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芸人たちが企画を楽しんでいると、見ているこちらも嬉しくなる。8月14日放送の『潜入有吉』（テレビ朝日）は、まさにそんな至福の時間だった。

『潜入有吉』は、有吉弘行ら芸人たちが美容施設や女子寮といった「女の園」に潜入。謎を解きながらターゲットとなる女性を探し出し、お宝をゲットするというもの。

メンバーは有吉弘行のほかに、澤部佑（ハライチ）、中岡創一（ロッチ）、カズレーザー（メイプル超合金）、吉村崇（平成ノブシコブシ）、後藤拓実（四千頭身）、田中卓志（アンガールズ）の全7名。

進行、ボケ、ツッコミ、フォロー、リアクション、全てが揃った盤石の構え。なにがどう転んでも絶対面白くなるメンバー。もはやアベンジャーズと言っていい布陣である。

しかし、ただ最強メンバーを揃えれば面白くなるとは限らない。彼らが力を発揮するためには「遊び場」が必要だ。それは何もない原っぱでも、禁止事項が多い公園でもない。自分たちで遊び方を工夫して楽しめる場所。それがタイトルにもある「潜入」というフレーバーだった。

スパイごっこにキャッキャする様子に和む
『潜入有吉』は全員が「スパイ」という設定。黒のスパイ衣装（ほぼ黒の肌着。カズレーザーは赤）に身を包み、女の園に潜入する。といっても、敵はいないし、ロケは真っ昼間だし、ビルの玄関から匍匐前進で入るので受付嬢にバレバレだし、「絶対見つかってはダメ」という厳しいものではない。

この「スパイごっこ」に興じるメンバーの楽しそうなことといったらないのだ。ロッカールームの安全を確認するために、有吉が床をゴロンと転がってバスマットの匂いを嗅いで帰ってくる。外のテラスから声がすれば吉村が突入し、中岡が後ろから銃（ドライヤー）を構えて援護する。ヨガスタジオに突入しようとして、有吉と中岡が頭をぶつけてたんこぶを作る。それらに澤部がいちいちツッコんでくれる。

要所要所でトランシーバーから指令が下り、ミッションをクリアしながら女子を探すのだが、謎解きはカズレーザーが一瞬で解いてしまうし、派手な仕掛けも特にない。言ってしまえばとてもユルく、これが例えば『ヒルナンデス！』などのロケだったら、なんともなしに終わるかもしれない。

ただ、そこに「潜入」の設定を一枚乗せるだけで、全員が活き活きと輝き出す。遊び場を見つけた子どもたちを見ているようで、ずっと頬が緩んでしまう。

弱みも強みも見せるリーダー・有吉弘行
そんな『潜入有吉』を引っ張っていたのは、やはりリーダーの有吉弘行だった。信頼できる仲間たちに囲まれ、自由に小ボケを繰り出しながら、場面ごとに最適なメンバーを前に出す。さながら「プレイングマネージャー」といったところ。

印象的だったのは、美女アスリートを捜索するために、女子寮の部屋を探索するくだり。3つの部屋を後藤、田中、有吉が順に探索し、残りのメンバーはモニタを見ながら指示を出す。

まずは後藤から。若手実力派トリオ・四千頭身では鋭いツッコミを低い温度で放つ後藤だが、この手のロケ企画はまだ不慣れなルーキー。ドアを前にしたところで、モニタールームから有吉が「そこちょっと匂ってみてくれ」と指示し、インターホンの匂いを嗅がせる。「来客者の匂いがします」と後藤。「（住人は）そこ押さないからね！」と添える澤部。

ドアを開け、後藤はまっすぐ部屋の中に入る。モニタールームの有吉は壁にかけてあるユニフォームを見つけ、「後藤、左！」「それは何だ！」と後藤の視点を誘導。デスクで体温計を見つければ「ちょっと計ってみろ！」と指示し、バスルームに侵入すれば「シャンプーどれくらい減ってる!?」「シャンプーどれくらい減ってるかフェチなんだ俺は」と、後藤をコントロールしながら笑いどころを作っていく。

続いてはアンガールズ田中。前のミッションで熱湯をかけられ、ビショビショになった田中に「頼むぞ、水の能力を持つものよ」と無茶ぶりする有吉。「任せろ！シュパー！」と即座にキャラを返す田中。「水の能力者って大抵イケメンなんですけどね」と乗せるカズレーザー。

田中の探索は、さっきできたばかりの「水の能力者」キャラで進んだ。スポーツドリンクを見つけた田中に、「味が知りたい」と有吉。それを受け、田中はなにも言われてないのに500mlを全て飲み干し再び「シュパー！」。互いの信頼関係があるからこそのやり取りだろう。

ラストは有吉。後輩たちを操った手前、きちんと手本を見せなければならない。ドアを開けた有吉はひそひそ声で「すっごいいい匂い」とコメント。前2人は声をひそめてなかった。有吉だけ「潜入」の設定を守っている。

有吉は玄関にひざまずき、スニーカーを手に取って靴底を観察。「よく見たら芝生がついてる」と、靴底から芝を取り出してカメラに見せる。いかにも探索っぽいが、次の瞬間なんの躊躇もなくその芝を食べた。部屋に入れば、指でホコリを集めてはまた食べる。「最高の能力者だな（笑）」と田中。

前の2人とかぶらない方向から、上がりきったハードルを軽々と超えてみせる有吉弘行。さすが頼れるリーダー……と思いきや、その後のミッションではルールを無視してはしゃぎすぎ、後輩たちから「テレビだから！」「番組の意図をもうちょっとくめ！」と怒られて、苦笑いを浮かべていた。

弱いところもお茶目なところも見せるけど、決めるところは決める。それってやっぱり、頼れるリーダーなんじゃないかと思うのだ。

取り急ぎご報告したいことは以上です。

『潜入有吉』見逃し配信：TVer
「井上マサキのテレビっ子からご報告があります」第7回。ライターでテレビっ子の井上マサキでございます。この連載は日々テレビを見ていて気になった細かいこと、今のアレってアレなんじゃないのと思ったことを、週報代わりにご報告できればと思っております。どうぞよろしくお願いします。