キビキビとした走りを演出した日産「ノート e-POWER NISMO S」
キビキビとした走りを演出した日産「ノート e-POWER NISMO S」

昨年9月に発売されると、瞬く間に注目の的となったのが、日産ノートの最強モデル「e-POWER NISMO S」である。

自動車ジャーナリストの塩見サトシがその実力に迫った。

* * *

■エコカーなのに、ホットハッチ!?

日産ノートをヒットモデルに押し上げたe-POWERシステム。昔からあるシリーズ・ハイブリッドのことであり、プリウスが採用する2モーター式の複雑なシリーズ・パラレルハイブリッドシステムに比べると実に簡素な仕組みだ。

しかし燃費を上げるには有効で、構造がシンプルだからコストアップも最小限にとどめられるというメリットがある。日産が巧妙なのは、単にシリーズ・ハイブリッドと呼ばずe-POWERという独自の名前をつけたこと。ストレートに"電気パワー"を想起させ、ありがたいものに聞こえる。

e-POWERはガソリンで動くエンジンを発電専用として稼働させ、発電した電力でモーターを動かしてクルマを走らせる。エンジンに発電させるか、外部から充電するかの違いはあれどもモーター駆動のクルマという意味ではリーフと同じだ。

実際にモーターも同型。ユーザーはこれまで使ってきたエンジン車と同じようにガソリンを入れるだけでよい。e-POWER車が「充電のいらない電気自動車」と言われるゆえんだ。

1.2リットル直3 DOHC 12バルブエンジンで発電。モーターの最高出力は136PS。価格267万1920円~
1.2リットル直3 DOHC 12バルブエンジンで発電。モーターの最高出力は136PS。価格267万1920円~

e-POWERは言うまでもなく燃費を向上させる目的のシステムだが、モーター自体が発進と同時に大きなトルクを発するという特性を持つため、結果的にスポーティな性格を帯びる。モーター駆動の電気自動車はみんなそう。

ただしエンジン車のように変速機が備わらない(必要ない)から、いうなれば4速で発進し、そのまま高速道路も4速で走行するようなもの。それでもスタートダッシュが鋭いのだからモーターが発するトルクがスゴい。

そうした特性をより強調してキビキビとした走りを演出したのが、ノートe-POWERニスモSだ。ノーマルのノートe-POWERに比べ、インバーターとコンピューターを専用チューニングとすることで加速性能を向上させたほか、モーターの出力も、ノーマルの最高出力kW、最大トルクNmに対し、同kW、同Nmへと増強させた。

信号待ちからのスタートダッシュアクセルペダルを踏み込んだ際のレスポンスのよさは爽快そのもの。ペダルを戻したときの回生ブレーキの利き方もノーマルよりくっきりはっきり立ち上がる。

加減速両方向の反応のよさによって、交通の流れに乗ってスイスイと思いどおりに走らせることができる。飛ばさなくても刺激的なドライブを楽しむことができるのがうれしい。

ステアリングはアルカンターラと本革のコンビネーション。レカロシートにはnismoのロゴが
ステアリングはアルカンターラと本革のコンビネーション。レカロシートにはnismoのロゴが

特にBレンジの「S」モードがオススメ。アクセルペダルのオン/オフ時の加減速が最大の強さに設定され、ワンペダル感覚の加減速制御が可能になる。

パワーアップしっ放しに終わらず、きちんとボディを補強し、足回りも最適化することでトータルバランスを崩さないのがメーカー純正チューニングカーのよいところ。感心したのは専用バケットシート。ホールド性抜群で、国産車としては珍しく「抱かれてもいいシート」の筆頭格だ。

見た目もイカす。アグレッシブな専用フロントバンパーに専用の16インチタイヤ&アルミホイールなどがタダ者じゃない感を漂わる。一般的に電動車が漂わせがちな草食系の雰囲気をうまく打ち消してくれているのがうれしい。クールなホットハッチといったところか。

ボディカラーは全5色。ちなみに今回撮影した車両のカラーはブリリアントホワイトパールだ
ボディカラーは全5色。ちなみに今回撮影した車両のカラーはブリリアントホワイトパール

●塩見サトシ 
1972年生まれ、岡山県出身。関西学院大学文学部卒業。1995年に山陽新聞社入社。『ベストカー』編集部を経て、04年に二玄社『NAVI』編集部に入社。09年『NAVI』編集長に就任。11年に独立。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。公式Twitter【@Satoshi_Bagnole】

取材・文/塩見サトシ 撮影/週プレ編集部

キビキビとした走りを演出した日産「ノート e-POWER NISMO S」