Point
■LIGOおよびVirgoの天体望遠鏡が新たに「重力波」の探知に成功した
■今回観測された重力波はブラックホールと中性子星の衝突による可能性が高い
■これまで観測された重力波はブラックホール同士か中性子星同士の衝突によるものだった
天文界にニューウェーブ?
LIGO(レーザー干渉計重力波観測所)およびVirgo(ヨーロッパ重力観測所)が今月14日、新たな「重力波」の探知に成功したと発表しました。しかもこの重力波は、ブラックホールと中性子星の衝突によるものかもしれません。
重力波はアインシュタインがおよそ100年前にその存在を指摘した天体現象で、3つのパターンによって生じると言われています。1つ目はブラックホール同士の衝突、2つ目は中性子星同士の衝突、そして3つ目がブラックホールと中性子星の衝突です。
2015年に史上初めて観測された重力波は、ブラックホール同士の衝突によるもので、その後中性子星同士の衝突による重力波も観測されています。しかしブラックホールと中性子星の衝突によるものはこれまで1度も観測されていませんでした。
これは観測史における新しい波の訪れかもしれません。
重力波はブラックホールのげっぷ?
今回観測された重力波は「S190814bv」と名付けられました。
ブラックホールと中性子星が織りなす連星システムの存在は以前から示唆されてきましたが、今回の観測はその実在を証明する大きな可能性を秘めています。
一方で、ブラックホールと中性子星の衝突により重力波が生じるか否かは、お互いのサイズ・質量比によります。
一般的にブラックホールと中性子星の大きさが近いほど、ブラックホールに吸収される時間が長くなると考えられています。これによりお互いがかなり近い距離を保って軌道周回することになり、中性子星はブラックホールに一番近い部分からゆっくりと引き裂かされていくのです。
その際に、バラバラにされた中性子星が金やプラチナ、鉄よりも重い放射性のチリを紙吹雪のように放出し始めます。そして中性子星を吸収しきると、ブラックホールはお腹いっぱいの合図として大きな「げっぷ」をします。これが重力波の正体です。
重力波はその後さざ波のごとく伸び広がって、宇宙空間にシワを作り出します。今回観測された重力波は、研究チームによると約9億年前に起こったものと予測されました。
ただ反対にブラックホールのサイズ・質量が中性子星よりも圧倒的に大きい場合、バラバラにする隙もなく一瞬で飲み込んでしまうので、重力波が生じることはなく、ただブラックホールが少し太るだけで終わってしまうそうです。
そしてブラックホールと中性子星の衝突を証明するには、その際に起こった光を望遠鏡でキャッチすることが必須。重力波の存在が確認されている以上、何らかの衝突は確実にあったと考えられます。
もしそれがブラックホールと中性子星であれば、天文学に新たな歴史を刻むことになるでしょう。
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