あなたは現実と鬼邪地区(OYA AREA)の境界線が、ドロドロに溶解したところを見たことがあるだろうか。おれは見た。8月19日の『HiGH&LOW THE WORST』最速プレミア試写会で異界への門は確かに開き、ららぽーと豊洲は確かにSWORD地区とつながったのである。

最悪不良高校のスピンオフ、(あと1ヶ月ちょっと後だけど)堂々公開!
HiGH&LOW』(以下ハイロー)は、EXILEとかが所属している事務所LDHが手がける、ド派手で手間と金がしっかりかかった総合エンターテイメントである。5つの勢力が互いに争うSWORD地区と呼ばれるエリアで、いい顔やいい体をしたいい男たちが人間業とは思えない動きで殴り合う……という感じの内容だ。

10月4日から公開される『HiGH&LOW THE WORST』は、そのSWORD地区の5大勢力のうちひとつ、鬼邪高校(「おやこうこう」と読む)をメインに据えた映画だ。この鬼邪高校、全国から札付きのワルが集まる凶悪高校で、定時制に至ってはヤクザからのスカウトを待つために学生が留年を繰り返し、高校なのに平均年齢が20代という、壊れた設定の高校である。

この鬼邪高校は定時制トップ山田裕貴演じる村山良樹が収まってひとつにまとまったものの、全日制は現在これといったトップが定まっておらず群雄割拠状態。さらにそこに高橋ヒロシの漫画『クローズ』『WORST』シリーズに登場する鳳仙学園との抗争が勃発! 一体鬼邪高はどうなっちゃうの〜!? というのが『HiGH&LOW THE WORST』の筋立てだ。

ということで、今回のプレミア試写会には全日制から6人、定時から2人、鳳仙から4人、映画で大フィーチャーされる希望ヶ丘団地から3人、さらに久保茂昭監督も加えた総勢16人のゲストが、レッドカーペットイベントと舞台挨拶に登壇したわけである。

キャストの服装から漂うキャラに対する解像度と愛情、ヤバくないっすか
この鬼邪高校、「拳一つで成り上がる」というのがスローガンである。在校生から100発殴られて耐え抜けば誰でも番長になれる、というルールが校内にあり、現在の番長である村山はそれに耐え抜いてトップに躍り出た。単にケンカが強ければいいというものではない。校内の度胸試しに勝たなくてはならないが、勝った以上は周囲もそいつのことを番長として認める、というルールを持った高校だ。

で、この鬼邪高の主要メンバーを演じているキャストが、村山役の山田裕貴を筆頭に全員非LDHの人たちでなのある。自社で作っているシリーズの、しかもかなり主要なキャストを外部の役者にやらせているのがハイローの面白いところのひとつであり、その中でもこの鬼邪高クルーは別格の存在感があった。

演じるキャラクターに対する、ちょっと過剰なのではないかというほどの思い入れと役作り。演者同士の劇中さながらの仲の良さ。それらの持ち味で、当初はちょい役のかませ犬っぽい感じだった村山良樹と鬼邪高校は劇中でどんどん存在感を増していき、ついには自分たちだけのスピンオフが制作されるところまでたどり着いた。拳一つで成り上がったわけである。鬼邪高校はそういう集団なので、演者とキャラの境界線がとにかく薄い。

例えば、このプレミア上映における鬼邪高全日チームの服装を見て欲しい。劇中常に学ラン姿の轟洋介役の前田公輝は白のシャツに黒のジャケット、ちょっとダボッとしたズボンシルエット学ランに寄せている。コンビで動く印象が強い芝マンと辻を演じる龍と鈴木昂秀は、トップスの色とアクセサリーで韻を踏みつつディテールで細かい差を演出。黒を着ることが多い花岡楓士雄役の川村壱馬は、全体に劇中よりも細いシルエットながらも「靴紐を赤くする」という京極堂方式で差し色が入っている。全体的に「公式絵」感が漂っているというか、アニメージュの綴じ込みピンナップっぽい……。


常にスカジャンを着ている村山役の山田裕貴はちょっとシルエットが違う(そしてなんだか不思議な柄の)ジャンパー。純朴そのものな関ちゃん役の一ノ瀬ワタルはほぼ裸の大将のような服装と、こちらも完全に公式絵コーデ。また、揃いの制服を着て一枚岩で行動する宝仙学園のキャストは全員グレーで統一し、一世風靡セピアみたいな雰囲気に。

