6月24日、最後のフライトを終えて降機したパイロットの男性は、ボーディング・ブリッジを渡り終えるとコーラス隊に温かい歌で迎えられた。「34年間、アメリカン航空のパイロットとして頑張ってくれてありがとう。これからの人生も楽しんで!」―そんな思いを伝えるために、一緒に働いてきたクルーらが機長に用意したサプライズ・プレゼントだった。

アイルランド・ダブリン空港を出発し、イリノイ州にあるシカゴ・オヘア国際空港に到着したブライアン・レンツェン機長(Brian Lenzen、65)を歌で出迎えたのは、アイルランドでツアーを終え、この便にたまたま乗り合わせていたコーラス隊「セント・アンソニー・オン・ザ・レイク(St. Anthony on the Lake)」のメンバーだった。コーラス隊はゲートの前に立ち、アイルランドの名曲『May the Road Rise Up』をブライアンさんに贈った。

この歌は「あなたの行く手に道が開かれ、いつも追い風が吹きますように…。また会う日まで、神の手の中に抱かれていますように」と畳みかける。別れを惜しみ新しい門出を祝う曲としても知られており、思わぬサプライズに感極まったブライアンさんの目からは涙がこぼれ落ちた。

地元ニュース『KARE11』によると、この祝福の歌の合唱は客室乗務員がコーラス隊に頼んで実現したもので、ブライアンさんは「ボーディング・ブリッジを歩いていたら、歌が聴こえてきたのです。何事かと思ったのですが、自分のために歌を歌ってくれていると知って、思わず涙してしまいました。もともと感情的になりやすいのですが、私にとって本当に特別な時間になりました」と語っている。

ブライアンさんはミネソタ州チャスカ出身で、チェスカ高校からミネソタ州立大学マンケート校へ進学し、フライング・クラウド・エアポートで飛行技術を習得した。複数の航空会社で経験を積んだ後、1985年にアメリカン航空で働き始め、最後の8年間は国際線パイロットとして活躍した。引退前の3年間は次世代中型ジェット旅客機ボーイング787の機長を任され、まさにパイロット一筋の人生だった。

「もともと空を飛ぶことが大好きでパイロットになったのです。好きなことでお金が稼げるわけですから、幸せでしたね。パイロットはただの仕事ではなく、私の“夢の仕事”だったのです。65歳が定年ですが、本当はもう少しパイロットを続けたい気持ちもあります。ダブリンからの最後のフライトは、自分で気心の知れたクルーを選び、ダブリンではみんなでパブに行きました。実に楽しい思い出ができましたよ。」

こう語る機長を歌で祝福したコーラス隊代表のローリー・ポルカスさん(Laurie Polkus)は、当時のことをこのように振り返っている。

「機長が出てくるのをゲートの外で待って、みんなで歌を捧げました。フライト中、機長は今日が最後の乗務であることを乗客に伝え、機内を歩いて別れを告げていました。彼の妻も搭乗しており、心に残る、感動的なフライトになりました。」

あの歌は機長を称え別れを告げるのにまさにピッタリで、クルーの方々も胸に迫るものがあったのでしょうね。あの場所にいられたことに心から感謝しています。」

ブライアンさんがコーラス隊の歌に思わず涙する姿は7月中旬にアメリカン航空のFacebookに投稿され、温かいメッセージが数多く寄せられている。

ブライアン機長に幸あれ! 私もデルタ航空の客室乗務員として50年間働き、6月1日に退職したから気持ちはよくわかるわ。空を飛べなくなると寂しくなると思うけど、第2の人生を楽しんで!」
「私の父もアメリカン航空で80年代半ばからパイロットをしているの。父もあと数年で引退なので、他人事とは思えなかったわ。涙が止まらない。」
「なんて美しい曲なのかしら。この曲は私の卒業式や祖父のお葬式でも歌われたの。とても思い入れのある歌よ。」
「私も歌を歌っていた一人で、あの日コーラス隊を引退したの。あなたをとても誇りに思うわ。」
「たくさんの人にこんな形で送り出してもらえたなんて、幸せだと思う。」
「今日、この動画を30回も見たわ。何回見ても涙が出てくるの。本当に素敵だわ。」

ブライアンさんは引退後について聞かれると、「正直、もう仕事をする必要がないというのは嬉しいですね。まずは湖のそばの家で妻とゆっくりすることに決めています。でもきっと仕事が恋しくなるでしょうね」と明かしている。

画像は『American Airlines 2019年7月18日付Facebook「American Airlines pilot is serenaded on his retirement flight」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)

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