4月に飛び込んできたマツモトキヨシHD」千葉県松戸市、以下「マツキヨ」)とココカラファイン神奈川県横浜市、本店は大阪市、以下「ココカラ」)が業務資本提携に向けた協議開始のニュース

 そして再編の歯車は動き始める。6月にはスギ薬局を展開する「スギHD」愛知県大府市、以下「スギ薬局」)が「ココカラファイン」に対して経営統合に向けたラブコールを送ると、マツキヨココカラも経営統合に向けた協議を進めることを発表。現時点では3社合わせての経営統合は無いとしているものの、それぞれの本当の思惑は分からない。

ココカラファインの旗艦店(大阪市)。
2018年ZARAの大阪旗艦店跡に出店した最新型店舗だ

◆業界は「百貨店超え」7兆円-僅か4年で「5位」転落のマツキヨ
 さて「ドラッグストア業界の国内首位」といえば「マツキヨ」だと思っている人も多いであろうが、それは昔の話。マツキヨ2015年を最後に22年続いた業界首位を明け渡しており、近年は毎年のように業界上位の順位が移り変わるという「激戦状態」が続いている。

 2018年の大手(業界上位)7社決算(注:以下、決算月は各社異なる。2018年の数値は、一部企業は見込数値)では首位はイオングループの「ツルハHD」(札幌市、以下「ツルハ」)で、それに次ぐのが同じく同じくイオングループウエルシアHD」(千代田区、以下「ウエルシア」)。そして3位は西日本の雄・コスモス薬品(福岡市、以下「コスモス」)、4位はディスカウントスーパー事業で成長する「サンドラッグ」(東京都府中市)となっており、マツキヨはそれに次ぐ5位となった。

ドラッグストア業界上位7社の2018年度決算(連結)。
各社決算を基に作成。コスモス薬品は見通し数値。
ツルハHDが業界首位となった

 経産省によりドラッグストア業界全体の売上統計が公表されたのは2014年のことであるが、統計開始以降売上高は急激に伸び続けており、とくに2018年度は業界上位を占める大手7社がそろって過去最高の売上高を記録。市場規模は僅か4年間で約5兆円から7兆円弱となり、2019年度には百貨店業界全体の売上高を抜くことが確実視されている。

百貨店スーパーコンビニドラッグストアの売上高推移。経済産業省商業動態統計を基に作成。
ドラッグストア業界の伸びは目覚ましい

 現在、業界を牽引する2社はイオンドラッグストアグループである「ハピコムメンバー企業」に属しており、ともにM&Aによる規模拡大を続けている。

 一方で、かつて業界トップであったマツキヨは近年毎年のように順位を落とす結果となっているが、それでも売上は上昇傾向で「絶不調」というほどではなく、大手同士の統合による規模拡大を急ぐ必要はあるのかと疑問を抱く。

 しかし、ドラッグストアの業界上位を見ていくと各社それぞれの特徴があり、そしてそれぞれの「成長余地」にも差が見えてくる。

 今回は、おもにドラッグストアの「立地」に注目して業界上位各社の特徴を探る。

◆「イオン系」の「ツルハ」「ウエルシア」
 以下にドラッグストア業界全体と業界上位7社の売り上げ推移を示す。

 業界上位7社の近年の売上推移を見ると、特に伸びが目覚ましいのはツルハ、ウエルシア、コスモスサンドラッグの上位4社だ。

ドラッグストア業界上位7社の売上高推移(連結)。各社決算を基に作成。
いずれの企業も伸びているものの、その伸び率には大きな差がある

 そのうちイオングループである「ツルハ」「ウエルシア」の伸びは先述したとおりM&Aによるところが大きい。両社はイオングループということもあり、M&Aの対象地域が日本全国に亘っていることも特徴だ。

 現:ウエルシアHDの基となったグローウェルHDは、マツキヨグループの中核企業の1つであった「高田薬局」(静岡市)がグループを離脱してイオングループドラッグストア「ウエルシア関東」(東京都)と経営統合したことにより設立されたもの。同社のマツキヨとの「対決」はここから始まったともいえる。

 ウエルシアは全国各地の中小ドラッグストアの買収を積極的に進めており、近年では2016年に「クスリのマルエ」(前橋市)を傘下に収めるなどしてマツキヨから業界首位の座を奪ったのち、2017年には「丸大サクラヰ薬局」(青森市)を、2018年には「一本堂」(荒川区)を、2019年には中堅ホームセンタージュンテンドー」(広島県府中町)のドラッグストア部門を買収。また、同じイオングループのツルハは2017年に「杏林堂」(浜松市)を、2018年には「ビー・アンド・ディー」(愛知県春日井市)を買収するなど、競い合うようにして経営規模の拡大を図っており、2016年以降はこの両社が業界首位争いを繰り広げている。

 なお、ウエルシアはイオンが発行済み株式のうち約51パーセントを保有するのに対し、ツルハのイオン保有株は約13パーセント。ツルハはイオングループとはいえども比較的独立性が高く、本社も1929年の創業以来一貫して北海道内に置かれている。また、ツルハについては外国人観光客が多い立地にも数多く出店しており、免税販売も売上増に寄与しているであろう。

業界トップに踊り出たツルハドラッグ
都心型店舗は地域住民と外国人観光客の両方をターゲットとする店舗も多く、店頭には各国の言葉が

◆勢力を増す「郊外中心型」
 さて、ドラッグストアの店舗といえば、駅前や商店街に立地し大型駐車場を持たない「都心型」と、大きな駐車場を持ち売場面積も大きい「郊外型」の大きく2種類に分けることができる。業界上位7社のうち、イオン系の2社は合併各社やイオングループのノウハウを生かすかたちで「都心」・「郊外」のどちらも主戦場としており、とくに郊外ではグループメリットを生かしてイオン系列のショッピングセンター内への出店も多くみられる。

