2017年3月に豊洲に誕生した、“舞台を客席が”ではなく“客席を舞台が”取り囲むという新発想の円形劇場、IHIステージアラウンド東京。しかもこの客席が360°回転するため、舞台にはいくつものセットを同時に建て込んでおくことができ、客席のほうを動かすことでセット転換の時間なしに場面の移り変わりを表現することができる。つまり観客は、動く客席に座るというアトラクション気分を楽しむとともに、物語がかつてないスピードとスケールで展開される斬新な演劇を体験できるというわけだ。

これまでに劇団☆新感線による大規模な舞台作品や、香取慎吾の個展も開催されてきたこの劇場で、本日8月19日にプレビュー公演をスタートさせるのが『ウエスト・サイド・ストーリー』。1957年にブロードウェイで初演されて以来、実に60年以上にわたって世界各地で上演され続けている、レナード・バーンスタイン作曲によるあの名作『ウエスト・サイド・ストーリー』である。日本人スタッフ・キャストによる上演も盛んな作品だが、今回お目見えするのはデイヴィッドセイント演出、フリオ・モンヘ振付による来日キャスト版。作品に長く携わってきた彼らが新たに創る、世界初演の“360°シアター版”だ。クリエイティブ陣には、『パリのアメリカ人』『ウォー・ホース~戦火の馬~』など数々の名作を手がけてきた映像制作チーム「59プロダクションズ」も名を連ねており、期待が高まるところ。

なお、同劇場ではこの公演の後、同じ演出による日本人キャスト版『ウエスト・サイド・ストーリー』の上演も予定されている。新感線による作品群と同様、7か月にわたる公演期間を3つの“シーズン”に分け、キャストを総入れ替えして上演するという大規模なプロジェクト。その上メインの役どころは各シーズンそれぞれWキャストとなるようで、この来日公演も含めて全キャスト制覇を達成したら、終わる頃には大変な『ウエスト・サイド・ストーリー』博士になれそうだ。

文:町田麻子

ブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』リハーサルより