お待たせしました。お待たせし過ぎたかもしれません。

とにかく話題が沸騰しているのが、8月8日から配信がスタートした山田孝之主演のネットフリックスオリジナルドラマ「全裸監督」である。

これが実に面白い。筆者の周囲でも全8話を一気見してしまった人が続出している。これ、お金もらって書いてるんじゃなくて、本当のことなんだから!

主人公のAV監督・村西とおると彼が闊歩した80年代のAV業界が、とても地上波では表現できないようなエロとバイオレンス、そしてとんでもなく予算のかかったセットと豪華キャストによって描き出される。実話をベースにしているが、リアルなドキュメンタリーというよりは、「人間活劇」とでも呼ぶべき作品に仕上がっている。

堂々と真正面からファックシーンを演じる村西役の山田孝之カメレオンっぷりがすごいし、伝説のAV女優・黒木香役をオーディションで勝ち取った森田望智の覚悟の決めっぷりもすごい。SMのビニ本撮影を見て思わずあそこをしごいてしまう玉山鉄二も最高だった。

無料の“ビニ本”配布中
こうなると欲しくなるのが雑誌の特集やガイドブックだが、雑誌「BRUTUS」が編集した「全裸監督」ガイドブックは、ビニ本(ビニールに包まれたエロ本)で成り上がった村西にちなんで、ビニールに包んで東京・渋谷駅前の自販機で無料配布する凝りよう!

ただし、こちらで配布するのは8月18日まで。しかも、予定冊数に到達次第終了とのこと。なんだよ、手に入らないのかよ! と思ったアナタ、大丈夫。

8月16日に発売された「BRUTUS特別編集 合本 危険な読書」の「ビニ本」こと「全裸監督」ガイドブックが付録してついてくるのだ。ちゃんとビニール部分もそのまんま。

カバーは挑発的なまなざしの黒木香……じゃなくて、森田望智。表紙含めて24ページのガイドブックなれど、人物相関図、エピソードガイド、プロダクションノート、森田望智インタビュー、村西とおるの実像をめぐる特集、80年代をめぐる泉麻人とみうらじゅんの対談、安田理央による80年代風俗年表、そして真打ち山田孝之インタビューが盛り込まれている。

これをタダで配ったんだから、ネットフリックスの「全裸監督」に賭ける意気込みが伝わってくる。さらに本誌には脚本家チームの座談会に、武正晴総監督のインタビューもついている。というか、これがオマケで、本体のほうは本来の「危険な読書」ネタがびっちり。これで815円(税別)は安い!

黒木香を間近で見た武監督
プロダクションノートによると、もともとの発想は「日本のAV業界を舞台に、『ブギーナイツ』や『ラリー・フリント』のようなエンタメ作品を作りたい」というものだったそう。そんなことを考えていたネットフリックスのディレクターが、村西とおるの半生を描いた評伝「全裸監督」と出会って企画がスタートした。

脚本家チームが招集されると同時に、山田孝之アタック。脚本もできていない状態ながら、山田はその場で快諾した上、脚本会議にも参加することを決めたのだから、その決断力と臭覚がすごい。

また、脚本家チームが方向性などで悩んでいると、ネットフリックスオリジナルシリーズ「ナルコス」の脚本に関わったジェイソンジョージを日本に呼んできて、ワークショップを開いてもらったというのだから、あらためて手間も金もかかっていると思わざるを得ない。

総監督の武正晴が実際に80年代レンタルビデオショップで店員をしていて村西とおるブームを直撃していたり、「朝まで生テレビ!」の観覧席に座る学生エキストラで黒木香を間近で見たことがあったりというエピソードもいちいち面白い。

いずれ本格的な「全裸監督」ガイドブックが出ることを期待しつつ、まずはこの「ビニ本」を手に入れよう。未視聴の人はネットフリックスに入会して、ぜひとも「全裸監督」を観ることをおすすめする。まぁ、こういうのが嫌いな“良い子”は「ボス・ベイビー」をどうぞ。
(大山くまお

「全裸監督」ガイドブック