昭和時代がさらに遠くなり、あの時代を知っている人はもう結構いい年であるきょうこの頃。寿命の長い鋼鉄製鉄道車両の世界においても、昭和生まれの車両はもうずいぶんと少なくなりました。今回は昭和30年代にデビューした「ほぼオリジナル103系」がまだ残っているという、兵庫県のJR和田岬線に行ってきました。

【画像:す、すごい……和田岬線の時刻表】

●国鉄時代に誕生した昭和時代の通勤電車「103系

 国鉄103系(JR103系も含む 以下103系)は1963年昭和38年)にデビューした、日本国有鉄道(国鉄)およびJR、いや、日本を代表する通勤電車です。国鉄時代からマイナーチェンジを繰り返しながら1984年昭和59年)まで製造され、北海道と四国を除く日本各地の都市で活躍しました。製造車両数は21年間で何と3447両! 現在はJR各社がそれぞれ新型車両を開発することから、1形式で3000両を超すほど大量に製造される車両は今後登場しないでしょう。

 103系には初の新性能通勤型電車として知られる「101系」という先輩がいます。全車電動車という前提で設計された101系は十分な結果を残せなかったことから、103系はこの101系ベースに「経済性を最重視」した改良型の通勤電車として誕生しました。鋼製20メートル級の車体に4ドアという103系(や101系)の、多くの人が「これぞ通勤電車」と思えるスタイルは、後継となる「201系」にも引き継がれています。

 東京や大阪をはじめとする都市圏の通勤の足として大活躍し「高度成長期の都市近郊通勤電車の象徴」であった103系。しかし平成時代になると新型車両に追われるようになります。103系2006年首都圏から撤退、2009年にはJR東日本管区全域で引退。2017年10月大阪環状線からも惜しまれながら引退したのは記憶に新しいでしょう。2019年現在、103系JR西日本JR九州の一部線区でまだ活躍していますが、活躍の範囲はもう狭く、完全に引退となのも時間の問題と言われています。

 ……そうです。いま、乗っておかねばなりません! そんな希少な、オリジナル103系の姿を求めて、兵庫県の「JR和田岬線」へ行ってきました。

和田岬線をいまだ元気に現役で走る「オリジナル103系」に乗車

 JR和田岬線兵庫駅和田岬駅)は兵庫県神戸市にある短い線区です。和田岬線という線名は通称であり、正しくはJR山陽本線の一支線です。総距離はわずか2.7キロ。乗車時間はほんの3~4分です。兵庫駅JR神戸線山陽本線)と接続しています。

 和田岬線兵庫県和田岬地区にある工場への通勤客輸送に特化しています。そのため、日中に列車は走りません。休日ダイヤに至っては1日上下各2本(朝1本夕1本)です。2001年に電化され、主に6両編成の103系が使われています。

 乗車予定の和田岬線103系兵庫駅17時15分発。17時にならないと和田岬線のりばには入れません。

 2019年8月現在、103系は調べた限り、JR西日本管区内では奈良線大和路線関西本線)、播但線加古川線でも運行されています。ただし播但線加古川線103系は大改造を受けた車両です。対して「オリジナルを色濃く残している車両」である和田岬線103系は本当にもう希少な車両といえます。

 和田岬線103系は運転台が低い初期タイプです。ドア横にあった戸袋窓や黒い窓サッシ以外は変わっていないようです。

 側面の様子は特にいい感じです。現在の車両にあるような各種装備、装飾品がほとんどなく、まさしく”箱”。屋根にある丸型のベンチレーターもよく目立ちます。

 方向幕はJR西日本仕様の黒幕。「兵庫←→和田岬」と双方向に対応する表示なので、終着駅に着いても幕の変更はありません。

●あぁぁ「これだよこれ」な懐かしさがブワッと噴出する車内

 では乗車しましょう。座席のモケットや化粧板はさすがに当時のままではありませんが、オリジナルの姿は留めています。そして和田岬線103系には、車内広告がありません。このことが昭和タイムスリップ感をより心地よく感じさせてくれるような気がします。

 天井にはぐーるぐる回る「あの扇風機」。車両には冷房設備も付いていますが、乗車時の車内は30度を超えていました……。

 ドアは最近のJR西日本の車両ではあまり見られなくなったステンレス製。“プシュ”という音と共に勢いよく閉まります。運転台は国鉄型電車らしくアナログ感満載で武骨な感じ。大きなマスコンブレーキハンドルマニア心をくすぐります。

 17時15分。定刻に兵庫駅を出発すると、カーブを曲がった進行方向右側に川崎重工業兵庫工場につながる線路が見えてきます。兵庫工場で製造された新車が和田岬線の線路を走ることもあります。

 和田岬線車窓のハイライトは兵庫運河でしょうか。兵庫運河は「キャナルプロムナード」というきれいな遊歩道として整備されています。「撮り」の人は兵庫運河とセットにして撮影するといいですよ。

 17時18分、あっという間に和田岬駅に到着しました。和田岬駅での休憩もつかの間、8分後には折り返し兵庫駅行きが出発します。和田岬駅は無人駅。駅舎もなく、簡易な屋根があるだけです。ICOCAは対応していますが、窓口や券売機はないのできっぷの人は帰りの分も兵庫駅で買っておくとよいでしょう。

和田岬線の乗り方

 和田岬線は本数が少ないので、乗るならば、事前に時刻表などで下調べしておくことをお勧めします。休日ダイヤ土曜日と日曜祝日のダイヤが別に設定されています。兵庫駅和田岬線ホームは運行時間帯でないと立ち入れないので注意しましょう。

 2019年6月に103系の後輩だった201系が、惜しまれながら大阪環状線ゆめ咲線桜島線)から全て引退しました。和田岬線レジェンド103系も、いつどうなるか分かりません。皆さんも絶滅危惧種である103系、お早めの乗車をお勧めします!

(新田浩之)

昭和の名通勤電車「103系」がいまだ元気に走る兵庫・和田岬線