■ 再び牧を演じることへの不安も「みんなに会えばきっと戻れるだろうなと」

【写真を見る】役さながらのクールな表情を見せる林遣都

連続ドラマでは春田(田中圭)をめぐる黒澤部長(吉田鋼太郎)との熾烈(しれつ)な恋愛バトルを繰り広げる牧凌太を熱演し、多くの視聴者を魅了した林遣都。しかし、劇場版決定の知らせを受けた際は、「正直、戸惑いと不安もあった」という。

「連続ドラマのときは、もうこれで終わりのつもりでやっていたんです。牧という役は、結構なエネルギーを使って臨まなければいけなかったので…。

僕自身の思いも強かったですし、自分の中でも気持ちを通わせられたと思えた役だったということもあり、一回終わったのにまた戻るのはすごく大変なんじゃないか、果たしてそれができるのかと思う気持ちがありました」

その思いを払拭してくれたのは、こんな出来事だった。

「劇場版の話を知った後に、"おっさんずラブ”の主題歌になっている、スキマスイッチさんの『Revival』のミュージックビデオを見たんです。そこにはドラマに登場したロケ地がたくさん登場したほか、最後はスキマスイッチさんのバーに、春田さんに扮した、圭くんが飲みに行くっていう。

それを見たときに、自然と気持ちや表情が戻るみたいな、そんな感覚になりました。それまでは自分一人でいろいろ考えていましたが、みんなに会えばきっと戻れるだろうなと感じました。

それに、ドラマがハッピーエンドで終わって、その後、登場人物たちがどういう人生を歩んでいったのかにも興味があったんです。

いただいた台本を読んでみると、ドラマとは比べものにならないくらいスケールアップしているものの、"おっさんずラブ”の根底にある、人を愛することの素晴らしさみたいな部分はきちんと残っていました。そこをより深く、みんなと一緒に作っていけたらいいなという思いになりました」

■ 「圭くんや鋼太郎さんと同じように、必死に演じてきました」

劇場版には連続ドラマからのキャストに加え、本社に異動となった牧の上司・狸穴迅に沢村一樹、天空不動産東京第二営業所で上海・香港出張から戻った春田の部下・山田正義(ジャスティス)に志尊淳など、新たなキャラクターも登場。春田をめぐる関係も、三角関係から五角関係へと、より複雑化する。

「実は、僕が撮影前に戸惑いを感じていたのには、そういった関係性の変化も大きかったんです。誰かが現れて、また春田さんと一悶着(もんちゃく)ありそうになったとき、果たして牧は春田さんを思い続けることができるのか、いろいろ考えてしまって…。

でも、今回の五角関係の一角となる狸穴さんをとてもスマートに、カッコ良く沢村さんが演じてくださっていたんです。特に現場で役の話をしたわけではないのですが…。話さなくても通じ合えるという感じがありました。牧が変わるきっかけを与える存在としていてくださったので、それまで不安に思っていた気持ちも吹き飛びました」

もちろん、田中や吉田への信頼は絶大だ。

「圭くんにはあらためて主演としてのたたずまいと、現場に対する向き合い方にとても刺激を受けました。ドラマのときもそうでしたけど、圭くんは何よりうそをつきたくないって気持ちが大きくて。せりふだけじゃない部分まで、妥協をしないんです。

それだけでなく、今何を撮りたいのかっていうのを、みんなで共有し合う時間をしっかりつくろうとしてくださる役者さんなので、安心して委ねることができます。僕自身、そこはどの現場に行っても大事にしていかなきゃいけないなと思っています。

それは鋼太郎さんを見ていても、同じような思いです。鋼太郎さんは"役として生きる”姿勢を重要視されていて、やっぱりそこにもうそがないんです。

僕も演じるときは、圭くんや鋼太郎さんと同じように、役と同じように生きられればなと思って必死に演じてきました。それが僕自身にとっての何かになっていることはもちろん、この劇場版で少しでも伝わったらうれしいです」(ザテレビジョン・取材・文=片貝久美子)

8月23日(金)公開「劇場版おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~」への思いを語る林遣都