家庭教師や個別指導塾を展開するトライグループは8月6日、AI開発を手掛けるギリア(東京都台東区)と共同で、生徒の学力を1科目につき10分程度で測定できる診断アプリを開発したと発表した。短時間で生徒の学習状況を把握でき、指導者は生徒それぞれに合わせたオーダーメイドの学習プランを素早く作成できるという。2020年4月のサービス開始に向けて、まずは中高生を対象に実証実験を始める。

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 1科目につき約20問を診断アプリが提示。生徒は「A」「B」「わからない」の選択肢から回答していく。問題を解き終えるとテストで問われなかった単元も含め、科目全体の成績をAIが推定、表示する。

 トライグループが持つ中学生テスト結果を2万2000件集め、ギリアがAIに学習させた。従来の学力診断テストにかかっていた時間の約10分の1で全体の成績を把握でき、精度は80~90%に上るという。

 対応科目は中学の英語、数学、理科、地理、歴史、公民。今後は高校生テスト結果も収集し、英語や数学などを中心に15科目に対応する予定だ。

 実証実験は8月から順次始める。同社が運営する「家庭教師のトライ」や個別指導塾「個別教室のトライ」で勉強している生徒に加え、入会を考えている生徒など約7万人にサービスを使ってもらい、測定精度を高める。

●早く正確に「勉強の健康診断」を

 生徒の指導では一人一人に合った教育カリキュラムを組むことが望ましいため、教科や科目だけでなく、単元ごとに得意不得意を把握する必要がある。診断テストである程度は測れるが、全ての単元について問題を解かせると時間がかかる。

 例えば、中学歴史なら全単元の問題を解かせるのに200問が必要で、回答には2時間かかる。生徒だけでなく、結果を分析する講師の負荷も高い。

 トライグループの物部晃之常務取締役は、これらを“勉強の健康診断”と例えながら、「医療の場面では健康診断をしてから治療する。勉強でも最初に弱点が見えれば重点的に対策でき、学習効果が上げられる」と説明する。

●塾業界の現状は

 塾業界の現状も診断アプリ開発の背景の一つだ。現在、塾業界では少子化や2020年大学入試改革に伴う個別指導の需要から人手不足が深刻化している。

 塾には大きく分けて進学塾と補習塾がある。進学塾では、高校や大学へ進学するための受験対策を行い、補習塾では学校の授業について行けない生徒をサポートする。

 受験競争が過激化し、予備校や進学塾が全盛期を迎えていた80年代以前には、講師1人が多数の生徒に授業をする集団指導の進学塾が全体の90%を占めていたが、80年代以降、詰め込み教育への反省から、ゆとり教育の流れが生まれた。2000年代になると、補習を主に行う個別指導に需要が集まり、現在では個別指導塾が45%を占めている。20年にセンター試験が廃止され、新しく「大学入学共通テスト」が始まる影響もあり、個別指導への需要は増加しているという。

 これを受け、主に学力が高い層をターゲットとしている進学塾も個別指導サービスを展開するようになったが、補習を主にやっていた個別指導塾も受験勉強に対応するようになり、受験対応の個別指導という分野で塾同士の競争が激化した。

 一人で30人以上の生徒に授業をしていた進学塾が個別指導を行うには、講師を大きく増やす必要がある。個別指導塾も質の高い講師を多く抱えて競争に挑む必要が出てきた。

 人材が不足する中、教育現場の効率化が課題となり、AIを活用した学習支援ツールも登場してきた。現在、受験に対応したAIツールは、進学校を中心に採用されているが、学習者の学力が高めに想定されているものが多く、全ての学力層に向けたサービスはないという。対応科目も、数学や理科などの理系科目が多く、汎用(はんよう)的に使うのは難しかった。

 トライグループは教育現場の効率化という観点から、開発した診断アプリやAIの技術を、学校や教育委員会に提供することも検討している。