先日、ある女子高生から筆者に相談が届きました。

「小さい頃から、食事の時にお母さんに『早く食べなさい』『何で全部食べられないの』と強く言われ、プレッシャーをかけられてきました。その影響なのか10年ほどの間、人と一緒にご飯を食べようとすると吐き気を感じて、楽しくご飯を食べられないことが続いています」

 学校給食の過剰な「完食指導」の後遺症に苦しむ人がいる一方、この女子高生のように、幼い頃の家庭における経験から「会食恐怖症」になる人がいます。筆者は、会食恐怖症に悩む当事者やその保護者からの相談に乗っていますが、同時に、家庭での食育に関する相談も受けています。その内容の多くは、感覚過敏、偏食、少食、食べるのが遅い子どもについて「どうすれば食べてくれるのか、分からない」という悩みです。

 今回は「食べない子ども」がどうすれば食べられるようになるのか、お話します。

まずは興味を持たせて提案する

「試験の前で緊張しているとき、食欲が湧かなかった」

 そんな経験がある人も多いと思いますが、緊張感が食欲を抑えてしまうのは子どもも同じです。先日、「私の子どもは同じくらいの年齢の子と比べて、体が小さくて不安になります。子どもがご飯を食べないとき、ついイライラして『食べなさい』と強く言ってしまいます」という相談が、お母さんから届きました。

 周囲と比べて体が小さく不安になる気持ちは分かりますし、大きく育ってほしいという願いから、つい言ってしまう気持ちも分かります。しかし、「食べなさい」と強く言ってしまうことで子どもプレッシャーを感じてしまうと、逆に食欲が湧かないということが起きてしまいます。

 食べない子が食べるようになるには(1)食べ物や食べることに興味を持たせる(2)その上で「食べてみたら?」と提案する、というステップを踏むことが大切です。しかし、食べない子に悩むお母さんを見ていると、子どもが興味を持つ前に提案してしまったり、提案ではなく「食べなさい」と強制したりするケースが多いようです。

苦いコーヒーを飲みたがる理由は?

 先日、給食を残す園児がいない保育園で有名な「さくらしんまち保育園」(東京都世田谷区)の小嶋泰輔園長とお話する機会がありました。その中で出たのが「あんなに苦いコーヒーを、子どもでも飲みたがるのはなぜか」という話題です。

 結論としては、そこに強制がなく、前向きな動機があるからです。例えば、お母さんが家でコーヒーを飲んでいたとして、その時点で子どもは「どんな味がするんだろう」「ちょっと飲んでみたいな」と興味を持ちます。そのタイミングで「ペロッとだけ、なめてみる?」などの提案があると、苦いコーヒーでも自分から進んで飲むということが起きるわけです。

 また、コーヒーには「大人だから楽しめるもの」という、子どもにとって憧れのイメージ(前向きな動機になり得る要素)がありますから、苦くても挑戦したくなり、飲めるようになるわけです。

「強制ではなく、興味を持たせた上で提案をする」ということ以外にも、大切なことがあります。それは「子どもが食べなくてもいいから、食卓に出してみる」ということです。

 なぜなら「苦手だったけど、食べてみようかな」というタイミングは、いつ訪れるか分からないからです。具体的には、「おうちならキノコを食べない子どもでも、バーベキューの時だけ食べる」というケースがあります。これは子どもバーベキューを楽しんでいて、とても前向きな気持ちになっているからです。誰しも苦手なことに挑戦するのは前向きなタイミングではないと難しいのですが、それは「食」の場面でも一緒だということです。

 ここで大切なのは「食べなかったからといって責めない」ということです。責められることでプレッシャーを感じてしまえば、もっと食べなくなってしまうでしょう。

 周りの子と比べすぎずに、その子の食の趣向を尊重した上で興味を持たせてあげること。「食べなさい!」という強制ではなく、「食べてみたら?」という提案をすることを意識していきましょう。仮に食べられなくても、子どもと笑顔で食卓を囲むことが何より大切です。その楽しい雰囲気があれば、今は食べられなくても将来的に食べられるものが増えていくのではないでしょうか。

日本会食恐怖症克服支援協会 山口健

「食べない子ども」にどう対応すべき?