日本政府による半導体素材3品目に対する対韓国輸出規制が決定された7月1日以降、韓国社会では「反日」世論が国民的支持を得て拡散し続けている。特に、韓国人の7割が「日本製品不買運動に参加している」という世論調査結果が出るほど、「ボイコット・ジャパン」は若者の間で流行りとなっている。

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 ところが、最近、反日ムードが高じすぎ、不買運動に参加しない韓国人に対するバッシングが発生する事態にまで至っており、韓国社会の一部からは自制を訴える声も上がり始めた。

「おめでとう! あなたは売国奴です」

 ネイバーサイトの日本旅行同好会に7月28日、「日本旅行SNS」というタイトルの書き込みが掲載された。日本旅行を計画してから8年ぶりにやっと日本旅行に行ってきて、写真と感想をインスタグラムにアップしたが、非難のコメントが殺到した、という内容だった。書き込みの主は「自由民主主義国家の韓国で日本旅行に行って来たという理由で非難されるなんて理解できない」という考えを明らかにした。

 すると、同じような境遇の人々から数十個のコメントがつけられた。「31日に大阪旅行を計画中だが、初の海外旅行なんで写真もたくさん撮りたいし思い出もたくさん作りたい。でも、現在の雰囲気を考えると、SNSにそれを上げることができないだろう」「ひとまず写真を撮っておいて、後で事態が落ち着いた時にアップするほうがよさそうだ」「夫の実家に日本旅行に行ってくると言ったら、こんな時期にあえて日本に行かなければならないのかと叱られた」「日本旅行に行くことが罪ではないが、なんだか後ろめたい気分だ」「狂ったような今の雰囲気をみんなが楽しんでいるようだ。時間が経てば狂牛病騒動のように『黒歴史』として記録されるだろう。もう少しの辛抱だ」

 韓国の若者に人気の高いインスタグラムでは最近、「#日本旅行」などを見つけ出し、フォローするアカウントが流行っている。アカウントには「日本旅行に行く売国奴をフォローするアカウント」「あなたをフォローします。おめでとうございます! あなたは売国奴です」などの紹介文が書いてあり、自分がフォローするアカウントに載せられた日本旅行の書き込みや写真を持ってきて嘲弄と蔑視を浴びせる。また、日本旅行に関する写真や書き込みを掲載した人へ「売国奴」「土着倭寇」「日本旅行に行って放射能料理をたくさん食べたか」などの嘲りや非難のコメントをぶつけている。

「ユニクロを配達しません」

 このようなイジメ行動はリアルな空間でも起きり始めている。インターネット掲示板には「ユニクロの前に立って中に入る人たちをにらんでやった」「ユニクロから出てくるカップルにカメラを突きつけたらショッピングバッグを隠した」「スーパーで日本ビールを買う人に『それでも韓国人なのか!』と大きな声を浴びせて恥をかかせてやった」「スーパーで販売している日本ビールを全部買って一日じゅう炎天下に放置し、店を閉める直前に全部返品した」などの「武勇伝」が多く載せられている。インターネット上の自慢話(?)がどれほど事実かは分からないが、実際に、社会的に不買運動を強要しているような動きが起きているのは事実だ。

 民主労総傘下のマート(大手スーパー)産業労働組合7月24日、来店顧客に対し、日本製品の案内を拒否するという宣言文を発表した。すなわち、自分たちが働く売場で、もし、顧客から日本製品について問い合わせを受けても案内を拒否するという意味だ。さらに、韓国の3大スーパーチェーンである「イーマート」「ロッテマート」「ホームプラス」に対して、日本製品の販売中断を要求する文書を送り、全国各地の大手スーパーの前で消費者に不買への参加を訴える闘争を続ける計画も発表した。結局、26日、ロッテマートが日本ビールに対する新規発注の中止を発表し、これを皮切りに大手スーパーチェーン店やコンビニが日本ビールの新規発注を中断する事態が相次いでいる。

 宅配労働者らも不買運動に積極的に加わっている。やはり民主労総傘下の全国宅配連帯労働組合と全国宅配労働組合で構成された「宅配労働者基本権の獲得闘争本部」も24日、ソウルの旧日本大使館前で記者会見を開き、「安倍政権の経済報復行為を糾弾し、ユニクロ製品配送を拒否する」という立場を明らかにした。本部側はユニクロロゴが印刷された物品は配送を拒否し、配送拒否の証明写真をインターネットに載せる運動を督励し、さらには、「ユニクロを配達しません」と書かれたステッカーも車両に取り付けている。

