暑気払いや夏バテ防止に効果的な飲み物として、俳句の夏の季語にもなっている「甘酒」。その甘酒には、米こうじから作るタイプと酒かすから作るタイプがあります。甘酒の栄養、効果的な取り方をご紹介しましょう。

江戸時代夏の風物詩

 甘酒は古来、お正月の神社の境内などで振る舞われ、主に冬に飲まれていました。しかし、江戸時代に事情が変わったようです。夏場にウナギが売れるよう、土用の丑(うし)の日にウナギを食べる習慣を広めたという話がありますが、甘酒も、栄養満点で滋養強壮に役立つと人々が考え、『夏場に飲むもの』として広めたのではないかと考えられています。日常的に夏バテ防止の飲み物として飲まれ、甘酒を売り歩く姿が夏の風物詩として俳句の夏の季語にもなりました。

 その後、一時は冬場の飲み物に戻ったようですが、現在では「飲む点滴」「飲む化粧品」ともいわれ、美肌、疲労回復に良いとされて、健康的なイメージから再び夏にもよく飲まれるようになりました。

甘酒には種類がある?

 甘酒は、原料の米やもち米に米こうじを加えて発酵させたタイプと、酒かすを使ったタイプがあります。酒かすは、日本酒を製造する過程でできるため、甘酒にもアルコールが少量含まれます。また、甘みがないため、砂糖や塩を加えて作ります。

 米こうじは、食品を発酵させるため米にカビを生えさせたもので、甘酒のほか、しょうゆ、みそ、清酒などにも使われます。甘みがあるため、砂糖や塩の調味料を加えずに甘酒を作ることができます。そのため、酒かすを使うタイプよりも低カロリーになります。

 米こうじで作る甘酒は、炊飯器や保温ボトルを使用して簡単に自宅でできますが、55~60度の状態を7~10時間程度保つことが必要です。温度が高すぎても低すぎても、甘みがうまく出ません。

栄養豊富、腸内環境も整う

 甘酒の原料であるこうじには、「グルコシルセラミド」という物質が含まれています。グルコシルセラミドは、こんにゃくなどにも含まれ、小腸で吸収されますが、こうじに含まれるものは化学構造が異なり、大腸まで届いて善玉菌を増やすことが分かっています。和食中心の食事であれば、グルコシルセラミドを、みそ、漬物、食酢などからある程度摂取できているため、甘酒を1日1杯でも飲むと便秘改善に役立つ可能性があります。

 また、甘酒は腸内の乳酸菌のエサとなるオリゴ糖を含みます。酒かすタイプの甘酒は、腸で消化されにくく、便を軟らかくする働きがあるタンパク質も含んでいます。これらの成分により、腸内環境を整える作用が期待できます。

 さらに、ビタミンB群、アミノ酸ブドウ糖、オリゴ糖、抗酸化作用がある成分なども含まれているといわれます。米こうじと酒かすの両方を使用した甘酒を継続して飲むと、目の下のくまの改善や皮脂の抑制効果もあり、ニキビの減少、美肌効果、風邪予防、睡眠の質の改善といった効果も期待されます。

効果的な取り方は?

 アルコールを含まない米こうじタイプの甘酒は、コップ1杯飲むことで栄養を補うことができ、朝食にもお勧めです。冷房の使用が多い夏の時期、体の冷えが気になったら、ショウガをすりおろして小さじ1杯ほど足して飲むと体が温まります。ショウガの食感が気になる場合は絞り汁でもよいでしょう。

 きな粉、豆乳などを加えると、甘酒だけでは不足してしまうタンパク質を補えます。甘さも和らぎ、飲みやすくなるので、甘いものが苦手な人にもお勧めです。料理の調味料として、砂糖の代わりに使うこともできます。お肉や魚を甘酒に漬け込み、焼くと、やわらかくうまみも感じられます。塩も加えて漬け込むと、塩こうじのように味も整い、おいしく食べられてお勧めです。

 甘酒は、手軽に栄養が取れる飲み物です。毎日コップ1杯継続して飲むことで腸内環境を整えることにつながります。便通を整え、免疫力を上げ、夏バテしない体づくりを目指しましょう。

管理栄養士、NS Labo代表理事 岡田明子

夏バテ防止に効果的な甘酒