映画で、今作は“全編即興演技”って事だけでも、大崎監督の『タダじゃおかねー』という心意気を感じます。即興ならではのセリフ回しやテンポ感は恐らく賛否両論あるのではないかと思いますが、最近わたしも『少数派でも、反感を買ってしまっても、結果失敗したとしても、どうしてもやりたいと思ってしまったものはやるしかないんだよな』という気持ちでいますので、映画に出てくる女の子たちと、大崎監督を応援したいと思います」

●根矢涼香(女優)

「自分の中の守りたいものを守ることに必死だった。それが全てだから。ずっと同じ歩幅で歩けるとは限らないと分かっていたけれど、やっぱり痛い。彼女たちの傷口を、西山小雨さんの歌声が浸し、癒し、再び強く繋げていく。走り出す準備は整った」

中森明夫(アイドル評論家)

「こんな無謀なことができるのは、真に大人の監督だけだ。待機すること。一回性の瞬間に賭けること。大崎章は目の前の少女たちを信じている。自分が『待ち、賭ける』に値することを確信している。その視線は限りなくやさしい。しかし、その『やさしさ』は、希望などではない。『心底、絶望した』大人だけが持つ…恐ろしいやさしさだ。やさしくて恐ろしいオジサン監督によって少女らは『演じる』ことを超えて、『生きる』ことを要請される。その奇跡の瞬間を目撃してほしい。映画館の暗闇で、じっと目を凝らして。そっと耳を澄ませて」(Movie Walker・文/編集部)

話題の即興映画『無限ファンデーション』に賛辞が続々!