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Point

■警察は、世間が仕事の難しさについて理解していないと感じるとモチベーションが低下し、積極的な仕事をしなくなる

■スマートフォンの普及で警察の不祥事などが拡散されやすい現代では、警察のモチベーション低下が危惧される

■研究者はこの問題解決のカギは、世間のイメージアップ方法を考案することだと考えている

先日、フィラルフィアで6人の警官が銃撃を受け負傷したニュースが話題になったように、当然ながら警察の治安維持活動には危険が伴います。

本来なら尊敬されるべき彼らの仕事ですが、誰もがスマートフォンを持つこの時代、警察の不祥事が一般人によって記録され、ネットで拡散されてしまうようなことも珍しくありません。

しかしそうした一般市民の活動が、警察のモチベーションに思いもよらぬ効果を与えていることが、テキサス大学のマコームズ・スクール・オブ・ビジネスの研究により明らかになりました。

研究は「Organizational Behavior and Human Decision Processes」に掲載されています。

I want to serve but the public does not understand:” Prosocial motivation, image discrepancies, and proactivity in public safety

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0749597817300675

仕事を「理解すること」の重要性

研究では、市民による批判的で「あら探し」をするような態度が、警官たちのモチベーションにネガティブな影響を与えてしまうことが明らかにされました。

つまり警察は、自分たちの仕事の困難を世間が正しく理解していないと感じるとき、コミュニティに所属する市民と良好な関係を築き、地域のための積極的な施策を講じることが少なくなってしまうというのです。

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研究をおこなったシェファリ・パティル氏は、「ほとんどすべての仕事において、その難しさを他者が理解するのは非常に難しいことです。しかし人々は、そうした誤解が、実際にどの程度警察の行動に影響を与えているのかを認識できていません」と語っています。

研究では、アメリカ南部に勤務する183人の警官、238人の消防士に対して、どれほど市民が彼らの仕事について理解していると思っているのかを尋ねました。また研究者らは、彼らの監督者に対して、彼らの仕事への積極性についても尋ねています。

警察だって人間だ

その結果、世間が自分たちの仕事について理解していないと答えた警官と消防士は、その監督者から、著しく積極性に欠けると評価されていたことが分かりました。

パティル氏はこの悪影響について、次のように語っています。「積極的な警官であれば、近隣で何かが起こりそうであれば、たとえ行動の必要がなく、実際に誰も見ていなかったとしても、パトロールに出かけて誰かの力になろうとするでしょう」

「しかし積極性に欠けていれば、勤務中にやる気を見せずに、基本的には上司から指示された仕事しかすることはないでしょう」

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パティル氏は、こうした悪影響を回避するためのカギは、世間のイメージを向上させる方法を考え出すことだと語ります。警察も人間です。自分たちの仕事の危険性や難しさが正しく理解されて敬意を払われていれば、モチベーション高くいい仕事ができるでしょう。

パティル氏はこの研究の意義について、「私たちの研究は、警察に対する世間のイメージを本当に変えられるのはどのような方法なのかを考え出すための、次のステップがいかに重要であるかを示そうとしたものです」と語っています。

日本でも公務員に対しては厳しい目が注がれる風潮がありますが、彼らに本当にやる気を出してもらうためには、私たちが彼らの仕事を理解しようとしてあげることも重要なのかもしれません。

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