参院選が終わったあと新聞では何が報じられたか。面白かった記事を振り返ってみる。

ほんとに与党は「勝った」のか?

 まず夕刊フジで連載中の「鈴木棟一の風雲永田町」(7月26日付)。

 選挙専門家の分析を載せているのだが、これを読むと既成政党は今回どこも勝っていないのでは? と思えた。

 たとえば与党。自民党は「比例票で、前回からマイナス240万票。下げ幅は投票率の下落率より大きい」。公明党は「比例票で前回からマイナス104万票」。

 ほんとに与党は「勝った」のか。でも野党側も読んでみると似たような傾向なのだ。

 総括として、

・組織政党の公明党共産党の比例票が激減し、連合の組織内候補票が低下している。
れいわ新選組は、社民党(約105万票)より票を取った。NHKから国民を守る党も約98万票を集めた。

 つまり、《新しい政治を予感させる地殻変動が起きている》と結ぶ。

 産経新聞も「公明・共産 衆院選に危機感 参院選で比例票激減」(7月29日)。ここでも「両党とも支持者の高齢化など構造的な問題が影響している」。

 日刊スポーツは逆に「ネットで信頼築いた『ふたりの太郎』」ときた(「政界地獄耳7月25日)。

「ふたりの太郎」とは山本太郎(れいわ)と山田太郎(自民)のことである。山田太郎は「児童ポルノ禁止法の扱いやアニメマンガゲーム表現の自由について政府に戦いを挑み議論してきた」議員だ。

ネットに頼らざるを得なかった」れいわの山本太郎

《2人の太郎の共通点はネットで有権者と信頼関係を作っていったことだ。テレビの取材よりも効果があることがわかる。選挙前から絶えずネットで有権者に語り掛け、今回の得票となった。これを簡単にポピュリズムで片づけることはできない。》

 記事の結びは「参院全国区や東京選挙区などではもう総合デパートのような政党や組織・団体は不要だと示した」である。やはりここでも旧来からの組織・団体に頼る選挙は機能しなくなってきたのでは? という見立て。

 ただ、れいわの山本太郎に関してはネットを活用したというより「ネットに頼らざるを得なかった」とも言える。

 政党要件を満たしていなかった今回、れいわだけを取り上げるのは難しい、というテレビの論理もわかる。しかし一方で思うのだ。私が子どもの頃から好きだったテレビは「いま巷で流行るもの」「人が集まっているもの」に関して抜群の野次馬精神とフットワークがあった。情報の最先端だった。

 今回のれいわ新選組に関しては結党数カ月で寄付金4億を集め、街頭では人を集めるという事実があった。このザワザワ感を(選挙前に)テレビで紹介するのはむしろ「テレビらしい」と思ったのだが……。

5年後も「公平中立、公正の確保」要請は効いていた

 そう考えると思い起こしたいのは5年前のこれ。

選挙報道『公正に』 自民、テレビ各社に要望文書」(朝日デジタル版・2014年11月28日

自民党が在京のテレビキー局各社に対し、衆院選の報道にあたって、「公平中立、公正の確保」を求める文書を送っていたことがわかった。街頭インタビューなどでも一方的な意見に偏ることのないよう求めるなど、4項目の具体例を挙げている。》

 記事には「報道の萎縮を懸念する声も上がっている」とあるが、5年後の今もこの脅し、いや、要請が見事に効いていることがわかる。

 ここでジャーナリズム云々みたいなことは言わない。あえて野次馬精神と呼ぶ。テレビ本来のそれを発揮するならもっと自民党に怒られてもいいのではないか。やっぱりめんどくさい?

前田日明が語った「山本太郎氏は一つの波を起こすかも」

 新聞に話を戻す。

山本太郎れいわ新選組」に関し、選挙前に読んだ記事でいろいろリンクして面白かったのはこちら。

「【参院選の焦点】前田日明消費税廃止&奨学金チャラ公約『山本太郎氏は一つの波を起こすかも』」(東スポWeb7月4日

 東スポは公示早々に元プロレスラー前田日明参院選について聞いていた。

 前田は「大学卒業したら正社員になれずに奨学金の返済に追われる。生活はどんどん厳しくなる」と現状を憂いていたら山本太郎の主張を知り「どうやって財源を出すかも俺と全く同じことを言っていて、びっくりしたよ」という。

《議員になったころは原発ばかりで、これで6年はつらいだろうなと見ていたけど、本当によく勉強していて、見直した。これから潰されてしまうかもしれないが、一つの波を起こすかもしれないね。》(同上)

 そういえば今回の山本太郎前田日明の『リングス』設立時を思い出す。“ひとりぼっちの旗揚げ”が似ている。

 前田は発想の転換で海外の格闘技者にネットワークを求めた。これが広がりを見せたのだが、山本太郎も重い障害のある人を候補者にした。業界に無かった発想が似ている。そんなところも前田に響いたのだろうか。

丸山穂高議員まで入党を表明した「N国」

 最後は今回の勝ち組NHKから国民を守る党」。

NHKをぶっ壊す」というワンイシューに魅力を感じた有権者も多かった。しかしこの記事を紹介したい。

「『N国』国政進出、特異な戦略」(朝日・7月25日

 その特異さとして、

・地方選は「資金稼ぎ」と公言。地方議員が増えればその給与から資金を借りることができる。
・代表はくら替え次々。
・信条、経歴細かく問わず擁立。
・これまでに当選した地方議員の中には、不適切な言動が確認できるケースが少なくない。

 今週は丸山穂高議員も入党を表明。

 翌日のスポーツ紙はド派手に書いたが、一般紙は小さな記事・ベタ記事で伝えた。N国とは何か? がここに象徴されていると思う。それは、

スキャンリズム、おもしろ優先」(スポーツ紙)と「見て見ぬふり、過小評価」(一般紙)である。

 スポーツ紙はそれが特徴だから仕方ないとしても問題は一般紙だ。もう少しその特異さについて触れたほうがいい。解説したほうがいい。

 あえて言うが、一般紙のそういう「黙殺」がここまでN国を躍進させたのではないか。

 見て見ぬふりや冷笑、傍観はもういらない。

 以上、今週の読み比べでした。

(プチ鹿島)

安倍晋三首相 ©AFLO