アルバイトや有期雇用で働いている方は「正社員になれば給与が上がって生活が今より楽になる」と思われるかもしれません。しかし、ブラック企業が蔓延している昨今、正社員になってもアルバイト並みの生活を強いられることは珍しくありません。

今回は、筆者が非正規雇用から正社員になったときの経験から学んだことをご紹介します。

「総支給額に残業代が含まれている。残業はほとんどない」はずだった

当時、私は契約社員として働きながら転職活動をしていました。そして、ある会社で正社員として内定を獲得。面接官からは「残業代は総支給額に含まれている」と説明を受けましたが、「基本的には定時で終わる量の仕事をしてもらっている」とのことだったので、残業はほとんどないのかもしれないと思い入社しました。

勤務開始から数カ月間は実際に残業がなく、あったとしても週に1、2回、1時間程度でした。仕事よりプライベートを優先したかった私は、少ない給与ながらもプライベートの時間を確保できていたので、その当時は満足していました。

しかしある時、50名程度の社員がほぼ全員シャッフルされるように人事異動があり、業務内容や会社の体制が大きく変わりました。仕事の量が一気に増え、毎日残業は当たり前。定時で帰れる日はほぼなくなりました。面接で聞いた話と真逆の状況です。それでも給与は変わらず、残業代は支給されません。精神的にもどんどん消耗していきました。

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振り込まれているはずの賞与がない!

正社員の特権ともいうべき賞与。これが楽しみで仕事を頑張っているという方も多いのではないでしょうか。

入社から約1年。初めてのボーナスが支給される直前、月々の給与以外にも収入があることがうれしくて、心からその日を楽しみに待っていました。そして当日の朝、携帯電話のモバイルバンキングで銀行口座の残高を確認すると、賞与が振り込まれていませんでした。

「何かの手違いかな?」と心配しながら出勤すると、出社してすぐに「経営悪化により社員全員ボーナスの支給はない」と上司から説明がありました。そしてこの経験から、正社員でも確実に賞与がもらえるとは限らないことを学びました。

残業代もボーナスも出ない状況。会社に対して不信感が募るばかりでした。その後1年間は賞与が無事に支給されたものの、東日本大震災の影響で経営が赤字になり、再び賞与は支給されなくなりました。

正社員を辞め、派遣社員になった結果

相変わらずの残業続きに加え、2回に及ぶ賞与の不支給を受けて、入社から3年半で退職することにしました。退職日に後輩社員から言われた言葉が今でも忘れられません。

「派遣社員のときの方が稼げていた」

彼女はその会社に勤務する前の3年間、他社で派遣社員をしていたらしいのですが、派遣社員の方が正社員になった今よりも収入が多かったと言うのです。この言葉をきっかけに「正社員にこだわる必要はないんだ」と気が楽になりました。

その後、派遣社員として仕事を始めると、賞与の支給はなかったものの月々の支給額が正社員のときよりも増えたのでQOL(クオリティ・オブ・ライフ)が向上しました。残業もほとんどなく、あったとしても働いた分だけの時給が支払われるので、残業が前職のときほど苦痛ではありませんでした。

客観的に見れば、正社員から派遣社員は「キャリアダウン」かもしれません。しかしその当時の私にとっては、正社員よりも派遣社員の方が給与にも仕事にも満足できていました。正社員の肩書を捨てて思い切って派遣社員になり、本当に良かったと思います。

正社員にこだわらず、自分らしい働き方を模索しよう

今では多様な働き方が社会全体に受け入れられる時代です。派遣やアルバイトでも、満足のいく収入が得られて、ワークライフバランスが安定するのなら正社員にこだわる必要はないように思います。

ここ数年で、時間と場所にとらわれずに働けるフリーランスも急増し、さらに自由な働き方にスポットが当たりつつあります。自分らしい働き方ができるのなら、雇用形態にこだわらず、さまざまな働き方を模索してみてはいかがでしょうか。