「いろいろな場面でいつ誰にどこで起こるか分からない」とAED講習の重要性を説く

 2011年8月4日、元日本代表DF松田直樹氏(当時・松本山雅FC)が練習中に心筋梗塞で倒れ、帰らぬ人となった。松田氏の姉である松田真紀さんは、命日である4日に行われたメモリアルフェスティバルに出席。プログラムにも含まれたAED自動体外式除細動器)講習を含め、サッカーを安全に楽しめる環境作りへの思いを語った。

 4日に都内で行われた「NAOKI MATSUDAメモリアルフェスティバル」には松田氏の元チームメートである清水範久氏、河合竜二氏、坂田大輔氏、阿部祐大朗氏、天野貴史氏、斎藤陽介氏が参加し、サッカースクールなどを実施。AED講習もプログラムに組み込まれ、多くの親子が受講した。

 AED講習を実施する際、真紀さんはより多くの人に受講してもらうため、フェスティバル参加者に対して熱心に声をかけている。弟の身に起きた悲劇を繰り返さないため、そしてサッカーを取り巻く環境をさらに良くしていくため、受講を呼びかけた。

「知らない人たちが一つのスポーツを通して仲間になったり、同じ時を過ごしたり……。それが直樹の愛したサッカーでした。さらにサッカーを楽しむためには、安全な環境や安心安全なスタジアム作りも大事な要素の一つです。AEDを使えるということも、安心安全なフェアプレーの一つだと私は思っています」

 もちろん、その対象はサッカーの周辺だけには限らない。「いろいろな場面で、いつ誰にどこで起こるか分からない」という思いを持ち、常日頃から一人ひとりが持つ意識の重要性を説く。

「日頃から救急車が来たらどいてあげる、お子さんならお年寄りの方に席を譲るとか、みんなのそういう思いがつながれば、いざという時にみんなが『助けよう』という気持ちになります。AED講習会に随時参加することによって、『どうしよう』という時に動く勇気になるのかなと思います」

「自分にできることを、完璧ではなくてもいいんです」

 もし、目の前で人が突然倒れたら――。パニックに陥り、動けなくなるかもしれないが、AED講習の受講経験があるだけでも、一歩を踏み出す勇気になるかもしれない。「自分にできることを、完璧ではなくてもいいんです」と真紀さんは言う。人の多い場所であれば、人を集めれば処置可能な人が名乗り出る可能性もあり、事態を少しでも良い方向に持っていくことにつながるからだ。

「まずは人をたくさん呼んでいただければ、『俺が、私ができるよ』となります。女性が(AED装着の際に)裸になってしまうという問題も、みんなでガードしてあげることもできますし、みんなが集まればいろいろなことができます。人が大勢いるなら人を集めることも大切。(AEDの)アプリもありますし、今は119番に電話すると(方法を)教えてくれますから、活用してもらえたらなと思います」

 そのための第一歩として、真紀さんはAED講習の大切さを強く訴えた。日本サッカー界を悲しみで包んだ松田氏の訃報から8年。サッカーを入口として、1人でも多くの命が救われるようになることを願いたい。(Football ZONE web編集部・片村光博 / Mitsuhiro Katamura

松田氏のメモリアルフェスティバルには多くの人が駆け付けた【写真:Football ZONE web】