敗血症で四肢切断を余儀なくされた生後11か月の男児の母親が、「敗血症についてもっと多くの人に知ってもらいたい」と英メディア『The Sun』『Metro』などのインタビューに応えた。感染症をきっかけに様々な臓器の機能不全が現れる敗血症は、発見が遅れると重症化し死亡率も高くなる。

リンカンシャー州クリーソープス在住のアビゲイルワードルさん(23)は今年の3月16日、体調が優れないオリバー・エスソープ君(Oliver Aisthorpe)を病院に連れて行った。オリバー君は頭の柔らかい泉門部分がへこんでおり、脱水症状を起こして機嫌が悪かった。医師は解熱鎮痛剤を処方し、水分を十分摂って自宅でゆっくりと身体を休めるように指示した。

その翌日、オリバー君は流動食はおろかミルクも口にしなくなり、尿が出なくなった。また抱っこすると全身が痛むのか泣き始め、顔面蒼白で泣く元気すらなくなり、アビゲイルさんは「これは尋常ではない」とすでに診療が終わっている病院へと急いだ。しかしオリバー君の手脚は青紫色に変わり、医師らは小さなオリバー君の身体にいくつものチューブや機械を繋ぎ、薬による昏睡状態に置いた。

「48時間前には笑っていたオリバーに一体何が起こったのか」―医師らでさえもわからない状態で、アビゲイルさんは混乱した。

その後、オリバー君は喉から入った細菌が血液中で増殖し敗血症を発症していることが判明した。アビゲイルさんは医師から二度も「覚悟を決めるように」と言われ、一進一退を繰り返すオリバー君のそばで涙を拭う日々が続いた。

それでもオリバー君は何とか命を取り留めた。幸い脳には影響が及ばずに済んだが、血流が滞って手脚が黒く変色し、組織や細胞が死んでしまう壊死が進行していた。医師らはオリバー君の手脚を切断せずに済むよう奮闘していたが、アビゲイルさんは担当医に「オリバーは重い手脚が邪魔で苦しんでいます。母親がこんなことを言うのはおかしいのかもしれませんが、早くオリバーの四肢を切断してやって下さい」と懇願した。

そしてある日、アビゲイルさんと看護師が赤ちゃん用の椅子に寝ていたオリバー君をベッドに移そうと抱き上げた瞬間、オリバー君の黒ずんだ脚がポロリと落ちた。その脚は壊死し辛うじて繋がっている状態で、連絡を受けた医師らが慌てて駆け込んできた。

アビゲイルさんは、当時のオリバー君について次のように語っている。

「あまりにも酷い状態で、医師に部屋から出たほうがいいと言われましたが、私は首を縦には振りませんでした。だって苦しむオリバーを1人きりにはさせられないでしょう。結局オリバーの四肢は切断されたのですが、それ以来オリバーはまるで人が変わったように明るくなりました。きっと身体の重みが取れて気持ちが落ち着いたのでしょうね。」

今から6週間前、オリバー君の右脚は膝下から、左脚は膝上から、両手は手首のあたりから切断されたが、7月末には退院することができた。今では寝返りをしたリ、おもちゃで遊んだりと新しい身体にずいぶんと慣れてきたようで、アビゲイルさんは「オリバーをとても誇りに思います。辛い時もあったけど、前を向いて生きて行かないといけません。オリバーは何でも私の真似をしますからね」と語り、こう続けた。

「四肢が切断されたオリバーをかわいそうと思う人もいるでしょうが、私は自分のことを世界中で一番幸運な母親だと思っています。病院に連れて行くのが少しでも遅かったら、きっとオリバーは生きてはいなかったでしょう。笑顔がキュートで頑張り屋のオリバーが生きていてくれること、私たちと一緒にいてくれることをとても感謝しています。」

「私が何よりも伝えたいのは、オリバー敗血症は初期段階で医師でさえ認識ができず、発見と治療が遅れてしまったということです。私たちと同じような経験をしなくても済むように、より多くの人に敗血症について知ってもらいたいと思っています。」

なお、生後11か月となったオリバー君には数か月後に義足が届く予定だそうで、アビゲイルさんはオリバー君が第一歩を踏み出す日を楽しみにしているという。

画像は『Metro 2019年8月12日付「Baby’s leg fell off in mum’s hand and now he’s lost all four limbs(Picture: Caters)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)

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