夫の印象アップに貢献する模範的な政治家の妻を実践していくであろうことは想像に難くありません
夫の印象アップに貢献する模範的な政治家の妻を実践していくであろうことは想像に難くありません

自民党小泉進次郎衆議院議員とタレントの滝川クリステル氏が電撃結婚。ふたりは8月7日に、菅義偉官房長官に結婚の報告をするため首相官邸を訪れ、その場で記者の質問に答えた。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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次期首相になってほしい人アンケートで断トツの人気を誇る自民党小泉進次郎衆議院議員が「お・も・て・な・し」でオリンピック招致の女神となったキャスターの滝川クリステルさんと首相官邸で結婚報告。

官邸も承知の計算ずくともいわれるなかで、案の定ネットには両人の関連ニュースが連日掲載され、自民党の当選11回の大ベテラン・逢沢一郎衆議院議員の買春疑惑スキャンダルもかすむほどの祝賀ムードです。

滝川さんがインスタに投稿した結婚報告では、進次郎氏が「『政治家の妻はこうあるべき』という形にとらわれず、私らしく、ありのままの生き方、スタイルを尊重してくれる」と記しています。

現代的な滝川さんらしいすてきなコメントですが、すでにそんな"ありのまま"の生き方を全力で実践しているのが現首相夫人の安倍昭恵さん。自由奔放、思いのままに人脈を広げた活動ぶりは森友学園問題で詳しく報じられました。

これに懲りた首相官邸周辺はおそらく次期首相候補の妻の抜群の知名度を最大限に利用しつつも、その活動には神経をとがらせるはずです。

もっとも、察しのいい滝川さんがその"ありのままの生き方"の範疇(はんちゅう)をわきまえていないはずはなく、メディアに対しては新しい時代のセレブ女性像を打ち出しながら、永田町向けには夫の印象アップに貢献する模範的な政治家の妻を実践していくであろうことは想像に難くありません。

これまで夫のために選挙区で泥くさく票稼ぎに貢献していた妻たちの活動を、メディアに舞台を移して、より効率的で洗練された形にアップデートしたともいえます。仮に首相夫人ともなれば、雅子皇后と双璧をなす日本人女性のアイコンとなるでしょう。

キャリアを捨てて悩んだ女性の再起という雅子皇后のストーリーと、キャリアの階段を上り詰めて新たなスタイルを打ち出した(かのように見える)女性という滝川さんのストーリーと、好みは分かれそうですが、いずれも自我を殺さずに権威ある夫と結婚したいという共働き時代の女性の葛藤を反映したプリンセスストーリーです。

4世議員の進次郎氏の父は劇場型政治で人気を博した小泉純一郎元首相。「絵になる政治家」という点では、華麗なるセレブ劇場を展開する小泉進次郎氏と、民衆のヒーロー劇場を展開するれいわ新選組山本太郎氏のどちらが多くの人心をつかむのかも気になるところです。

滝川さんという強力な援軍を得た進次郎氏に対抗するには、参院選落選からの永田町攻め上がりを名もなき人々と成し遂げる「革命のストーリー」が功を奏すのか。

権威主義と下克上魂とどっちが強いのかわからないけど、支持率80%にもなった熱い小泉劇場の後には、痛みの癒えない格差社会が待っていたことは忘れないでいたいものです。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が好評発売中

夫の印象アップに貢献する模範的な政治家の妻を実践していくであろうことは想像に難くありません