落としどころが見えない。プロ野球界の大物OB・張本勲氏の問題発言についてだ。先月28日放送のTBS系情報番組「サンデーモーニング」に出演。大船渡高校(岩手)の「令和の怪物」こと163キロ右腕・佐々木朗希投手が夏の甲子園出場をかけた県大会決勝で登板を回避して花巻東に敗れたことに、番組内の「週刊御意見番」のコーナーで次のような持論を展開した。

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「最近のスポーツ界でね、私はこれが一番残念だったと思いますね。32歳の監督(大船渡・国保陽平監督)でね、若いから一番苦労したと思いますがね、絶対、投げさすべきなんですよ。前の日にね、129(球)投げてますからね。大体、(準決勝までの)予選で4回しか投げてないんですよ。合計で430、450(球)くらいしか投げてないのよ。昨年、吉田輝星金足農)が800(球)くらい投げているんですよ、1人で」

 その後も張本氏の舌鋒は止まらず「監督と佐々木君のチームじゃないんだから」「ケガが怖かったら、スポーツは辞めたほうがいい。将来を考えたら投げさせた方がいいんですよ」「楽させちゃダメですよ、スポーツ選手は」などと声を張り上げた。

メチャクチャな「御意見」ばかりの張本氏を起用し続けるTBSにも問題が

 これら張本発言には批判が殺到。ネット上でもバッシングが向けられ、今も沈静化する気配は見られない。拍車をかけた背景にはシカゴ・カブスダルビッシュ有投手が「シェンロンが一つ願いこと叶えてあげるって言ってきたら迷いなくこのコーナーを消してくださいと言う」とツイートしたことに加え、野球界以外からサッカー日本代表ガラタサライ・DF長友佑都に「(張本氏の発言を報じた)記事が真実だとしたら非常に残念。苦境に立たせて大怪我をしたらマイナスでしかない。野球で生きていく選手なら尚更。監督は批判覚悟で選手の将来を守った英断。何度も言うが日程を選手ファーストで考えてほしい」とつぶやかれてしまった事実もある。

 常識的に考えて、さすがにこのままでは済まされないだろう。これだけ張本氏の指摘に否定的な意見が飛び交い、世の中をヒートアップさせているのだ。張本氏本人はもう一度公の場において、自らの発言で大きな騒動を巻き起こしてしまっている点について説明を果たす義務がある。

 ところが、その気配は未だ一向に見られない。先月28日の放送から一夜明けた翌29日、張本氏は東京ドームで行われた「サントリードリームマッチ 2019」に参加。ダルビッシュからツイッターで怒りをぶちまけられた直後というタイミングもあって試合終了後に大勢の記者に囲まれたが、結局はここで前日の問題発言に関して何も発さないまま球場を後にしている。「あの威勢のよさは一体どこへ行ったのか」と取り囲んだメディア取材陣を心底がっかりさせた。

 ちなみに今までも張本氏は同番組でかなり的外れの指摘を繰り返し、その度にネット上でぶっ叩かれている。野球だけではなく、ロクに知らないはずなのに他のジャンルスポーツに関するコメントまで番組内では求められ、昭和世代特有の根性論バックボーンにしながら明らかに乱暴な意見を押し通してしまう。それで毎週のようにネット上は〝炎上〟してしまうのだ。正直に言えば、かなりメチャクチャな「御意見」を言うことが分かっている張本氏を番組に起用し続けているTBSの姿勢も問題視されなければなるまい。

カズへの「引退勧告」を釈明した過去も

 しかも張本氏は、これまで自分の発言、もとい失言を撤回した例がほとんどない。ただし、数少ない例外もあった。2015年4月12日放送の同番組内でJ2の横浜FCプレーする「カズ」ことFWの三浦和良選手がジュビロ磐田戦でゴールを決め当時、自身の持っていたJリーグ最年長得点記録を更新したというニュースを受け「J2は野球でいうと二軍だから話題性がない。若い選手に席を譲ってやらないと。しがみつく必要はないでしょ、これほどの選手なんだから。指導者に」「カズファンには悪いけども、もうお辞めなさい」などと引退勧告を口にした一件だ。

 当然のように日本中から猛烈な批判が向けられる中、当のカズから「この発言は光栄。激励と思って頑張る」と〝大人の対応〟で逆に感謝されてしまったこともあり、張本氏はいよいよ無視出来なくなってしまう。そして翌週の放送で自身のカズに対する発言を再び取り上げ「(進退は)本人が決めることだから。やりますと言うのなら私は不満だけど、最後まで応援します」「まだ会ったことないけど、どこかで会ったら食事をごちそうするから」などと苦しい弁明を連発させながら、赤面ものの〝手のひら返し〟で乗り切らざるを得なくなったのである。

 球界関係者たちも、約4年前に起こった張本氏のカズに対する〝レアケース〟を知っているからなのかもしれない。今回の「佐々木問題」に関する失言にも「次回8月4日に放送される番組の中で張本氏はあらためて『なぜ、あのようなコメントを口にしたのか』というテーマで世間に向けてキッチリと分かりやすく説明しなければいけない」との見解が今、プロだけでなく高校野球を中心としたアマ球界にも広がりつつある。

「騒動に終止符を打つためには次回放送での反省の弁が必要」

 そのうちの1人で、張本氏とも面識のあるプロ野球有力OBは厳しい表情を浮かべ、このように言う。

「今度ばかりは、いくら大物OBの張本さんでも逃げ切りは許されないでしょう。何せこれだけ猛烈なバッシングを浴びて日本中を大きく騒がせてしまったのですから当事者として、せめて世間の人ともう一度真摯に向き合う必要がある。もし、張本さんがそれをやらなかったら日本球界全体のイメージダウンにもつながりかねない。

 自分の要らぬ失言によって佐々木君本人と国保監督の精神的な動揺を誘っているのはもちろん、大船渡ナイン、その相手校までも混乱させるハメになってしまいましたからね。プロの名だたるOBがアマの金の卵とその周辺を喧騒によって潰しかねない異常な事態を作り上げてしまったわけです。これはもう、大問題ですよ。

 現状、TBSの制作スタッフの中からも局内で『次回放送分で本人に何らかの説明をさせなければいけないのではないか』との提言が多数上がっていることも確かに耳にしています。ただTBS側の制作スタッフたちも変に大物OBだからと気遣いすることなく、言わせなければいけないところは言わせるべきでしょう。それが放送局としての務めだと思います。が、当の張本さんは番組内で〝釈明〟をすることに難色を示しているとか・・・。

 とにかく張本さんにはこの騒動に終止符を打つためにも『このたびは私の発言で世間を大きく騒がせてしまいました。佐々木君、そして国保監督、大船渡の野球部員、関係者の方々に深くお詫びを申し上げたいです』という趣旨の反省の弁ぐらいは次回の番組内で、きちんと頭を下げながら言ってもらいたいです。そうしないと張本さんの球界内の信用度だけでなく社会的なそれもガタ落ちしてしまうと考えられます」

 果たして張本氏はTBSでの次回放送分で再び「佐々木問題」に触れ直すのか。あるいは結局、これまでのように「柳に風」とばかりにスルーしてしまうのか。日本中の多くの人たちが注視している。

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大船渡の佐々木朗希投手(写真:BFP/アフロ)