更に言えば、今回新規で登場する希望ヶ丘団地幼馴染チームは、優等生キャラクターである白州迅は首までシャツのボタンを閉めてかっちりしたムード。オロチ兄弟役の中務裕太と小森隼は兄弟なので全体の色合いは統一しつつ、中のシャツを全然別物に。レッドカーペットを歩いてくる役者さんの服装と、各キャラの解釈が完全に噛み合っている……。コーディネートを担当したスタイリストさんは、今回の仕事で3000万円くらいもらってもいいと思う。

山田裕貴は村山さんであり、かくして映画館に異界の門は開いた
まあ、服装はキャラクターに寄せられるだろう。しかし、役者の皆様の行動までもが鬼邪高ナイズされているのを見て、おれは絶叫しそうになった。特に山田裕貴である。「え〜、みなさんね、この映画の感想とかを、ぜひ色々"轟かせて"ください!」という轟洋介にひっかけダジャレを前田公輝の横で言い、それに対して「そんなギャグあったっけ!?」と轟洋介……じゃなかった、前田公輝から突っ込まれている……。すごい。これアレじゃない? CLAMP先生が描いたマンガじゃない? 違う? 嘘でしょ?


とにかく、山田裕貴がどこまでも村山さんなのである。マイクが回るタイミングがなかった関ちゃんや辻や芝マンに、舞台からハケる前にちゃんとマイクを回してやる。ガチガチに緊張している関ちゃんや、若手のキャストにちゃんとフォローを入れてやる。まさに番長。こんなふうにフォローされたら、関ちゃんじゃなくても「村山さぁ〜〜ん!!!」と絶叫したくなる。というか、絶叫しそうになった。

考えてみれば、今回の『HiGH&LOW THE WORST』での新規キャストは、山田裕貴、前田公輝、鈴木貴之、一ノ瀬ワタルといった鬼邪高レギュラーメンバーと比べると一回り年下である。足掛け4年にわたってシリーズに出演してきた鬼邪高メンバーキャスト同士が阿吽の呼吸で掛け合い、学年が下のキャストに対しては上級生がフォローする……。学校だ、これは……!

特にグッときたのは本編上映前、舞台挨拶が終わってからの去り際である。すぐ横を歩いていた一ノ瀬ワタルの肩に山田裕貴がポンと左手を置き、「おつかれー」という感じで肩を組んでそのまま舞台袖に帰っていったのである! ガチガチに緊張した関ちゃんと肩を組んで、舞台挨拶から帰っていく村山さん! すご……本当に仲良いんだ……。もはや映画本編を見ているのか舞台挨拶を見ているのかわからない。ことここに至って現実と鬼邪地区(OYA AREA)の境界線はドロドロに溶けた。すごいものを見たと思う。

「村山さんと関ちゃん、肩組んで帰ってったな……」というのを念頭に置いて、おれはそのあとに上映された本編を見た。そして、なるほど……そりゃこの内容の映画がめでたく完成して、その初めての試写会とあっちゃ、あの二人は肩も組むわ……と、深く深く納得した。その内容についてここで言及するのはやめておこう(ただ、「鳳仙にもメガネの奴がいねえと、バランス取れねェわな」と判断してくれた高橋ヒロシ先生にはとにかくありがとうございますとお伝えしたい)。ただただ、村山さんはどこまでも村山さんであり、轟洋介はきっちりと轟洋介であり、関ちゃんは常にキュートで、古屋はやっぱり古屋だった。新キャラの皆さんはフレッシュであり、鳳仙のスキンヘッド軍団はおっかなくて、ケンカは出し惜しみなくド派手だった。「鬼邪高のスピンオフ」と聞いて期待する内容はちゃんと入っている。期待して大丈夫だ。

とにかく、おれは今回の舞台挨拶で改めてハイローの凄まじさを思い知った。このコンテンツには、現実すら捻じ曲げる力がある。そのパワーは、やはりキャストと裏方の皆様の不断の努力から発生しているものであろう。それを目の当たりにして、今おれはしみじみと感動しているのである。
しげる

【作品データ
HiGH&LOW THE WORST」公式サイト
監督 久保茂昭
10月4日より全国ロードショー
(C)2019「HiGH&LOW THE WORST」製作委員会(C)高橋ヒロシ秋田書店) HI-AX

STORY
村山の指示により、全日と定時が分断された鬼邪高校。その結果全日は群雄割拠の状況に。しかし校内での違法麻薬「レッドラム」の蔓延をきっかけに、鬼邪高の学生たちは鳳仙学園との一触即発の抗争へと巻き込まれていく