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 かつて陰謀論でこんな話もあったようだが、これは違う。現実の話だ。

 ハーバード大学の科学者は今、噴火の寒冷作用を再現するという世界初の太陽地球工学的実験に乗り出そうとしている。その一環として、プロジェクトの倫理・環境・地政学的な影響を検討する外部諮問機関の設置が発表された。

 ネイチャー誌によると、7月29日カリフォルニア戦略的成長評議会の理事であるルイス・ベズワース氏が諮問委員会の委員長に就任すると発表された。またほかに地球科学や環境・気候関連法政策の専門家7名がメンバーに加わる。

 かつて陰謀論でささやかれていたことが現実になろうとしているのだ。

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SCoPEx――炭酸カルシウムのカーテン

成層圏制御摂動実験(Stratospheric Controlled Perturbation Experiment/SCoPEx)」と呼ばれるこの実験は、炭酸カルシウム粒子を地球上空に散布し、火山灰が太陽光をさえぎり寒冷化させる作用を再現しようというものだ。

 実験自体は昨年に発表されたもの。そのときの予定通りに進んでいるのであれば、2019年前半に300万ドル(約3億円)を投じた第一フェイズが開始。米国南西部ニューメキシコ州上空20キロまで気球2つを上昇させる実験が行われる。

 気球が所定の位置についたら、2キロの袋に入った炭酸カルシウムを散布。その後、粒子が拡散する様子を気球に搭載されたセンサーで観察する。

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環境への懸念

 当然ながら、この実験は環境保護団体を含め、多くの人々に懸念を抱かせている。

 予期せぬ連鎖反応が起こり、気候やオゾン層に甚大が被害が生じるのではないかと心配されているのだ。気候に密接に関連している海流に影響する恐れもある。

 さらに、こうした試みによって世界が熱が防がれる地域とそうでない地域とにわかれる可能性もある。こうしたモザイクのようなパターンは、水分の蒸発や雲の形成に影響し、降雨パターンを違うものにしてしまうかもしれない。

 粒子の散布を大規模に行なった場合の影響はまったく予測不能だ。温暖化を防ぐための方策が、逆効果になってしまう恐れもあるのだ。

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効果への疑問


そもそも少々炭酸カルシウムをばらまいたところで、何の意味もないという声もある。

 20世紀で2番目に大きかった1991年のピナトゥボ山噴火(フィリピン)では、700人が死亡し、20万人が家を失った大災害だった。

 このとき、2000万トンの二酸化硫黄エアロゾルが放出されたが、それでさえようやく0.5度程度気温が下がっただけだ。しかもその効果は1年しかもたず、すぐに元に戻ってしまった。

 ほかにも温室効果ガス削減という唯一の根本的な温暖化対策から目を逸らさせるためのものではないのか、といった意見も聞かれる。

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試してみる価値はある?

 しかしハーバード大学の研究チームは、試す価値があると考えているようだ。確かに2015年に初めてデビッドキース氏の発表を見たフランク・コイッチュ氏は、ナンセンスと感じたそうだが、今では考えを改めたそうだ。

 彼は「大気化学の研究者として何ができるか自問」した末に、実際にやってみるべき時が来たと考え、キース氏のチームに加わった。

 どこかディストピア映画に登場しそうなアイデアであるが、そのじつ世界の政府やシンクタンクが以前より検討してきたものでもある。

 実際、昨年11月にも環境系の学術誌にまったく同じ論文が掲載されているし、ジョン・オーウェン・ブレナン元CIA長官もこれについて語っている。

 それどころか、図らずもすでに同じことが行われている可能性すらある。アメリカ海洋大気庁(NOAA)の研究者によれば、飛行機が作る飛行機雲によって、知らないうちに空に地球工学的な改変が加えられているかもしれないのだそうだ。

Harvard scientists, funded by Bill Gates, wants to spray millions of tonnes of dust into the stratosphere to dim the sun - Knowledge Influx/ written by hiroching / edited by parumo

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http://karapaia.com/archives/52278228.html
 

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