日本漫画家協会は5日、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」の企画展示「表現の不自由展・その後」が中止になったこと受け声明を発表した。


声明では、表現の自由は「『知る権利』を照らす礎」だとして、「痛みに顔をしかめ、鼻をつまみながらでも手を離すわけにはいきません」と同協会の見解を示した。京都アニメーションの放火事件を連想させる脅迫が展示中止の直接の原因とされたことについては、「暴力行為の予告により、展示物が撤去されたことを残念」とコメント。また、「展示物に関して多くの意見や感想が飛び交う事こそ、表現の自由がうたわれている我が国の多様性を表すものです」と訴え、「政治的な圧力ともとれるいくつかの発言も心から憂慮します」と、菅義偉官房長官名古屋市河村たかし市長らのものとみられる発言を批判した。


表現の不自由展・その後」の中止をめぐっては、日本ペンクラブや日本美術会も声明を発表。日本ペンクラブは、「展示は続けられるべきである」として、「同感であれ、反発であれ、創作と鑑賞のあいだに意思を疎通し合う空間がなければ、芸術の意義は失われ、社会の推進力たる自由の気風も萎縮させてしまう」と主張。日本美術会は、「展示中止に抗議し、『表現の自由」を守り抜くことを求める』としている。


「あいちトリエンナーレ」の企画の1つである「表現の不自由展・その後」は、「慰安婦」問題、天皇と戦争、植民地支配憲法9条、政権批判など、展示不許可になった作品を集めたもの。旧日本軍慰安婦を表現した韓国の彫刻家による慰安婦像「平和の少女像」や、昭和天皇を描いたとみられる版画を燃やした「焼かれるべき絵:焼いたもの」などを展示したことで物議を醸し中止となった。


<日本漫画家協会の声明全文>

「表現の自由」とは、本当に天邪鬼な代物です。
大切に掲げ、しっかりとつなぎ止めようとする私たちの手を、時に鋭利な刃物のように、
あるいは醜く腐臭を放つ汚物のように振る舞い、胆力を試してきます。
しかし、それはもう一方で、私たちの「知る権利」を照らす礎なのですから、痛みに
顔をしかめ、
鼻をつまみながらでも手を離すわけにはいきません。

今回のあいちトリエンナーレ表現の不自由展・その後」において
暴力行為の予告により、展示物が撤去されたことを残念に思います。
展示物に関して多くの意見や感想が飛び交う事こそ、
表現の自由がうたわれている我が国の多様性を表すものです。
政治的な圧力ともとれるいくつかの発言も心から憂慮します。

意見や感想、自由な論争以前に、暴力に繋がる威嚇により事態が動いた事が、
前例とならないように切に願います。

2019年8月5日
公益社団法人日本漫画家協会 事務局

画像は「表現の不自由展・その後」ホームページスクリーンショット