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もくじ

V6ディーゼルターボ+マイルドハイブリッド
アウディのSで進むパワープラントの変化
2500rpm以上で噴火するように溢れるパワー
気になるディーゼルの受け止められ方
アウディS4のスペック

V6ディーゼルターボ+マイルドハイブリッド

translationKenji Nakajima(中嶋健治)

アウディS4が、343psを発生する4.2LのV8エンジンを搭載していた時代は、それほど昔ではない。アウディのSモデル群が魅力的なV8エンジンを搭載していた頃を、いま時代錯誤だったと強く感じることはないと思う。少し前のC6世代のS6には、435psを発生するランボルギーニ譲りの5.2LV型10気筒エンジンをフロントに搭載していた。時代の変化は早いものだ。

その魅力的だったエンジンたちは、アウディのSのモデルの中にはほとんど残っていない。Sからさらに強化されたRSモデルでさえ、10気筒エンジンを搭載しているクルマはRS8くらいないようだ。かつて自然吸気のV型8気筒エンジンで風を切っていたRS4やRS5でさえ、性格を変えてしまった。

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しかしそれが世界の流れではある。意識の変化にあわせて優先順位も変化し、クルマはそれに適応していく必要がある。新しいアウディS4に、先代の3.0LV型6気筒ガソリン・ターボエンジンにかわって、3.0LのV型6気筒ディーゼルエンジンマイルドハイブリッドが組み合わされた理由でもある。

この流れは、アウディがほかのSモデルへも与えているものと同じ。新しいS6とS7にもディーゼルエンジンが搭載された。最近発表されたSQ8には、4.0LのV型8気筒エンジンが搭載されているが、燃料は軽油。まもなく登場するSQ7にも搭載されることだろう。それらのクルマにも、マイルドハイブリッドシステムが搭載されている。欧州市場では今後、S8が唯一のガソリンエンジンを搭載するSモデルとなるだろう。

アウディのSで進むパワープラントの変化

2015年に世間を賑わせたディーゼルエンジンの排出ガス偽造問題、いわゆるディーゼルゲートに伴うイメージの低下を考えると、アウディがミドルサイズのハイパフォーマンス・モデルにくだした決定には、疑問を抱いてしまう。

アウディのエンジニアから聞いた話によると、このディーゼル化の流れは、初代SQ5にディーゼルエンジンが搭載された際の意向が強いという。まだ当時は強い需要があったのだ。顧客は優れた走行性能と経済性との組み合わせを好むという理由で、ディーゼルエンジンを幅広いSモデルへと搭載することが決定されたのだ。

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また、現在の排出ガスの規制強化についても、理由として考える必要はある。RS4やRS5に搭載されるエンジンの排気量が、徐々に小さくなっていることも見逃せない。恐らくディーゼルエンジンは、身近なハイパフォーマンスモデルを実現する手段でもあるのだろう。

とはいえ、使用する燃料が変わっても、S4が生み出す力がたくましいことは事実。3.0LのV6ディーゼルエンジンの最高出力は346psで、最大トルクは71.2kg-m。最大トルクの発生回転数域は意外と狭く、2500-3100rpmとなっている。ちなみに、メルセデス-AMG C63 Sクーペが搭載する4.0LのV8ガソリン・ツインターボ・ユニットが発生する最大トルクとほぼ同等となる。

駆動方式は、アウディのハイパフォーマンス・モデルらしく、4輪駆動。トランスミッションは8速ATで、セルフロック・ディファレンシャルによって、最大で85%のパワーを後輪へと伝えることが可能となっている。0-100km/h加速は4.8秒で、4輪駆動状態での鋭い加速は、このクルマの最も楽しめる側面でもある。

2500rpm以上で噴火するように溢れるパワー

アクセルを踏み込むと、回転数が2000rpmまでは加速力は徐々に増していくという程度だが、2500rpmを超えるやいなや、エンジンの獰猛な側面が顔を出す。V6エンジンはやや人為的な低音を響かせつつ、まるで火山が爆発したかのように、暴力的といいたくなるほどの勢いで速度が増していく。味わえる時間は長くはないとはいえ、このクルマだけのスリリングな体験だ。

また実用性の面でも優れているのは明確。高速道路を走行するような場面では、エンジンは静かにクルマを進ませる。WLTP法で14.9km/Lという燃費も、自動車旅行の給油回数を減らしてくれる。

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S4は車高が低められたスポーツサスペンションを装備するが、最も柔らかいモードを選んでいても、標準のA4と比較しても明確に乗り心地は硬い。だが、傷みの酷い路面を走行していても、それほど冷酷にドライバーを揺さぶるようなことはなく、長距離運転に尻込みしてしまう必要はない。むしろ、落ち着きのある、よくしつけられたクルマだといえる。

コーナリングは、安定していて粘り強いだけでなく、適正なタイミングでスロットルを開ければ、テールを流すことも可能。ダイナミックモードにすると、ステアリング操作には少し人為的な重みを感じるようになるものの、不安感のない明確な手応えを感じながら、クルマを操ることができる。

気になるディーゼルの受け止められ方

速度が速くなるにつれて、ステアリングのレスポンスも徐々にクイックに変化していく。慣れるまでは少し不安に感じるかもしれないが、すぐに順応できると思う。ただし、手のひらに伝わるフィードバックがほとんどないことは、いつものこととはいえ、残念ではある。

インテリアデザインも同時にリフレッシュされた。最新の10.1インチMMI+インフォテインメント・システムと、バーチャルコクピットは標準装備となり、先進のテクノロジーという、アウディの強みを高めている。

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ライバルモデルを俯瞰してみよう。短時間ながら試乗した印象からすると、最新のBMW M340i xドライブは走りにこだわりのあるドライバーの有力な選択肢となってくるはず。一方で、メルセデス-AMGのV6ツインターボ・ガソリンが秘める獰猛な性格も、ドライバーによっては惹きつける要素となるだろう。

新しいアウディS4はといえば、気持ちが最も強く鼓舞されるクルマではないにしても、説得力は低くない。ハイブリッドディーゼルエンジンは少し浮いた内容ながら、その動力性能や扱いやすさは間違いなく素晴らしい。高速道路を走れば快適なクルーザーになりつつ、郊外のカーブが続く道を素早く駆け抜けることもいとわない。

パフォーマンス・サルーンとはいえ、ディーゼルエンジンを搭載したクルマに4万8000ポンド(652万円)は高い、という考えもあるかもしれない。しかしSQ5へ決定したアウディのエンジニアの考えが正しければ、新しいS4の需要は小さくないといえる。少し見守ってみようと思う。

アウディS4のスペック

価格:4万8000ポンド(652万円)
全長:4745mm
全幅:1842mm
全高:1407mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:4.8秒
燃費:14.4km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:1785kg
パワートレイン:V型6気筒2967ccターボ
使用燃料:軽油
最高出力:346ps/3850rpm
最大トルク:71.2kg-m/2500-3100rpm
ギアボックス:8速オートマティック


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