8月16日、フジテレビの2時間番組枠「金曜プレミアム」が9月で終了し、1時間枠のバラエティーに変わることが一斉に報じられました。

 同枠は1984年に「金曜女のドラマスペシャル」(当時は午後9時台から2時間)としてスタートし、「ザ・ドラマチックナイト」「男と女のミステリー」「金曜ドラマシアター」「金曜エンタテイメント」「金曜プレステージ」「赤と黒のゲキジョー」と名前を変えながら、現在の「金曜プレミアム」(午後8時台から2時間)まで放送されてきた約35年半の歴史を持つ長時間枠。

 なぜ、フジテレビは局の看板とも言える長時間枠を終了させるのでしょうか。どんな影響があり、何が不安視されているのでしょうか。フジテレビに限らず民放各局を含めて、長時間枠の現在と未来を掘り下げていきます。

人気さえあればシリーズコンテンツは安泰

「金曜プレミアム」の終了による反響で最も目立つのは、シリーズコンテンツへの不安。

 実際、ドラマの「赤い霊柩車シリーズ」、報道ドキュメンタリーの「池上彰スペシャル」、バラエティーの「爆笑そっくりものまね紅白歌合戦スペシャル」「芸能界特技王決定戦 TEPPEN」などの人気コンテンツが「今後どうなってしまうのか」という不安の声が、ネット上に飛び交いました。

 ただ、これらの人気コンテンツは、秋以降、フジテレビ唯一の2時間番組枠となる「土曜プレミアム」に引き継がれる可能性大。長年放送してきたことによる勤続疲労があるとはいえ、視聴者の反発を避ける意味でも、予告なく終了させるとは考えにくいところがあります。

 また、「これまで2つあった2時間番組枠が1つになることで、放送機会が半減するか」といえば、必ずしもそうではありません。現在、民放各局の番組編成は、良く言えば「柔軟」、悪く言えば「形だけ」の流動的なスタンス。1時間のレギュラー番組も、通常放送より2時間特番の方が多く、逆に「2週間放送がなかった」というケースも少なくありません。

 つまり、「『金曜プレミアム』で放送されていたコンテンツをいつでも単発特番として放送できる」ということ。人気さえあれば、前述したシリーズコンテンツは曜日を変えて放送されるでしょうし、それが「結局同じ」となる金曜夜の可能性もあります。

2時間番組は各局ほぼ1枠のみ

 ただし、ドラマ、映画、バラエティー、報道・情報、ドキュメンタリーなど数あるコンテンツの中でも、ファンの間で「2サス」と言われる「2時間のサスペンスドラマ」だけは例外。制作費やロケの負担が大きい上に、根強いファンこそいるものの視聴年齢層が高く、スポンサー受けも微妙であるなど、例えばバラエティーと比べて「新作の希望は薄い」と言わざるを得ません。

 その他、2時間番組枠が1つに減ったことで考えられる影響は、「特番からレギュラー番組に昇格するチャンスが減る」こと。現在放送中のレギュラー番組では、「梅沢富美男のズバッと聞きます!」「芸能人が本気で考えた!ドッキリさせちゃうぞGP」が「金曜プレミアム」での放送を経てレギュラー化されましたが、今後はトライアルとして放送して視聴者の反応を見る機会が減ってしまうことになります。

 かつて、2時間番組はその特別感から“テレビの華”と言われ、レギュラー放送よりも期待感を抱いて見る視聴者が大半を占めていました。しかし、2010年代に入って各局がレギュラー番組の長時間放送を乱発したことで特別感が消失。「長いだけ」「制作費対策」とみなす視聴者が増えたことで、各局の2時間番組枠が減っていきました。

 現在、ゴールデンタイムで放送されている2時間番組枠は、「水トク!」(TBS系)、「金曜ロードSHOW!」(日本テレビ系)、「土曜プレミアム」(フジテレビ系)、「土曜スペシャル」(テレビ東京系)、「日曜プライム」(テレビ朝日系)、「日曜ビッグバラエティ」(テレビ東京系)。各局ほぼ1枠ずつに減ったのは、「2時間番組は決まった曜日と時間帯ではなく、不定期で放送すればいい」という方針変更の表れでしょう。

 流動的な番組編成は「視聴習慣がつきにくい」というデメリットがありますが、今や、オンデマンドで好きなときに好きなコンテンツを見られる時代だけに、大きな問題はないでしょう。しかし、ネットコンテンツの台頭で競争が激しくなり、番組の質や面白さを高めることの重要性は以前よりも増しています。

コラムニスト、テレビ解説者 木村隆志

「赤い霊柩車」主演の片平なぎささん(2015年1月、時事通信フォト)