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 私の従妹は、猫を飼ってから猫アレルギーが発症し、通院しながらも、猫かわいさに撫でまくって、症状が悪化するという日々を14年間続けている。

 生まれた時から猫がいる環境で育つと猫アレルギーになりにくいとは言われているが、大人になって初めて大好きな猫を迎え入れたら、実は猫アレルギーだったなんてケースを良く耳にする。

 猫は大好きなのに猫アレルギー。そんな因果な宿命を背負ってしまった人に朗報かもしれない。

 ネスレ・ピュリナ社が『Immunity, Inflammation and Disease』に掲載した研究によれば、キャットフードに抗体を入れることで、アレルギー症状を緩和することができるのだそうだ。 

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猫アレルギーの原因となる「Fel d1」

 世界的にみると、およそ20パーセントの人に猫アレルギーがあると言われている。結構高い比率である。

 その原因となるのは猫が分泌するアレルゲンで、特に「Fel d1」というタンパク質は、アレルギー反応の95パーセントを引き起こしているとされる。

 Fel d1は猫の唾液や皮脂腺で作られる。そしてペロペロと猫が毛づくろいしたり、おしっこをしたりすると、そこに含まれているアレルゲンが被毛に付着する。

 すると毛が抜けたり、垢が落ちたりすることで広まるし、とても軽く空気中を漂うために、人が吸い込みやすい。さらにべたっとくっついて、室内に蓄積されていくという厄介な性質もある。

 こうして、Fel d1にアレルギー反応を持つ人は、くしゃみや鼻水で苦しむことになる。

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キャットフードに抗体を混ぜる


 ところが抗体入りのキャットフードを食べた猫のFel d1は、人間の免疫系には認識されないようになり、アレルギー症状が緩和されるのだという。

 卵から抽出されるFel d1の抗体をキャットフードに混ぜて猫に与えると、その口の中で効果を発揮し、唾液に含まれるアレルゲンを中和してくれる。このおかげで、猫が毛づくろいをしてもアレルゲンが被毛や皮膚に付着しなくなるのだ。

 実験で1週間の間、105匹の猫に抗体入りのフードを食べさせたところ、被毛に含まれる活性Fel d1が平均47パーセントも減少したそうだ。

 ちなみにこのアレルギーを抑える抗体を人間が飲んでも意味はない。腸の中で分解されてしまい、標的にきちんと届かないからだ。そこで発想を転換して猫に与えることにしたのが今回の研究のすごいところだ。

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安全性も確認。猫の健康を損ねない


 この方法のもうひとつの優れた点は、抗体を与えたからといって、Fel d1の分泌が妨げられないことだ。

 じつは猫の体内でFel d1がどのような役割を担っているのか、よくわかっていない。そのため、いくらアレルギーの原因になるからといって、むやみにFel d1の分泌を邪魔してしまうのは、健康への影響が不明なために望ましくないのだ。

 もちろん今回の研究では、抗体入りフードの安全性もきちんと確かめられている。

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軽度の猫アレルギーに有効


 米国アレルギー・喘息・免疫学会のメディカルディレクターを務めるマイケルブライス氏の推測によると、この手法が有効なのは軽度の猫アレルギーに対してだそうだ。

 残念ながら、ひどいアレルギー症状の場合は、半分程度アレルゲンを削減できたところで、症状が治まるようなことはないだろうという。

 さらにFel d1の量は猫それぞれによって大きく異なるために、患者さんと猫のいわば相性も関係してくるようだ(ちなみにオスの方がメスよりもFel d1を多く持っているとのことだ)。

 散々期待させておいてあれなのだが、ネスレ・ピュリナ社が今すぐ抗体入りキャットフードを販売することはなさそうだ。

 とはいっても、研究自体は続けていくそうなので、近い将来猫アレルギー対応のキャットフードが登場する可能性は高い。

 猫好きでありながら猫アレルギーのある人は気長に待っていてほしい。

References:Reduction of active Fel d1 from cats using an antiFel d1 egg IgY antibody / Giving cats food with an antibody may help people with cat allergies / written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52277614.html
 

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