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もくじ

レストアに注ぎ込んだ数万ポンド
フェラーリ250GTOから発想を得たペイント
ヒルクライムのスタート地点で出火
地元のレースでのクラス優勝

レストアに注ぎ込んだ数万ポンド

TVR 2500のエンジンには、ステージ2と呼ばれるチューニングが施されたエンジンヘッドに、オーバーサイズのバルブが取り付けられています。自分での組み立て作業も必要でしたが、リビルトに1万5000ポンド(204万円)も掛かりました。ジェームズの知人のメカニックが、バルブタイミングの調整に来てくれたのは助かりました」

シャシーは各所がアップグレードされている。ステアリングラックはクイックなものに変えてあり、ブレーキはAPレーシング社製の4ポッド。リアはドラム式だが、アルフィン仕様だ。ダンパーはAVO製の調整式が選ばれ、クロス・トランスミッション化、ベアリングも強化品に交換してある。「アップグレードの作業も簡単ではありませんでした。部品はボルトオンで付かないこともあり、別の問題も生み出すことがあったのです」

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シャシーの組み上げを進める一方で、ハンクコーンウォールでボディの修復も進めた。「トラックを借りて、祝日にピートと一緒にブラックプールのブリストル・アベニューに拠点を構えるサーフェス&デザイン社までボディを運びました。そこにはTVRにいたスタッフがいて、素晴らしい仕事をしてくれます」

「サンルーフの雨漏りは止まり、古い事故による損傷も元通りです。ボディのヒンジはすべて交換され、ウインドウフレームも新しくなりました。若干のモディファイもしてあり、キャブレターを3基並べられるようにしてあります。修復費は1万2000ポンド(163万円)になりました」

フェラーリ250GTOから発想を得たペイント

ボディの塗装は、メタリックブルーの下に見えるオリジナルのイエローを活かしたいと考え、ベルギーのレースに参戦していたフェラーリ250GTOにインスピレーションを得たという。「メタリックシルバーは好みではありませんでした。サーフェス&デザイン社が色見本を送ってくれましたが、決めるのは難しい作業でした。結局、ローバー・トーガ・ホワイトという白色で塗り、イエローのストライプをステッカーで貼ることにしました」 と経緯を話すハンク

ジェームズ・ミッチェルとロス・シャープの手を借りて完成したシャシーを、塗装が仕上がったボディとをマリアージュさせるためにブラックプールまで運んだ。「TVR 2500は左右対称でないことで有名ですが、このクルマの場合は大丈夫だったようです。わたしのクルマはボルトで固定されていた初期型でしたが、後期型は接着剤で固定してあります。そのクルマだったら大変だったでしょうね」

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シャシーとボディが組み上がると、プロジェクトはロンドンに移り、細部の仕上げへと移る。「電気関係はわたしも弱く、スペースも充分になかったので、ハーネスは専門家へお願いしました。ボディにはロールバーも付いていたのですが、フィッティングは完璧でしたが溶接など細かい部分で納得できないところがありました。そこで、ここから数時間のガトウィックにあるクラシック&レース社へクルマを持っていくと、エンジンのパワーも増強された状態で戻ってきたんです」

プロジェクトが完了するまでに要した期間はおよそ5年。初ドライブがやってくる。「ロンドンの南にあるボックスヒルという丘陵地帯へ、慣らし走行も兼ねて出発しました。冬でヒーターもなかったのですが、クルマの状態は良好で、そのまま英国の南海岸までドライブ。ビーチー岬まで行って、ケントの町を通ってロンドンに戻りました。ティレッティ社製のカーボンファイバーのシートはとても快適で、1日中運転できると思います」

ヒルクライムのスタート地点で出火

ヴィンテージスポーツカークラブ(VSCC)のポメロイ・トロフィに参戦する前に、一度クラシック&レース社へクルマを戻して、サスペンションの再設定とファインチューニングをお願いしています。イベントの規定でロールバーの装備が義務付けられていて、おかげでスーツケースやスペアパーツはクルマに詰めません。TVR 2500の車重は重く、920kgもあります。なのにエンジンは125ps程度。タイヤもオリジナルサイズなので、勝負にはなりませんでした。それでも、グランプリコースで40分の高速トライアルに参加して、マツダMX-5の何台かとレースを楽しみました」

デビュー戦を楽しんだハンクは、その他のTVRクラシックモデルと一緒に、ヒルクライムやスプリントレースに参戦している。リンデン・ヒルではクラス優勝も果たした。「話も楽しい、とてもフレンドリーなグループです。時々キャンプをして食事も一緒に楽しみます。英国中西部のシェルズリー・ウォルシュでのイベントは、アンラッキーでした。1番シリンダーが死んで、レース仲間のスティーブ・デニスから脚用のクルマを借り、コベントリーまでガスケットの補修部品を買いに行きました。彼は出走直前まで、修理を手伝ってくれました」

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シェルズリーでのレースでは、スタートラインに着いた時点で、スポンジ状のエアフィルターから出火したそうだ。「急いでクルマから降りて、消化器を噴射しました。エンジンルームは一気に古びてしまいました。その時もレース仲間が地元のガレージまでレッカーしてくれて、そこからは電車で14時間かけてロンドンまで戻りましたよ。シェルズリーは良い場所ですが、コースはそれほど面白くありません。スプリントレースには中毒性があります。ガールストン・ダウン・サーキットがスリリングで最高ですね」

2回目の参加となった2018年のポメロイ・トロフィで、TVR 2500はさらにモディファイを受けている。新しいホイールとタイヤを履き、サスペンションもずっと硬いセットアップになった。「クルマは生まれ変わりました。ジャガーEタイプやポルシェ944ターボなどとも良いバトルができるほどです」

地元のレースでのクラス優勝

一番のハイライトは、コーンウォールへ戻る途中の英国西部、ウォーターゲートで開催された、トルロー・モーター・クラブ主催のヒルクライムイベントに参加したできごとだろう。「素晴らしい週末で、わたしの家族や友人もこぞって観戦に来てくれました。既に数え切れないほど、付近の丘陵地帯は走っていたので、コースも知っているつもりでした」

「しかしファーストランで、干し草の塊でシケインが設けてあることに気付いたのです。アリエルアトムケーターハムなどもいて、勝つのは難しいと思っていましたが、受賞者の発表のときに、クラス優勝で呼ばれたのはわたしでした」 残念だがハンクの友人のピート・ジョーダンは、その結果を見ずに帰っていたそうだ。

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「このTVR 2500で、TVRチャンピオン・レースにも参戦していますが、相手はグリフィスサーブラウ、キミーラなど。時々、より軽量なヴィクセン1600クロスフローなど、競争力の高いクルマでレースを始めれば良かったと思うこともあります。でもTVR 2500の直列6気筒のエンジン音が素晴らしいと、多くの人が口を揃えたように褒めてくれるんです」 と笑顔を見せるハンク

「エンジンはトルクフルで、ハンドリングもニュートラル。危険な場面でも回避できますし、これほどコントロール性に優れたクルマを運転したことはありません。時々兄が、クルマを返してほしいと冗談をいうことがあるのですが、わたしもこう返します。今まで掛かった金額の請求書も一緒に付けるよ、と。でも、まったく後悔はしていませんよ


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