フィクションドラマ『Dark Money(原題)』は、映画界のスキャンダルと口止め料をめぐる物語。13歳の子役少年が映画の都で被害に遭うが、家族はダークな金を前に判断を鈍らせる。一度は魂を売りかけた両親だが...。英BBC Oneが7月に全4話を放送した話題作だ。

希望を胸にアメリカへ

ロンドンに暮らす子役のアイザックマックスフィンチャム)に、海を越えたハリウッドデビューの話が舞い込む。SF大作の主役に大抜擢とあって、未来のスターは意気揚々とアメリカへ。しかし13歳の少年を待っていたのは、悪夢のような出来事だった。イギリスに戻り両親から手厚い歓迎を受けても、アイザックの表情は晴れない。アメリカ滞在中、彼は大物監督のヨタム(ジョン・シュワブ)から性的虐待を受けていたのだ。

ほどなくして父・マニー(バボー・シーセイ)と母・サム(ジル・ハーフペニー)も事態を把握。怒りに燃える二人だが、相手は海外在住の業界人とあって、訴訟しようにも容易ではない。監督から弁護士を通じて示談を持ちかけられると、台所事情の厳しい一家はあっさりと金を受け取ってしまう。

当然ながら、アイザック少年の心の傷は癒えないまま。事実上の口封じに応じたことを悔いる両親は、監督側の弁護士から逆に訴訟を起こされるリスクを冒し、今度こそ正義をなそうと誓う。しかし、それぞれ違う信念に駆られる父・マニーと母・サムは、手強い弁護士を前に一枚岩とはいかず...。

『Dark Money』予告編

二つの衝撃を究極のリアリティで

ハリウッドの映画監督が少年に手を出すという、衝撃的な筋書きの本シリーズ。あくまでフィクションだが、強く感情を揺さぶるものがある。議論を呼ぶような重要な問題を二つも詰め込んだ作品、と英Telegraphは表現。子供に対する性的な行為だけでも大問題だが、秘密保持契約で固く閉ざされたハリウッドの闇というテーマをさらに絡めている。キャスティングへの影響力をちらつかせながら監督が行為を迫るシーンには、観ていていたたまれなくなる視聴者も多いかもしれない。

そんな少年の唯一の味方になり得る両親はといえば、これがまったく頼りにならない。日本円にして約3億円の口止め料を受け取るや否や、嬉々としてプール付きのマイホームを購入し、一家で引っ越しを始める始末。観ていて苛立ちを禁じ得ないが、ここにこそ本作の創意工夫がある、と 英Independentは見ている。金を突き返して勝ち目のない訴訟に出るのがドラマの定石だが、それではいかにも退屈なストーリーに陥ってしまう。現実を受け入れ、泣く泣く口止め金を受け取る展開だからこそリアリティがあると同メディアは感じたようだ。

英国アカデミー賞脚本家が贈る、親子の物語

脚本はリーバイ・デイビット・アダイ。代表作『Damilola, Our Loved Boy(原題)』は、2017年の英国アカデミー賞を作品賞含め2部門受賞している。こちらは10歳の少年が犠牲となった、ロンドンでの悪名高き実在の刺殺事件を取り上げたTVドラマ。やり切れない感情に包まれる同作でも、本作で父親を演じるバボーが正義感の強い父親を熱演していた。アダイについてTelegraphは、父と子の複雑な関係性の表現に長けている、とその実力を評価している。

一方、Independentは脚本の粗さが気になった様子。作中では映画監督がアメリカ在住であることを理由に訴訟を諦めるが、たしかイギリスの法律は英国外での行為も処罰対象にしているはず、と同メディアは指摘。また、性的被害の様子がタイミングよくアイザック自身のスマホで録画されており証拠として働くが、このくだりにも多少のご都合主義を感じる。ただし、細かい話を抜きにすれば、ストーリー全般にフレッシュな試みにあふれた意欲作。緊迫したシーンも随所にあり、視聴者の興味を引き続けるドラマだと同メディアは述べている。

被害者少年と一家の揺れ動く心を描写した『Dark Money』は、英BBC Oneで7月に放送された。(海外ドラマNAVI

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『Dark Money』© BBC