自らの首を絞める「ボイコット・ジャパン」

 韓国第3の都市の大邱(テグ)では、あるスーパーの奇想天外な不買運動が韓国メディアの関心を集めた。このスーパーは「買うなら、どうぞ買ってみてください!」という案内文をつけ、日本製品を販売する特別コーナーを作ったが、なんと、アサヒ「プライムリッチ」500ml(発泡酒)1缶198万ウォンサントリー「ほろよい」350㎖(チューハイ)1缶99万ウォン東ハトチョコビ」(チョコレート菓子)1箱185万ウォン、JT「メビウス」(タバコ)1箱99万ウォンなどのバカげた値札が付けられている。日本製品を購入する消費者を明らかにからかうパフォーマンスなのだ。

 ほかにも日本車への給油を拒否するガソリンスタンド、日本車の整備を拒否する整備店、日本ブランドの洋服の洗濯を拒否するクリーニング店までもが登場した。不買運動は独立運動であり、これに参加しない人は非国民だというフレームが設けられ、不買運動は「売らない」「扱わない」へまで進化し広がりつつある。

 このように過去に例がないほど過激になっている日本製品の不買運動は、日本企業の売り上げに大きい影を落としている。「中央日報」(電子版)は22日、7月に入って大型スーパーやコンビニなどにおける日本ビールの販売は前年同期比で最高40%まで減少し、また、ユニクロは26%、無印良品は19%までの売り上げが減ったと報じた。「朝鮮日報」によると、日本製化粧品も不買運動の影響を受けている。大手デパートに入っているSK-2売り場の売り上げは前年同期に比べて19~23%減少、資生堂も19~21%、シュウウエムラでも9~15%落ちているという。

 日本旅行ボイコットによって日本旅行のパッケージ商品の予約やキャンセルが相次ぎ、日本の地方都市の経済から深刻な影響が出はじめているというニュースも大々的に報じられている。

 しかし、異常な盛り上がりを見せる日本製品の不買運動は、日本企業のみならず、韓国内の関連会社やそこで働く韓国人などにも少なからず影響を与えている。「朝鮮日報」は 日本路線の利益比重が50%を超えるLCC航空会社は日本旅行のボイコットの影響で株価が急落しているとし、今年第3四半期にはアーニング・ショック(業績急落)を記録すると予測した。企業分析サイト「財閥ドットコム」によると、ユニクロセブンイレブンアサヒビールなどの韓国内流通を担当するロッテグループは7月の1カ月間、2兆4千億ウォンの時価総額が蒸発しているという。

 また日本製品の不買運動が韓国製品の購買促進につながっている様子もなく、むしろ消費を断念させる消費萎縮の原因として働いているようなのだ。ある大手旅行代理店の関係者は、「特に7月後半以降、日本旅行パッケージ商品の予約が60~70%まで減ったが、東南アジア旅行や韓国国内旅行の増加率はそれに全く及ばない」「日本旅行キャンセルする代わりに、他の旅行地を選択するのではなく、旅行を諦める人たちが少なくないと分析される」と話してくれた。

 無所属の李彦柱(イ・オンジュ)国会議員は自分のフェイスブックを通じて「ユニクロは忠誠度の高い特徴がある、単に代替されるよりはむしろ国内消費市場を萎縮させ、ただでさえ深刻な韓国経済にも悪影響を与える可能性を排除できない。結局、企業は売上減少分だけの費用を減らさなければならず、雇用の減少などが起こりうる」と懸念を示した。

 韓国銀行は今年の韓国の経済成長率を2.2%と展望した。第1四半期のマイナス0.4%、第2四半期の1.1%の成長率を勘案すれば、残りの第3~4四半期で1.5%以上の成長率を見せなければならない。しかし、この第2四半期に達成した1.1%の成長率は韓国政府が年間予算の65%を執行することによる政府主導の成長で、民間部分ではむしろマイナス0.2%の成長率を記録した。上半期に比べて執行予算が2分の1へ減っていく中、今のように消費心理の萎縮が続けば、2.2%の年間成長率には到底手が届かないだろう。韓国人の強圧的なボイコット・ジャパン運動がむしろ韓国経済の首を締めることになるかもしれない。

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