イオン系ショッピングセンターのテナントとして出店することも多いウエルシア。イオングループの拡大とともに成長を遂げた。(兵庫県川西市、イオンタウン川西・ダイエーイオンフードスタイル川西店)

 そして、業界3位・4位のコスモスサンドラッグ」の伸びは、いずれも西日本における「郊外型」の大型店の積極展開によるものだ。

サンドラッグは都心型が多いのでは?」という声が上がってきそうだが、同社は2009佐賀県家電量販店を起源に持つディスカウントストア「ダイレックス」を傘下に収めて以降に大躍進。現在はダイレックスの店舗を発展させるかたちで、西日本の郊外を中心にダイレックスの屋号で「総合スーパー(生鮮あり)+ディスカウントストア+ドラッグストア」という新業態の大型店を大量に出店しており、最近はダイレックスが「ショッピングセンターの核テナント」となっていることもある。現在、サンドラッグの全売上のうち、このダイレックス事業が4割近くを占める。

サンドラッグが近年主力業態としている「ダイレックス」の新業態店舗(大分県杵築市、総合スーパー「寿屋杵築店」跡)。
看板には「薬」の文字が大きくあるものの、もはや「ドラッグストア」と呼んでいい規模か迷うところ

 また、同じく西日本を地盤とするライバルコスモス」は大型買収を一度も経ずに経営規模の拡大を実現しており、その勢いはすさまじい。

 現在、この2社の主力業態である郊外型店舗の売場面積はいずれも1,000平方メートルを超え、食品をはじめとして取り扱い品目も多く、ドラッグストアとしては大きな売場面積も売上増に寄与するものとなっている。

コスモスの標準型店舗は売場面積1,500平方メートルほど(建物の色は出店時期によって異なる)。
各店ともに大型駐車場を備える

◆「都心型」のネックは過当競争
 一方で、今回「経営統合」を検討しているマツキヨ」、「ココカラ」、「スギ薬局」の3社はいずれも売上高の伸び率が比較的低い。この3社は郊外店も少なくないものの、いずれも主力業態は「都心型」店舗。マツキヨ首都圏、スギ薬局は名古屋ココカラは横浜(旧・セイジョー)と京阪神(旧セガミ・旧ライフォートなど)の駅前や商店街を主戦場としている。いずれの都心型店舗もコンビニと同規模かそれより少し大きい程度の狭小店舗が多いことも特徴であるが、大都市圏の中心部では複数フロアに及ぶような旗艦店を見かけることもある。とくにスギ薬局はこの4月に原宿に旗艦店を出すなど、首都圏での知名度を上げるべく都内駅チカでの展開を増やしている。

ココカラは多くの企業の統合で誕生したため、かつての屋号を残す店も多い。「経営統合への抵抗が薄い」という社風もあるのかも知れない。
写真の店舗は「マルゼン」「ライフォート」「ココカラファイン」という3つの屋号の看板を同時に掲げていた(兵庫県川西市)

 こうした都心型店舗は駐車場がない、もしくは狭いことが多く、人口の多い地域の狭い商圏をターゲットに出店を行ってきた。

 しかし、すでに大都市圏では何処の駅前であってもドラッグストアは進出済み。複数店が徒歩圏でしのぎを削る例も多く見かける。さらに、近年都心部では地価の上昇が続いており、家賃の負担も大きい。ドラッグストアの店舗面積の大型化も進んでおり、郊外店にも対抗しうるような品揃えが充実した大型店を出すには以前よりもかなり多くの費用が必要となっている。

 都心型のドラッグストア運営企業がさらなる拡大を望むのならば、大型合併による競合店舗の整理、物流の統合などといった効率化を図ることが必須であろう。

大都市の中心部では複数のドラッグストアがしのぎを削るエリアも多くみられる(大阪市

◆脅威となる「コスモス薬品」の急伸
 さらに、これら都心型を中心に展開する企業にとって「新たな脅威」となっているのが、ほぼ「西日本ローカル」でありながら業界3位に躍進したコスモス薬品だ。

「ディスカウントドラッグ」をキャッチフレーズとして掲げる同社は、長年「ほぼ共通設計の郊外大型店」を西日本にドミナント出店し、商品価格を抑えて大量販売するという手法で成長してきた。しかし、近年は東日本への出店も増えており、さらに2019年には東京初出店として広尾・中野・西葛西の駅チカに相次いで出店するなど、都心エリアにも勢力を伸ばしつつある。
「強力なライバル」の出現は、都心型中心のドラッグストア運営企業の経営統合を促す一因となった可能性もあろう。

東京都心に初出店したコスモス薬品(東京都目黒区)。
コンビニ跡への出店であるため狭く、九州で見られるような大型の食品売場は設けられていない(写真提供:第2893号さん)

 さて、こうした都心型ドラッグストアは海外でも人気を集めており、とくにアジア諸国においては急成長を遂げている。

 次回以降の記事では、大手ドラッグストア各社の「海外戦略」や「販売品目の差」について注目していきたい。

<取材・文・撮影/若杉優貴(都市商業研究所)>

【都市商業研究所】
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若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken

ココカラファインの旗艦店(大阪市)。 2018年にZARAの大阪旗艦店跡に出店した最新型店舗だ