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 人から褒められたときよりも、酷いことを言われたときの方が、ずっと心に引っかかるものだ。それは何日も、ときに何ヶ月も、下手をすると何年も頭から消えてくれない。

 人は良い出来事よりもトラウマになるような経験の方が細かい部分まで覚えているもので、前者よりも後者の方に強く反応する。

 こうした傾向を「ネガティビティ・バイアス」という。脳は悪い情報に特に敏感で、ほとんどの人が無意識に反応しているという。

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 ある研究実験では、参加者にポジティブ(高級車やピザなど)、中立(家電や皿など)、ネガティブ(動物の死体や怪我など)な3種の写真を見せて、その反応を観察してみた。

 ここからは、脳はポジティブな刺激よりもネガティブな刺激に対して強く反応することが明らかになっている。

ネガティビティ・バイアスはかつて生存に必要だった。でも今は?

 脳のこのような仕組みは、私たちの先祖が生き残るために発達したと考えられている。

 特定の行動、ある種の植物や資源の悪影響を記憶していれば、それを避けることができる。それゆえに脳はネガティブな刺激を無視できないよう進化したのだ。

 しかし時代は変わった。私たちはもはや、大昔のように危険と隣り合わせで生きているわけではない。

 それなのにネガティビティ・バイアスは今もなお機能し続けている。それは建設的な場合もあるが、破壊的な影響を与えてしまう場合もある。

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Image by Gerd Altmann from Pixabay

ネガティビティ・バイアスが働いている6つのこと


 無意識に作用するために、あなた自身は気がついていないかもしれない。だが、次ようなことに心当たりはないだろうか?

1. モチベーション
 ネガティビティ・バイアスはやる気に影響する。ご褒美がもらえるときよりも、悪い予感がするときの方が行動しようという気になるのはこのためだ。

 締め切りに間に合わせようと必死になったり、上司に悪印象を与えないよう躍起になったり、あなたにも身に覚えがあるだろう。

2. 悪い知らせ
 私たちは良い知らせよりも悪い知らせの方が信憑性が高いと考えがちだ。悪い知らせの方に注意を引きつけられ、正しいだろうと思うように私たちはできているのだ。

 きっとあなたも、自分に対する評価や社会の出来事などについて、良いものよりも悪いものの方が気になるのではないだろうか。

3. 政治
 政治的なキャンペーンでは、良い話をするよりも、危機感を煽るような話をした方がうまくいくことが以前より知られている。

 これに関して、ひとつ面白い研究がある。いわゆる保守派と呼ばれる人たちは、曖昧な情報を危険なものとみなしがちであるらしいのだ。

 従来からあるものは安全で、変化を脅威とみなす人がいるのはこのことと関係があるのかもしれない。

4. 意思決定
 ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンと故エイモス・トベルスキーは、人が意思決定をする際、悪い面の方がより重視されることを発見した。

 この傾向は、意思決定や容認できるリスクに大きな影響を与えている。

 何かを始めるとき、損失のリスクや悪い結果への恐怖がまず第一に考慮される。また、それをやった場合に得られるメリットよりも、デメリットの方に意識が向きやすい。

5. 人間関係
 ネガティビティ・バイアスは他人の最悪な部分を予測するよう仕向けることで、人間関係にも影響することがある。

 これは以前に他人から痛い目に遭わされたことがある場合には特にそうで、そのような経験があると新しく知り合いができても、それまでのようには信用できなくなる。

 また、他人からの反応についても悪い想像をしやすくなる。それを良いものとは考えられず、最悪の事態ばかりを事細かに考えてしまうのだ。

 特に覚えておいて欲しいのは、それはあなたばかりでなく、他人もそうだということだ。

 だから他人にいつも敬意を払うことを忘れないようにしよう。あなたの何気ない一言が、想像以上に相手を動揺させていたりするのだ。

6. 第一印象
 第一印象が決め手とはよく言うが、これは本当のことだ。初対面のときに悪い印象を与えてしまうと、それはずっと残り、後々までそうした色眼鏡を通じて見られることになってしまう。

 一度与えてしまった悪い印象を取り除くのは、容易なことではない。

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Image by Feodora Chiosea/iStock

ネガティビティ・バイアスの犠牲にならない為に


 人間に備わった性質だとはいえ、現代を生きる我々にとって、ネガティビティ・バイアスが弊害になることがある。

 最近はSNSなどでは、事実関係をまったく知らない第三者が、その本質を考えることなしにネガティブな情報に飛びつき、無責任な拡散を行っているケースが多く散見される。

 「正義」や「義憤」という鎧を身に着けているので、自分が他人に与えている痛みや苦しみにはおどろくほど無頓着だ。

 自分が加害者になっているという自覚がないのは、己の行動を踏みとどまるだけの客観性が失われていることに気が付いていないからだろう。

 人は皆、誰かの被害者であると同時に誰かの加害者でもあるという認識を常にもっていなければならない。

 ある意味これもネガティビティ・バイアスの影響かもしれない。その被害者にも加害者にもならないために、以下のことに気を付けると良いという。

・他人に対して寛容になるよう努めよう。異なる意見が存在することを認めよう。

・新しい出会いは縁となる。オープンな態度を忘れないようにしよう。

・良いことがあったら、それを何度も思い出して味わう時間を作ろう。嫌なことがあったとしても、そこに隠されているだろう良い面に目を向けてみるのも大切だ。

・自分のことを責め、必要以上に悪く考えることをやめよう。その代わり、自分の良いところを5つリストアップしてみよう。


 ネガティビティ・バイアスを完全に失くすことはできないのだとしても、少なくともその存在に気づくことはできる。

 それを認識することが、ネガティビティ・バイアスの呪縛から抜け出す最初の一歩となる。

References:What Is Negativity Bias and 6 Ways It Secretly Affects Your Perception – Learning Mind/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52278001.html
 

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