森田まさのり原作、劇団ひとり演出、間宮祥太朗主演の土曜ナイトドラマ「べしゃり暮らし」第3話

上妻圭右(間宮祥太朗)と辻本潤(渡辺大知)のコンビ「きそばAT(オートマティック)」が、文化祭の漫才コンテストでウケたという実績一点突破で「M-1グランプリ」っぽい大会「NMCニッポン漫才クラシック)」に挑む。

見ている方が恥ずかしいほどのド滑りっぷり
「学園の爆笑王」として、イケイケでやってきた圭右が初のアウェイな舞台で大滑りして「漫才の怖さ」を思い知った今回。

そこに至るまでの、漫才をなめきった態度や舞台上でのド滑りっぷりがもう……。「寒い」シーンとして正しく演出されているのだろうけど、それにしても見ていてキツかった。

文化祭での漫才に味をしめた圭右は、辻本が書いてきた台本を拒否し、アドリブ漫才で大会に挑戦することを主張。

ノープランで舞台に上がった圭右は、他の出場者をいじり、客をいじり、学校内オンリーで受けていたギャグ「アグレッシぶぅ〜」を連発という、学校のお調子者がプロの舞台に上がったらこうなるわな……という大惨事に。

その上、マイクが頭に当たったアクシデントを「笑われた」ことにキレて舞台を降りてしまう。

大惨事に巻き込まれた形となった相方・辻本まで、苦し紛れに「アグレッシぶぅ〜」と締めていた姿は、ステージに立って何かをやったことがある人ならば「ひょえーっ!」と共感性羞恥を喚起されるくらい恐ろしいシーンだったのではないだろうか。

圭右の鼻がポッキリと折られる様子を、いたたまれないほど克明に見せつけており(漫才シーンの長さもつらかった)ドラマ的には大成功なシーンだったわけだが、ちょっと気になったのは、伏線と回収が近すぎること。

「なめていられるんは舞台の怖さを知らんからや。まあ、いっぺん出たらわかるわ

という回想シーンが挿入されたかと思ったら、すぐに舞台でドン滑り。

滑ったことを客のせいにした圭右が、

「あんな笑いも何もわかってないような客の前で何やったってしょうがないっすよ!」

なんて言ったかと思えば、

「『客がこうあるべきだ』なんて求めるもんじゃねえんだ」

という父親(寺島進)の回想がはじまる。

分かりやすいのはいいものの、さすがに説明くさすぎてドラマ自体が薄っぺらく感じられてしまう。もう少し視聴者を信用してくれてもいいのでは……。

「デジタルきんぎょ」パートは相変わらず締まる
先輩芸人・金本浩史(駿河太郎)と藤川則夫(尾上寛之)のコンビ「デジタルきんぎょ」のパートは、今回も妙に風格があってドラマ全体の雰囲気を締めていた。

初舞台からバカウケして、そのまま売れっ子になったお笑いのエリートと思われている「デジタルきんぎょ」。

しかし、それより前に「エプロンパパ」というコンビ名で、だだ滑りした上に客にブチ切れるというなかなかダメな初舞台を踏んでいたのだ。

前の事務所をクビになり、コンビも解散。藤川はお笑いから離れてバイトをしていたが、やはり芸人を諦めきれずに養成所に入ったところ、金本と再会する。

「デジタルきんぎょ」が担当するラジオ番組のスタジオで、曲がかかり、金本がトイレに行っている間に、藤川と構成作家の本家爆笑王(山口祥行)が雑談しているという形で、回想シーンが展開された。

金本にとっては、話が出るだけで機嫌が悪くなるほどの黒歴史。「エプロンパパ」初舞台のDVDを渡し、そんな恥をさらしてまで、圭右に自信を取り戻させてやろうという心意気にもグッとくる。

……正直、どうして金本がそこまで圭右に肩入れしている理由はよく分からなかったけど。

そして、これだけの過去を語れるなんて、どんだけ長い曲なんだよ……。

ペラッペラの主人公はいつ成長するのか……
辻本が書いてきた台本を拒否し、アドリブでの漫才にこだわってド滑りした挙げ句、途中で舞台を降りてしまうなど「漫才をなめている」ような態度が目立った圭右。

原作では「実は漫才をなめているわけではなかった」というエピソードもあったのだが、なぜかドラマではそのくだりはカット。

一応「なめてねえよ……」というセリフはあったものの、それだけで「そうか、漫才をなめてなかったんだなぁ〜」とは納得しづらい。

おかげで、金本から託された「エプロンパパ」初舞台のDVDを見て、

「あのデジきんが、昔はこんなんだとしたら、オレらはこのあとどうなっちまうんだろうなあ!」

と自信を取り戻した姿を見ても、相変わらずメチャクチャ漫才をなめてるようにしか見えないのだ。

過去が明かされたことによって、存在感に厚みが増した「デジタルきんぎょ」に対し、相変わらず単なるお調子者にしか見えない主人公・圭右。

ペラッペラな「学園の爆笑王」から、プロの芸人として覚醒するまでの変化をキッチリと演じ分けてくれると信じたい!
(イラストと文/北村ヂン

【配信サイト】
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「べしゃり暮らし」テレビ朝日
原作:森田まさのりべしゃり暮らし」(集英社
脚本:徳永富彦
演出:劇団ひとり
音楽:高見優、信澤宣明
撮影:小林元
オープニングテーマ:Creepy Nuts「板の上の魔物」
主題歌:B'z「きみとなら」
漫才監修:ヤマザキモータース、小林知之(火災報知器
漫才協力:太田プロダクション
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日
プロデューサー:浜田壮瑛(テレビ朝日)、土田真通(東映)、高木敬太(東映)

イラストと文/北村ヂン